2021年 10月21日

最後の来日公演?希代のヒットメイカー【ビリー・ジョエル】のキャリアを振り返る ①

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「ジャパニーズ・シングル・コレクション -グレイテスト・ヒッツ-」でヒットメイカーとしてのビリー・ジョエルを検証


ビリー・ジョエルが来日公演を行う。何と16年ぶりだ。今回は東京ドーム1回限りのライブとなり、ビリーの年齢を考えると最後の来日公演になってもおかしくない。この貴重な来日公演に合わせて、希代のヒットメイカーについて再検証してみよう。

さて、ビリー・ジョエルのヒットメイカーとしての才能を検証するにあたり、最適なコンピレーションアルバムとなるのが『ジャパニーズ・シングル・コレクション -グレイテスト・ヒッツ-』と言えるだろう。この作品は、ビリーがリリースしたシングル曲を年代順にコンパイルした日本独自の企画盤となっている。当然ヒット曲は全て網羅されているので、ビリー・ジョエルの入門編としてはうってつけのコンピレーション。

しかも、ビリー・ジョエル・マニアの方にも見逃せない企画が盛り込まれており、日本でリリースされた7インチシングル盤と8センチCDシングルのジャケットがブックレット1ページに1枚、復刻・再現されてコンパイルされている。このブックレットを見るだけでも何だか楽しい。中古盤屋さんのドーナツ盤コーナーをサクサクやっているような気分になってご機嫌なのだ!

さらに、収録曲のビデオクリップやライブ映像が42曲も入っているボリューム満点のDVDが付いてくる。ビリー・ジョエルのビギナーからオールドリスナーまで大満足、お腹いっぱいの作品で、ライブの予習には最高の作品なのだ。本稿はこのコンピレーションアルバム『ジャパニーズ・シングル・コレクション -グレイテスト・ヒッツ-』の収録曲に沿って、2回にわたり語ってみたい。

ビリー・ジョエルのキャラクターを確立させた「ピアノ・マン」


まずはパート1として、今回は8枚目のアルバム『ナイロン・カーテン』までの収録曲について紹介しよう。アルバムのスタートボタンを押すと「ピアノ・マン」からスタートする。



「ピアノ・マン」は、最近、ここ日本でもビールのCMソングとしてテレビで流れていたお馴染みの曲。ビリー・ジョエルのキャラクターを象徴するような楽曲だ。ピアノを弾き語るシンガーソングライター。でも、70年代前半のフォークシーンから現れたシンガーソングライターが政治や自己の葛藤する心象を歌ったのに対して、ビリー・ジョエルの歌い口は洗練されていて、もっとポップだ。そんなビリー・ジョエルのキャラクターを確立させたファーストヒットである。

デビューアルバム『コールド・スプリング・ハーバー〜ピアノの詩人』はヒットに至らなかっただけではなく、レーベルに勝手に録音テープのスピードを変えられたものが収録されるなど、ビリーは人間不信に陥ってしまったそうだ。そこから這い上がるためにビリーはビル・マーティンという変名で小さなクラブを中心にライブ活動を行い、そこで自分は何者なのかということを考えたのだろう。その結果がファーストヒットの「ピアノ・マン」を生み出したのではないだろうか?

スーパースターに登り詰めた「ストレンジャー」


そして、2曲目からは彼の人気を決定的なものにした、アルバム『ストレンジャー』からの楽曲だ。

「素顔のままで」
「ストレンジャー」
「シーズ・オールウェイズ・ア・ウーマン」

このアルバムはピアノの弾き語りのシンガーソングライターという『ピアノ・マン』のイメージを払拭し、もっと都会的なシンガーとしてのビリーのキャラクターを確立したアルバムだ。

アップテンポのロックナンバーからバラードまで様々な楽曲を取り揃えながらも、アルバムとしての統一感も兼ね備えた作品で、ビリー・ジョエルの才能の大きさを思う存分に楽しむことができる。特に「素顔のままで」はビルボードのシングルチャートでも最高位3位の大ヒットとなった。音作りについても10ccの名曲「アイム・ノット・イン・ラブ」の音像を取り入れて、奥行きあるサウンドを聴かせることで、これまでのアーティストイメージを払拭することに成功した。



そして、ここからビリー・ジョエルは、圧倒的なクオリティの作品を連発し、黄金時代を築いていくのだ。

グラミー賞も2冠獲得し、キャリアのピークを迎えたビリー・ジョエル


『ストレンジャー』からの曲に続いては、アルバム『ニューヨーク52番街』からの4曲だ。収録曲は以下の通り。

「マイ・ライフ」
「オネスティ」
「ビッグ・ショット」
「アンティル・ザ・ナイト(夜のとばり)」

『ストレンジャー』の成功を更に確固たるものにするために『ニューヨーク52番街』も基本路線は変わることなく制作され、ビリーの目論見通りアルバムは大ヒットする。米ビルボードのアルバムチャートではキャリア初の1位を獲得し、同年間チャートでも堂々の1位に輝いた。また、当たり前のようにグラミー賞も2冠獲得し、キャリアのピークを迎えたと言えるだろう。

希代のヒットメイカーというだけでは語れないビリー・ジョエルの物語性


こうして、スーパースターに駆け上がったビリーだが、次に彼が目指したものはロックシンガーとして自身のステイトメントを発信できるアーティスト像の確立だったのではないだろうか? アルバム『グラス・ハウス』は実にロックンローラー気質なノリノリのビリー・ジョエルが感じられる。



ピアノを弾きながら歌うシンガーソングライター、ヒット曲連発のスーパースター、メッセージソングも歌うロックンローラー… ビリー・ジョエルは、そのヒット曲の多さゆえに、彼のアーティスト・エゴみたいなものは、同時期のロックアーティストに比べて語られることが少なかったと思う。

しかし、彼のキャリアを振り返ると、自身がこうありたいというアーティスト・エゴの強さと分かりやすいポップ性の両立を成し遂げてきたことがよく分かる。そこにビリー・ジョエルの人生を感じるし、天才メロディーディーメーカーや希代のヒットメイカーというだけでは語れない、極めて個人的とも言えるビリー・ジョエルの物語性を感じるのだ。

ライブバージョンの「さよならハリウッド」を収録


そして、ライブアルバム『ソングス・イン・ジ・アティック』からの曲が収録されていることも忘れてはならない。

普通、ライブアルバムというとヒット曲を中心とした演奏を収録したものが多いのだが、本作ではヒット曲を1曲も演奏していない。この頃のビリー・ジョエルはシングルヒットも連発していたので、ライブアルバムに、一連のヒット曲を収録した方がアルバムのセールスも望めたはずだ。

しかし、そうしなかった理由はビリー自身が単なるヒット曲シンガーではなく、きっちりとアルバム1枚を通して作家性を表現することができるアーティストであることやライブで実力を発揮できるパフォーマーであることを示したかったからなのではないだろうか?

このライブ盤からは「さよならハリウッド」が選ばれており、ライブバージョンとして、全米17位のヒットとなり、オリジナルのリリース時点ではヒットに至らなかったことへのリベンジを果たしている。



後期ビートルズからの影響と思われる「ナイロン・カーテン」


そして、ロックが持つカウンターカルチャーとしての側面を強調するため、アルバム『ナイロン・カーテン』では、ビートルズや60年代後半を意識したサウンドを取り入れたことが伺える。こうして作られた本作は決して明るいものではなく、むしろシリアスなものとしてビリーのディスコグラフィーの中でも異質な作品ではあるものの、ロックアーティストとしての立ち位置を明確に打ち出すことに成功している。収録曲は以下の通り。

「プレッシャー」
「アレンタウン」
「グッドナイト・サイゴン〜英雄たちの鎮魂歌」

「プレッシャー」からはロックナンバーとしての激しさも感じられ、社会的なテーマもこの時期の特徴だろう。「アレンタウン」は不況に苦しむ工業都市の住人の日常と葛藤を歌ったものだ。また、「グッドナイト・サイゴン〜英雄たちの鎮魂歌」では、ベトナム戦争で戦った兵士たちの苦しい状況が歌われている。この曲について、ビリーは究極的な反戦歌として、隣のやつが死んで行く若者の地獄を歌ったものだと発言している。



スーパースターへの階段を駆け登っていったサクセス・ストーリー


『ピアノ・マン』から『ナイロン・カーテン』までのビリー・ジョエルの活動を振り返ると、スーパースターへの階段を駆け登っていったサクセスストーリーそのものと言えるだろう。

ビリー・ジョエルは、シングルヒットにより、スーパースターの地位を確立していった。しかし、その根本にはアルバムごとのテーマや課題の設定があったのも確かなこと。その課題を解決していくために表現の質や方法も変えている。その軌跡を追うことで、ビリーのアーティストとしての立ち位置や方向性が見えてくる。

そして、ビリーが次に向かった先は、古典的なロックンロールやポップソングの楽しさを大爆発させたアルバム『イノセント・マン』だった。そう、次回はみんな大好き『イノセント・マン』から語ってみよう!


▶︎ Information
ビリー・ジョエル
「ジャパニーズ・シングル・コレクション─グレイテスト・ヒッツ─」
https://www.110107.com/s/oto/page/BillyJoel_JSC?ima=5011

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2023.11.02
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  ジャパニーズ・シングル・コレクション / ビリー・ジョエル
 

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カタリベ
1972年生まれ
岡田ヒロシ
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