2021年 10月27日

盟友・渡辺美里が歌う大江千里の名曲「Rain」の素晴らしさ

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満を持して渡辺美里が歌う、大江千里の名曲「Rain」


 本当の夏が来た
 生きているまぶしさ

… と、夏が来るとつい口ずさみたくなる、渡辺美里「夏が来た!」のフレーズ。今年は梅雨らしい梅雨が訪れず、一足飛びで、まさに “夏が来た”。けれど、どうしても今書いておきたい曲がある。それは大江千里の「Rain」ついて。

渡辺美里とこの曲がどう繋がるのか… というと、昨年渡辺美里がリリースしたカバーアルバム『うたの木 彼のすきな歌』で、この曲をカバーしているからだ。このカバーが本当に素晴らしくて、どうしてもこの梅雨空が吹き飛んでしまった青空の下ではあるが、書きたいと思う。

そもそも大江千里の「Rain」は、1988年にリリースされたアルバム『1234』(ワンツースリーフォー)に収録された楽曲であり、当時はシングル曲ではなかった。それが今では槇原敬之や秦基博をはじめ多くの歌い手たちに愛され、カバーされるようになった。まさに時代とともに大江千里の代表曲として育っていった名曲だ。

その曲を満を持して、盟友である渡辺美里が歌う… ということは、ファンにとってはとても胸が熱くなること。待望のカバーといってもいい。色褪せることなくファンに愛され続けている渡辺美里の名曲「10 years」も、大好きな人への気持ちを真っ直ぐに歌った「すき」も、そして「夏が来た!」も、すべて大江千里が作曲し、渡辺美里に提供した曲たちだ。

大江千里、小室哲哉、岡村靖幸の3人は、間違いなくデビュー当初から渡辺美里を支えてきた名クリエイターといっていいだろう。そんな共に歩いてきた盟友の曲を、いよいよ渡辺美里が歌うのだなと思うとなんだか心が震えた。

原曲に忠実に歌い上げられた美里バージョン




EPICソニー愛がダダ漏れな私が、企画・制作に携わらせてもらった雑誌『Player SPECIAL Autumn Issue – Respect EPIC –』で、渡辺美里は「Rain」ついて以下のように語っている。

「(Rainは)千里さんにとっても、とても大切な曲だと思うので、響きとかが違うのは嫌だな。着心地の悪いシャツになってはいけないと思って。このコードの感じ方で大丈夫ですか? と尋ねて確認したんです」

そして完成した曲を聴いた大江千里は、「オリジナルにリスペクトを持って、なおかつそこに知性と体温を込めてくれた作品になった」と言ってくれたのだそう。

2人のアーティストのやりとりに、なんだかぐっときた。渡辺美里バージョンの「Rain」は、語ってくれた通り細部にわたり、原曲に忠実に歌い上げられている。渡辺美里がとても大切に、そしてとても丁寧に歌い上げていて思わず涙が溢れてくる。まさに大江千里が評価したように「100点満点」のカバー曲。これはもう、さすがとしか言いようがない。

歳を重ねて聴く「Rain」の魅力、母性と包容力に溢れた渡辺美里の歌声


つい先日、ソニーミュージックの“大人向け”音楽エンタテインメントウェブサイト『otonano』で大江千里のインタビュー記事がUPされた。その中で、“「Rain」の男性主人公は女々しくて女性陣からは今のところ大ブーイング” と苦笑いする場面があった。恋愛において、この曲の男性主人公の優柔不断さや曖昧な態度というのは、女性にとってはイライラさせられたりもするだろう。私もオンタイムで聴いたとき、この歌詞にピンとこなかった。それもそのはず、10代で、ましてや男性心理なんて分かるはずもない。けれど、この歳になって聴く「Rain」は、わがままな男性の姿がなぜだか愛おしく感じられて、まるで人間愛のような気持ちになってくるから不思議だ。そんな心境になって聴く「Rain」は、最高に心に沁みる。この曲を聴くたびに、歳を重ねるのも悪くないと思ったりする。

大江千里が歌う「Rain」が男性主人公の目線だとするならば、渡辺美里が歌う「Rain」は同じ男性主人公の目線でありながらも、どこか女性の秘めた心の内のようなもの、母性のようなものを感じさせる。渡辺美里の温かな歌声が聴き手を優しく包みこみ、せつない恋愛もようと雨の光景が目の前にじんわりと優しく広がってくる。原曲に忠実でありつつも、どちらのバージョンも本当に素晴らしくて、私のプレイリストには2人の「Rain」が連続で並んでいる。



そして、今年5月には、大江千里の「Rain」がアナログ盤としてシングルカットされた。雨傘をさすなんともいえない表情の大江千里のジャケットがまた最高だ。たまたま写真家・大川直人氏の手持ちの写真の中から見つかったものなのだそう。

 どしゃぶりでもかまわないと
 ずぶぬれでもかまわないと
 しぶきあげるきみが消えてく
 路地裏では朝が早いから
 今のうちにきみをつかまえ
 行かないで 行かないで そう言うよ

数分の曲の中に、なんとも言えないせつない物語と光景が広がっている。渡辺美里の愛と母性、優しさが溢れた豊かな歌声の「Rain」は本当に味わい深くて最高だ。ぜひ多くの人に聴いてほしい。

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2022.07.12
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