フィギュアスケートを盛り上げるスケーティング・ミュージック
寒くなってまいりました。寒いのは苦手ですが、大好きなフィギュアのシーズンと思えば嬉しくもあり。この季節、テレビでグランプリシリーズのCMがバンバン流れているので “また、スケートの大会があるのね” と思われる方も多いのではないでしょうか?
グランプリシリーズは毎年、秋から冬ごろに行われるフィギュアスケートのシリーズ戦です。アメリカ、カナダ、中国、フランス、ロシア、日本で開催される6大会があって、この6大会の上位選手が最終戦のグランプリファイナル(今年の会場はトリノ)に出場できます。というわけで、ロシア大会あたりではグランプリシリーズに2巡目の選手も多く、ファイナルへの出場をかけて熱い戦いが繰り広げられているわけです。
ところで、11月15日に行われるロシア大会の男子ショートプログラムで面白いことがあるんです。それは、同じ曲「ブルース・フォー・クルック」を使用する選手が3名いるんです(もしかしたら曲目を変えてくる可能性もありますが)。アレクサンドル・サマリン(ロシア)、ナム・ニューエン(カナダ)、ウラジーミル・リトヴィンツェフ(アゼルバイジャン)これは、見比べたいです!
高橋大輔も踊った「ブルース・フォー・クルック」は、エレクトリック・オルガンブルース
「ブルース・フォー・クルック」と言えば、先頃、アイスダンスへの転向を発表した高橋大輔の2011~2012のフリースケーティングのプログラムを思い出す方が多いかと。ご存知、バンクーバーオリンピックで銅メダルを取った選手です。2012年にはグランプリファイナルも優勝してます。
世界一のステップ技術を持つと言われている彼ですが、それだけでなく、音楽を味方つけてフィギュアスケートをアートの極みまで高めることが出来る数少ない選手の一人であります。「ブルース・フォー・クルック」がこれほど使用されるのは、間違いなく、彼の影響なんじゃないでしょうか。
「ブルース・フォー・クルック」は、ジャズのオルガン奏者エディ・ルイスが1987年にリリースした曲です。彼はフランス出身の天才オルガン奏者でスタン・ゲッツのカルテットに参加しており、1977年にソロに転向したそうです。
とはいえ、映画やCMで使用されたポピュラーな曲ではないのでリアルタイムで私は聴いたことは無く、このプログラムで初めて知った曲です。初めて聴いた時は知らない曲だし、ちょっと退屈? なんて思っていたのですが、とんでもない!独特の音や、ベースラインとの重なりや絡み具合いが聴けば聴くほど面白く深みがある曲です。
ずっとエレキギター曲かと思っていたのですが、ビヨ~~ンと伸びる音はオルガン(ハモンドオルガン)だそう。電子オルガンだったとは!! ハモンドオルガンはキース・エマーソンも使っていたそうですよ。エレクトロポップならぬ、エレクトロブルースなのがカッコいい!! 80年代は音楽に可能性が広がった時代ですが、ブルースにもこんな感じの進化があったのですねー!
クールかつセクシー、フィギュアスケートとブルースのマリアージュ
高橋大輔のスケーティングがまた、この曲とマッチしていて、クールかつセクシーにこの曲を表現しています。この曲は過去にもフィギュアで使用されていたらしいのですが、彼が使用したことにより新しい解釈を与えた曲とも思えます。それほど、彼の「ブルース・フォー・クルック」は衝撃でした。決して派手な曲ではないのですが、この伸びのよいオルガン音が反響の良いリンクに広がってそれはそれは壮大です。シーンとしたフィギュアの会場にこの曲が響くといいんですよー!伸びてゆく音にスケートの滑走音が混じるあたりや、着氷時の「ジャッ」という音が混じるあたりも聞き逃せません。競技中に生じる音もセットで更にこの曲の良さを昇華させられている感じ。
ブルースの曲に合わせて高橋大輔の色気もMAX!彼はこのブルースを官能的に完璧に表現しきっており、この後誰も使わない方が良いとまで解説で賞賛されたこともあるそうです。そんな封印論まで出た曲を今回のロシアグランプリで前出の3名がどのように表現するかを是非比べてみてください。
スポーツなのでジャンプや、ステップの質への点数付けで評価されますが、ここは点数抜きで皆さんも独自の視点で「ブルース・フォー・クルック」を見つけてみてはいかがでしょうか? 同日に同じ曲のプログラムを見比べる良いチャンスです。ISU グランプリ ロステレコムカップ(グランプリシリーズ2019 第5戦 ロシア大会)男子ショートプラグラムの放送は11月15日(金)深夜0時20分から。ぜひ観戦してくださいね。
2019.11.15