高校生の頃の自分には絶対にジーンズは履かない…… という、ヘンなポリシーがあった。発端は、ミュージックライフ誌に載っていたヘアカット100のインタビューだ。
ファンクとラテンが融合したジャンル “ファンカラティーナ” がロンドンで流行しているらしい――1982年、日本のド田舎の高校生にもそのニュースは届き、その急先鋒とされたバンド、ヘアカット100のアルバム『ペリカン・ウェスト』を聴く。
今でこそアカット100はネオアコの文脈で語られているが、当時はネオアコという言葉は存在しなかったし、個人的にはファンカラティーナという言葉の方が今でもピンとくる。そんなめんどくさいジャンル分けはともかく、当時の自分の耳には何だかオシャレな気がした。音楽誌に載っていたバンドの、スタイリッシュなグラビアのイメージと重なったのも大きかった。
そんな中で目にしたのが、先述のインタビュー記事。ニック・ヘイワードが言ったのか他のメンバーの発言だったかは覚えてないが、「ジーンズなんてダサいものは、絶対履かない」という言葉が目に留まる。ファッションに興味がわいてくる十代に、この言葉は刺さった。
そうか、ジーンズはオシャレじゃないのか…… かくして、着るものを母親任せにしていたバカ息子は「ズボンを買うならジーンズ以外にして!」とアピール。厳しい家計でやりくりしている母親にはわがままを言ってしまったなあと後悔を覚えると同時に、ヘアカット100も罪なことを言ってくれたなあ…… という気にもなる。
2016年3月、『ペリカン・ウェスト』はリマスター&デラックス・エディションで再発され、つい買ってしまった。彼らの発言は罪だったかもしれないが、音楽に罪はない。今聴いてもかっこいいぞ…… と、今や週の半分はジーンズで通すオッサンは、しみじみ思うのでした。
2016.05.02
YouTube / Lady80z's channel
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