2019年もいよいよ7月も中盤にさしかかり、そろそろお盆の声も聞こえてくるようになった今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。本日は1980年に発売された、高橋ユキヒロさんの2枚目のソロアルバム『音楽殺人』から、夏にぴったりの曲を紹介したいと思います。
さて、お手元の LPレコードでお聴きになる方はA面ではなくB面を表にしてくださいませ。その一曲目がなんと、「BIJIN-KYOSHI AT THE SWIMMING SCHOOL」でございます。
あ、針を落とす、あるいはプレイボタンを押すその前に、さわやかなテイストのカクテルなどをご用意されてもいいかもしれません。
さあ、それでは聴いてみましょう。いかがでございましょうか、軽快なリズムボックスがビートを刻み始めます。続いて軽やかなシンセサイザーのリード、大村憲治さんの手になるリードギターの旋律が、さわやかなメロディーを奏で始めます。
テクノポップのテイストを残しながら、それでいて正調サーフロック的な、まるでプールサイドに自分がいるような、そんな気分になってまいります。
それもそのはず、この曲は加藤和彦さんがプロデュースしたザ・ベンチャーズのアルバム『カメレオン』に提供するために作られたというのがそもそものきっかけだからなんです。
所々に散りばめられた SE 的なシンセサイザーの音は、まるで泳ぐ時に水面を去来する泡や波のようにも聞こえてきますね。そしてサイドギターは当時プラスティックスのメンバーであった立花ハジメさんですが、サウンドにユーモラスなハーモニーを加えていて、80年代のテイストを強く感じる事ができます。また、彼は曲のエンディングでもアームを駆使したソロも奏でています。こちらも併せてお楽しみいただくと当時のアツい風がよみがえること請け合いです。
そして、この曲、アルバムの中で唯一ドラムを高橋ユキヒロさんがプレイしていない曲でもあるのが興味深いところでございます。
このように、80年代の初頭に生まれたこの曲が収録されているアルバム『音楽殺人』には YMO のメンバーは言うに及ばず、シーナ&ロケッツから鮎川誠、シーナ、浅田孟。サンディー&ザ・サンセッツからは久保田麻琴、サンディー。等々の豪華なメンバーが携わっております。
当時は YMO の『ソリッド・ステイト・サヴァイバー』が売れまくり、当然そのようなサウンドを期待されている中で、ユキヒロ氏のポップエッセンスを凝縮したような仕上がりはさすがとしか言いようがありません。
そのほかにもレゲエ、スカ、ダブやモータウンビートなど、ドラマー高橋ユキヒロのドラミングの真骨頂も堪能することができます。当時の先端のテクノロジーを駆使してこの先数年、いや数十年のポップスの行く道を示しているように見えるのですが、どこかユーモラスで60年代、70年代への憧憬も見え隠れするという稀有な名作だと思ったりするのです。
ほかにもこのアルバム、名曲ぞろいでございますが、これからの暑い日々を過ごすお供にぜひともおススメさせていただきたい次第なのです。
さて、そのあとソロアーティストとしての高橋ユキヒロさんは様々な旅を続けるわけでございますが、その続きはまたの機会にお話しできれば、と思います。
ところで、この曲を知ったきっかけなのですが、江口寿史さんの『すすめ!パイレーツ』の1シーンの指定 BGM がこの曲だったんですね。
そのシーンは、確かテニスしている女子だったのですが、なぜ水泳がテーマのこの曲が選ばれたのが興味深いところです。ご存じな方がいらっしゃったら是非教えてください。また、ワタシとしては、スイミングスクールの美人教師様におかれましては「プールサイドは走っちゃダメ!」などと優しく叱られたいなぁ… などと思うわけでございます。
2019.07.14
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