口には長楊枝。「あっしには関わりのねえことでござんす…」 時代劇は1970年代までテレビ番組の人気ジャンルだった。当時『木枯らし紋次郎』を観ていた少年ならば、食べ終えた団子の串を口に咥えながらよく紋次郎の真似をしたに違いない。主題歌は「誰かが風の中で」。小室等さんがバカラックを意識して作ったという曲は恐ろしくクールだった。そしてこの紋次郎ブーム以降、時代劇において現代的な楽曲が使われることが多くなっていくのだが、今回は時代劇人気が失速していく1980年代に生まれたその後の名曲を2曲紹介しようと思う。 1曲目は映画『伊賀忍法帖』(1982年)の主題歌「愚かしくも愛おしく」 作品は角川三人娘の次女・渡辺典子のデビュー作で共演は真田広之。主君の妻を奪い取ろうと陰謀を巡らせる強欲な戦国武将を倒すために主人公である伊賀忍者が活躍するというもの。お姫様と主人公との悲恋が軸となっていて、同曲は二人が地獄の業火の中で焼かれながら永遠の愛を誓い合うラストシーンで印象的に流される。 宇崎竜童さんの渋い情念系のヴォーカルと大ヒット曲「身も心も」を髣髴とさせるメロディ。輪廻をイメージした歌詞が突き抜けていて「黄泉路を渡る舟に何度でもお前とそしりを覚悟で渡っていく」というサビの部分にグッときます。 2曲目は岡林信康さんの「Gの祈り」。テレビドラマ『服部半蔵・影の軍団』(1980年)のエンディングテーマ。 ドラマでは幕閣に蔓延る悪党たちと影の軍団との戦いを中心に貧しくも誇り高く市井で生きる忍者たちの姿が描かれていきます。その生き様や悲しみとフォークソングの神様と呼ばれた岡林さんらしい心に沁み入る楽曲が見事にハマり、聴けば不思議と心が浄化される癒し系の名曲となっています。人の温もりや秘めたる想いといった心の機微を感じとって、是非一度聴いてみて欲しい。 愚かしくも愛おしく / 宇崎竜童 作詞:阿木燿子 作曲:宇崎竜童 編曲:朝川朋之 発売:1982年(昭和57年)12月1日 Gの祈り / 岡林信康 作詞・作曲:岡林信康 編曲:渡辺茂樹 発売:1980年(昭和55年)4月21日
2016.06.18
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