池波正太郎の『仕掛け人・藤枝梅安』をルーツとし、『必殺仕掛人』(1972年)を皮切りに始まった必殺シリーズ。
金を貰って悪人を退治するというドラマの中に、時代劇の枠組みを超えて受験地獄や暴走族、金融詐欺事件などをも取り混ぜるなど、世相を切った風刺でその人気を誇っていました。
一掛け二掛け三掛けて
仕掛けて殺して日が暮れて
橋の欄干腰下ろし
遥か向こうを眺むれば
この世はつらい事ばかり
片手に線香 花を持ち
おっさん おっさん 何処行くの
私は必殺仕事人 中村主水と申します
このドラマ… 80年代に入っても、その勢いは留まる所を知らず、南町奉行所の同心 “中村主水” を主役に据えた『必殺仕事人』が始まると、一気に時代を駆け抜けていくわけでありますが、仕事人たちが悪人を懲らしめる様を観て、溜飲を下げた方も多数いらっしゃったのではないでしょうか。
―― という訳で、必殺シリーズについて深く掘り下げたい… とは思ったのではありますが、ここは音楽情報サイト Re:minder。よって今回は主題歌、挿入歌などの音楽面についてお話させて頂ければと思います。
必殺と言えば、平尾昌晃さんの作品が著名です。「荒野の果てに」が代表的、劇伴のインストも数多く手掛けています。一方、平尾先生以外の手による楽曲も多数あり、今回はそちらに目を向けたいと思います。
◆其の壱、三田村邦彦編
三田村邦彦と言えば、やはり長きにわたり活躍した仕事人 “飾り職人の秀” でしょう。その彼が劇中でこのような曲を歌っています。
●必殺仕事人(挿入歌)
「いま走れ! いま生きる!」
歌・作詞:三田村邦彦
作曲:小坂明子
編曲:小坂務
こちらは三田村さん本人の作詞です。ニューミュージックタッチのミディアムテンポな曲ですが、「あなた」で有名な小坂明子さんが作曲し、そのお父様である小坂務さんが編曲を行っています。時折、歌番組などでちょくちょく共演していた親子によるコラボレーションです。さて、次は、鉄板コンビ宇崎✕阿木夫妻の作品です。
●必殺仕事人 IV(挿入歌)
「自惚れ」
歌:三田村邦彦
作詞:阿木燿子
作曲:宇崎竜童
編曲:矢野立美
80年代の洋楽ロックがお好きな方には「おっ! これは!?」となるサウンドかもしれませんが、気のせいでしょうか。ちょっと旅に出たくなったりしませんか?
◆其の弐、京本政樹編
“組紐屋の竜” を演じられた京本政樹さん。こちらは演じる、歌うだけにとどまらず、作詞・作曲共に手掛けられています。
●必殺仕事人 V(挿入歌)
「哀しみ色の…」
歌・作詞・作曲:京本政樹
編曲:大谷和夫
編曲はあの「男達のメロディー」で知られる SHOGUN の大谷さんですが、何と申しましょうか。紛れもなく情念系、必殺サウンドになっています。続く『必殺仕事人V・激闘編』の「女は海」では京本✕大谷コンビが再登板、歌ったのは “何でも屋の加代” こと鮎川いずみさんでした。
◆其の参、女性歌手編
西崎みどりさんはこれまでの役者さんと異なり、ゲスト出演も含めシリーズによって様々なキャラクターを演じてきました。『必殺橋掛人』では春光尼(尼僧)という殺しの元締役、挿入歌も歌っています。
●必殺橋掛人(挿入歌)
「もどり道」
歌:西崎みどり
作詞:只野菜摘
作曲:宇崎竜童
編曲:入江純
曲は必殺シリーズの挿入歌の中では指折りのポップテイスト。80年代ど真ん中のサウンドと言えるでしょう。ちなみに編曲の入江純さんは90年代に入ってから、四人目の YMO と呼ばれる松武秀樹さん率いる Logic System に加入、現在もメンバーとして活躍されています。道理で煌びやかなサウンドな訳だと納得しました(この曲をずーっと岩崎宏美さんだと思っていたのは読者の皆様と僕の秘密ですよ)。
まだまだご紹介できていない曲もたくさんありますが、80年代からはみ出てしまった名曲をちょっとだけ。
●翔べ! 必殺うらごろし(主題歌)
「愛して」
歌:和田アキ子
作詞・作曲:浜田省吾
編曲:井上鑑
なんと浜省✕アッコさんのタッグです。シャウトするような歌声は必聴です。でもこれB面曲なんですね。
さて、最後に忘れちゃいけない中村主水が主役の最後の作品から――。
●必殺仕事人・激突!(主題歌)
「月が笑ってらぁ」
歌:藤田まこと
作詞:荒木とよひさ
作曲:堀内孝雄
編曲:水谷竜緒
藤田まことが初めて、必殺シリーズの主題歌を歌ったとされるこの曲、堀内孝雄さんが手掛けたものです。必殺シリーズではこの曲だけですが、その後『はぐれ刑事 純情派』でこのタッグは引き継がれていくことになります。
2019.02.09
Apple Music
Apple Music
Apple Music
Information