7月21日

少年隊とは違う感動!シブがき隊「100%…SOかもね!」にみる思春期の恋の妄想

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記号・ローマ字・数字・ひらがな… すべてをタイトルに詰め込んだ名作


シブがき隊は本当に不思議だ。彼らの名前が出ただけで多くの人は、

「ああー、シブがきね! かもねかーもね!」
「そうそう。すーがーりーつけー!」
「ハイハイ、スシ食いねェー!」

… と口元がほころび、歌の一節まで歌ってしまう。シブがき隊は心が跳ね上がる “キャッチーなワード” の宝庫だ! 彼らの楽曲は、アイドルソングの流れを変えたとすら思っている。

セカンドシングル「100%…SOかもね!」は、タイトルからして奇跡。数字、単位、記号、英単語、ひらがなが詰め込んであるにも関わらず、こんなにコンパクトでキャッチー! 凄まじい職人技である。

作詞は森雪之丞。その言葉遊びの才能は、過去の作品を見ても素晴らしく、1977年の作品、榊原郁恵「アル・パシーノ+アラン・ドロン<あなた」という挑戦的な歌詞も彼の仕事。「どう読めばいいのか」とファンを困惑させつつも、見事にヒットに乗せた実績がある。

彼は著書『作詞講座 歌詞カードに火をつけろ!』(シンコーミュージック)で、シブがき隊についてこう書いている。

「『シブがき隊』にはテーマにしても言葉のはめ方にしても、今までになかった大胆な実験を試みたんだ」

―― なるほど、シブがき隊という粗削りでユニークな個性が、言葉の匠・森雪之丞の新たな挑戦で、花開いたのだ。

「100%…SOかもね!」が見せる3つのシーン


「100%…SOかもね!」から見えるのは、「恋じゃNAI」「つべこべ言うなよ」とけっこう重症なオラオラ状態だったデビュー曲「NAI・NAI 16」から少し大人になり、「恋かもね」と言えるようになったボーイズたちの胸騒ぎ。

まず歌い出しの、

 かもねかもね 恋かもね
 ピタリ合っちゃうかもね

このあたりは、待ち合わせ場所に向かう道のりでの妄想だろう。「今夜決めなきゃ」と鼻息フンフンだ。しかしBメロではなんと、

 君とキッスできたら俺
 街中を逆立ちしたまま
 LOVE LOVE I LOVE YOU
 叫んでもいいぜ

… と妄想が凄い勢いでエスカレートしている。

この「ちょっと落ち着け」といいたくなるほどのハイテンション、間違いなく深夜の発想である。きっとBメロは「前の日の夜」。彼はきっとワクワクして眠れなかったのだ。枕を抱きながら「うわキッスできたらどうしよう俺」と予想をし、ゴロゴロとベッドの端から端まで何度も転がっている様子が浮かんでくる! しかも「叫んでしまうぜ」ではなく「叫んでもいいぜ」ともったいぶっているのが、たまらなく “アオハル” である。そしてこの妄想のあと、

 ミニの赤いスカートが
 どきりとまぶしくて

… のターンで、さっきまでの鼻息はどこへやら、急に彼はオロオロし出す。ここからが彼女と合流したリアルなのだ、きっと。

ビックリするほどカワイイ彼女を見たことで、これまでいろいろ考えていた妄想や計画が「彼女ヤバいかわいい」に上書きされていく。それが、勢いある3人のハーモニーにより見事に浮かび上がってエモい!

モックンの王道のジェントルマンボイス、フックンの甘えん坊な高音、ヤックンのやんちゃな巻き舌と低音。声の個性を生かした歌唱パートの割り振りも絶妙だ。

テンパった等身大ボーイズの “元気な妄想” を具現化したシブがき隊


地団太を踏んだり、キバッたポーズが多いダンスは、決してスマートではない。3人の踊り方も結構バラバラだけど、それがいい。シブがき隊はハモリとシャウトは奇跡的に揃うがその他は揃っていないのがいい! 悪ガキフレーバーに昇華されている。

この歌は第24回日本レコード大賞・最優秀新人賞、第13回日本歌謡大賞・放送音楽新人賞を受賞し、『第33回NHK紅白歌合戦』にも初出場を果たした。シブがき隊の3人にとっても自信がついた一曲だったのではなかろうか。レコード大賞授賞式で、一番泣きそうになかったヤックンが、子どものようにしゃくりあげ泣き、モックンが、ヤックンのパート「あせるぜホント」のパートをフォローして歌っていたのを覚えている。

ああ、シブがき隊を思い出すと、その初々しさに今でも鼓動が早くなる。まさに「ラブモーショーン」ではなく「ラブモーショアァーン!!」な世界!

歌やダンスのテクニックももちろん大切だけど、“勢い” だって素晴らしい表現法。彼らはそう教えてくれた。あとからデビューした3人組、少年隊を見て「かなわないなあ」と思ったというエピソードを聞いたことがあるが、感動のジャンルがまた違う。どちらも奇跡のトライアングルであることに違いはない。シブがき隊はスタイリッシュではないけれど、テンパった等身大ボーイズの “元気な妄想” を100%具現化していた。

だからこそ、いつ聴いても「ふふっ」となり、同時にウルッとくるのである。

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2022.04.09
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カタリベ
1969年生まれ
田中稲
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