5月5日

シブガキ隊「NAI・NAI 16」トンチキソングの起源、その歌詞を真面目に考えてみた!

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シブがき隊のデビューシングル「NAI・NAI 16」がリリースされた日
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近年話題のジャニーズのトンチキソング


近年、『ミュージックステーション』や『関ジャム完全燃SHOW』など、音楽番組でジャニーズの “トンチキソング” が取り上げられることが増えている。トンチキソングとは、定義はいろいろあるだろうが、思わず「なんじゃそりゃ!!」と言いたくなる、本気なのかネタなのかがわからない楽曲のこと… と筆者は解釈している。最近だと、NEWSの「チュムチュム」や関ジャニ∞の「∞SAKAおばちゃんROCK」がそれに当たるらしい。

メディアでこれが話題に上がる時、当然その歴史にも目を向けられるわけだが、そのたび疑問に思ってきた。「シブがき隊が元祖じゃないのか…?」と。シブがき隊の楽曲は、少なくとも後追い世代の筆者にとってはトンチキソングに感じるし、それ以降のジャニーズにも多大な影響を与えていると思ってきたが、これまでの企画ではほとんど取り上げられてはいないようだ。そんなシブがき隊のデビュー曲、思うにジャニーズトンチキ界の火付け役と思われる「NAI・NAI 16」(ナイナイシックスティーン)を最大のリスペクトを込めて取り上げてみたい。

シブがき隊と「NAI・NAI 16」とは


薬丸裕英(ヤックン)、布川敏和(フックン)、本木雅弘(モックン)の3人で結成されたシブがき隊は、1982年5月5日に「NAI・NAI 16」でデビューした。一発目のシングルにして、この曲は25.9万枚を売り上げるヒットを記録している。

また、シブがき隊はこの年、逸材ばかりがひしめきあう1982年デビュー組の中で見事日本レコード大賞最優秀新人賞を受賞している。リアルタイムでは経験していないものの、デビュー曲である「NAI・NAI 16」がその起爆剤となったことと想像する(受賞は「100%…SOかもね!」)。

その他90年代に入ってからは、フジフィルム「写ルンです」のCMに「♪ ジタバッタすっるなよ 世紀末が~来るぜ」のフレーズが使われている(CMはこの後に聖飢魔Ⅱがやって来るという内容であった)。

その後も「NAI-NAI-NAI 恋じゃない」の覚えやすいフレーズはヒットだけにとどまらず、現在もバラエティ番組等で各所で使われ続けており、世代以外からの認知度も高い。そんな「NAI・NAI 16」の歌詞について、どのあたりがトンチキたる所以なのかについて見ていきたい。

「NAI・NAI 16」の特徴的な歌詞


■ NAI・NAI 16
■ 作詞:森雪之丞
■ 作・編曲:井上大輔

 NAI-NAI-NAI 恋じゃない
 NAI-NAI-NAI 愛じゃない
 NAI-NAI-NAI でもとまらない

キャッチーな言葉に耳を惹かれがちだが、その内容は「好きでもない、愛しているわけでもない、でも止まらない」というもの。デビュー曲の第一声としてはなかなか軟派で戸惑うフレーズだ。

 笑わせるぜ 靴箱に ラブレターなんて
 乙女チックなマンガでも
 まず見当らないね
 授業中に 手をあげて 俺を好きだって
 もし言えたら 抱いてやるぜ

おそらくこの曲が取り上げられるたびにずっと言われてきたことだと思うが、とんでもなく上から目線である。さらに面白いのが「授業中に 手をあげて 俺を好きだってもし言えたら 抱いてやるぜ」のセリフこそ、よっぽど「乙女チックなマンガ」でも見当たらぬ言い回しである点だ。前フリからの、考える間もなくフラグ回収がおこなわれているところも実に大胆だ。

また2番では、このような表現がなされている。

 たまんないぜ キスの後 涙こぼされちゃ
 なぜオレ達生まれたか
 教えそびれちまう

「なぜオレ達生まれたか」部分には解釈の違いはあれど、個人的にはド直球なメイクラブだと思っている。じらされた自分の中の春情のムシを生命の神秘に置き換えるあたり、やはり「乙女チックなマンガでもまず見当たらない」ロマンが満載である。これは敢えてのパラドックスなのか、それともメタ認知なのだろうか。

「NAI・NAI 16」の歌詞、もうひとつの特徴


トンチキ感のある歌詞のほかにもうひとつ、この歌をイメージづけている特徴がある。恋愛に限らず、歌には必ずと言っていいほど出現する「おまえ」「君」「あなた」等の、相手の女性をさす二人称が一度も出てこないということだ。

そのせいか筆者には、だれか特定の女性ではなく、まず一番に「モテモテのオレ」、そしてそれをとりまく不特定多数の女子たち… というイメージが浮かんでしまう。「やれやれモテる男は大変だぜ…」なんて言葉が聞こえてきてもおかしくない。靴箱にラブレター? そんなじれったいことしないで、俺のことを好きだっていえるやつ、出てこいよ、俺は抱いてやるぜ。

40年前の感覚と現在の感覚は同じではないだろうが、十中八九、前のめり男子ではないだろうか。河合奈保子「けんかをやめて」よろしく、そのトリマキは本当に実在するのか? 妄想が生み出した虚像ではないのか? と訝ってしまう。

シブがき隊のトンチキ性はなぜ中和されたか


そんな「NAI・NAI 16」だが、ここで忘れてはならないのが、現にトンチキソングを歌うジャニーズグループはいても、デビュー曲はだいたい正統派だし、割合もたまにある程度だということだ。一方シブがき隊はただ元祖であるだけでなく、基本的にこの路線を進んでいく。次のシングルでは、キッスができるなら逆立ちしたまま I Love youを叫ぶ宣言をしている。

それなのに(といっては失礼だが)、驚くほどヒット曲も代表曲も多い。正直、ともすれば闇に葬り去られたアイドルになるか、一発屋になってしまってしまっていてもおかしくないテーマである。

その楽曲の危うさを何が中和したか考えるに、ひとつは歌詞だろう。逆説的かもしれないが、「本気でやっているしネタではないけど、いかにもさを感じる」という絶妙なバランスを保っているのだ。さらに「♪ らぶrrrるぇったーなんて~」などと “巻き舌” をしながらの歌唱は、「いかにもシブいガキなんだぜ、俺たち」というわかりやすいポーズだ。こんな人は実在しないとわかっていても(あるいは実在してたら引くかもしれないけれど)、ちょっとクサいくらいの少女漫画や恋愛ドラマのキャラクターに疑似恋愛をしたくなるのと同じ原理かもしれない。

もうひとつは、彼らのデビュー時ならではのウブさだろう。彼らが慣れないながら一生懸命に歌唱する様子からは、自分の意志とは関係なくオトナの思惑によって創造されたキャラクター… まさに “アイドル” 性がぷんぷん感じられる。彼らの整っていながらもまだ幼い顔つき、それから感情移入しきらない、上手すぎない歌唱も作用して、この偶像を作り上げることができたのではないだろうか。

布川敏和も言及、完成度が高いシブがき隊の楽曲


先日偶然、ネットメディアにてシブがき隊の楽曲の人気投票がおこなわれた(調査媒体:ねとらぼ 実施期間:2021/01/22~2021/02/05)。

結果は、「ZOKKON命」が24.5%で第1位。以降「100万粒の涙」「DJ in My Life」と続いた。これに、シブがき隊の一角・フックンこと布川敏和が自身のブログにて、こう言及している。

「シブがき隊の曲は ジャニーさん・メリーさん・レコード会社のプロデューサー・デレクター・作曲・作詞・編曲の先生・振付けの先生方達が, 妥協無しで 練りに練って 生まれた曲なので, 全てイイ曲なのです!」

ジャニーズには代々にわたって先輩の楽曲を歌い継ぐ風習があるが、メンバーが誰もジャニーズ事務所に所属していない現在、シブがき隊が取り上げられる回数は少ない(おそらく、さらに先輩のフォーリーブスのほうが歌われているくらいだ)。しかしながら「ナイナイナイ」「かもねかーもね」「ゾッコン!」「ヘイラッシャイ!」などの彼らが発してきたフレーズは未だにここぞの場面で使われている。どこで聴いたかはわからなくても、一度聴いたら忘れられない不思議な魔力もある。フックンがこう言う以上、これまで述べてきたことも含め、シブがき隊の活躍は緻密な計算の上に起こり得た必然だったのではないだろうか。

ジャニーズの伝統芸能、トンチキソングの元祖はシブがき隊?


最近取り上げられがちな、“ジャニーズのトンチキソング” のルーツは、少年隊の「デカメロン伝説」ではないかという意見もあるそうだが、私はやはりこの伝統芸能の伝道師はシブがき隊だったと思っている(少年隊は少々かっこよすぎる)。そして、その皮切りとなった禁断の果実はデビュー曲「NAI・NAI 16」だったのではないかと想像してしまう。

ほとんどのトンチキ企画にて、彼らの楽曲が言及されていない点は残念である。しかしもしかしたら、それは無自覚にシブがき隊のトンチキ魔法にかけられた人間の多さの証明でもあるのかもしれない。


参考資料:
■ ふっくんの日々是好日 布川敏和オフィシャルブログ / シブがきソング No.1 結果発表!
■ 1968-1997 ORICON CHART BOOK(オリコン)


2021.02.19
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カタリベ
1992年生まれ
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