12月5日

日本映画最強タイトル「戦国自衛隊」薬師丸ひろ子も出演した青春群像劇!

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日本映画最強タイトル「戦国自衛隊」


かつて、20世紀FOX を率いたザナック親子は「一行で表現できない映画はヒットしない」が口癖だった。事実、父親のダリルは『史上最大の作戦』に “空前の金をかけた、空前のオールスター映画” とコピーをつけ、息子のリチャードも『ジョーズ』を “美女がサメに襲われる映画” と宣伝した。いずれも、大ヒットしたのは言うまでもない。

確かに、それらのコピーは分かりやすい。映画の売り(魅力)や情景がありありと浮かぶ。聞いただけでワクワクする。ならば―― それをタイトルで表現できたら、最強じゃないだろうか。タイトルとポスターのビジュアルだけで、初見でスッと内容と魅力が観客に伝われば、これに勝るものはない。

例えば―― 自分の好みで申し訳ないが、『大脱走』なんて、名は体を表す、シンプルでいいタイトルだと思う。確か、公開時のポスターは、連合軍の捕虜たちが集団で脱走しているビジュアルだったが、これは誇張でもなんでもなく、実際に(これは実話がベースの映画である)、76名もの捕虜たちがドイツ軍の収容所から脱走する話なのだ。そのスケール感と、捕虜たちが役割分担して “大脱走プロジェクト” にまい進するディテールを楽しむ映画である。タイトルに偽りなし。

また、かのアルフレッド・ヒッチコック監督の名作『裏窓』も秀逸なタイトルだと思う。この、たった2文字に、ストーリーから舞台装置まで全ての要素が凝縮されていると言っても過言ではない。ジェームズ・スチュワート演ずる主人公のカメラマンは骨折して、部屋から一歩も出られない身。暇を持て余した彼は、中庭を挟んで向かいのアパートの裏窓を覗き見る楽しみを覚える。そこには、裏窓ゆえの住人たちの無防備な生活があった。そんなある日、ふと主人公は不可解な事件を目撃する―― という展開だ。主人公が動けず、全てが裏窓で展開される構成は舞台劇のようでもあり、ヒッチコック一流のギミック(仕掛け)を楽しめる。

さて、では日本映画で、そんなひと言で内容が伝わる(ワクワクする)ような最強タイトルの作品はあるだろうか?

あるんですね、これが。少々前置きが長くなったが、今から40年前の今日―― 1979年12月5日に公開された角川映画『戦国自衛隊』こそ、そんな最強タイトルの称号に相応しい作品だと思う。

圧倒的なタイトルとビジュアルの力、そして大量のテレビスポット


改めて、その字面を見てほしい。
戦国自衛隊
戦国時代の “戦国” に、“自衛隊” である。両者の間には400年もの時代の開き(公開当時)があるが、そこに当然ながら違和感がある一方で、妙に字面としての収まりがいいことに気付く。そう、戦国自衛隊――。自衛隊は戦時に活躍するので、意外に戦国時代との親和性は高いのだ。

実際、ポスターのビジュアルを見ると、戦国武将が操る騎馬隊の後方に、戦車やジープ、そして軍用ヘリの雄姿が映える。武将たちの甲冑に対し、自衛隊員たちは迷彩服―― なんだろう、この相性の良さ。シンプルにカッコいい。ありえない “2ショット” だが、様になっている。むしろ、ワクワクする。戦国武将と自衛隊が同じ舞台に立ったら、一体何が起きるんだろう? と興味は尽きない。

ほら、もう観たくなった。
そう、これが映画『戦国自衛隊』の魅力である。圧倒的なタイトルとビジュアルの力。加えて音楽だ。当時の角川商法の要が、大量のテレビCMを投下し、主題歌をかけまくって、印象的な台詞で締めるというもの。これに僕らはやられた。

 サン・ゴーズ・ダウン
 サン・ゴーズ・ダウン
 もう日が暮れるから
 サン・ゴーズ・ダウン
 サン・ゴーズ・ダウン
 俺の胸においで

哀愁を帯びた主題歌「戦国自衛隊のテーマ」(歌・松村とおる)が流れる中、圧倒的な数の武田騎馬隊に挑む、少数精鋭の自衛隊の雄姿。そこへナレーション。
「無敵・武田騎馬隊に挑む、若き自衛隊員21名。戦国自衛隊」―― タイトルコールに合わせるように、カットインする題字。そして、締めは主人公・伊庭義明 三等陸尉を演じる千葉真一の台詞である。
「歴史は俺たちに何をさせようとしているのか。」

―― しびれる。これを観せられて、映画館に行かないワケがない。時に、本編以上に面白いと揶揄されがちな角川映画のCMだが、同映画は角川旋風を巻き起こした『人間の証明』や『野性の証明』より興行成績では劣るものの、それらより遥かに面白かったと断言したい。個人的には、今も角川映画で一番だと思っている。

脚本は鎌田敏夫、SFではなく若者たちの青春群像劇!


原作は、1974年に早川書房から刊行された半村良サンの SF小説である。1975年にハヤカワ文庫に収録され、映画化の際に角川文庫になった。よくあることだが、原作と映画版では、少々テイストが異なる。原作はあくまで SF小説であり、そのルールに沿って書かれている。即ち、タイムパラドックスとかパラレルワールドといった問題にもちゃんと向き合い、破綻しない構成になっている。原作は原作で普通に傑作なので、未読の方は読まれることをお勧めします。オチにゾクッとしますから。

一方、映画版である。製作費が11億5000万円と、当時としては破格の金額だっただけに(ちなみに、角川春樹社長が自宅を抵当に入れて、銀行から借りたそう)、特に、武田騎馬隊との合戦シーンや、自衛隊の兵器(戦車、軍用ヘリ、装甲車、各種砲撃ほか)に厚く予算が振り分けられたとか。有名な話だが、予定していた自衛隊の全面協力が叶わなかったために、戦車は自衛隊で使われていた “61式” のレプリカを自作したそう。制作費は8000万円。これだけでも当時の春樹社長の本気度が分かる。いい意味で、頭おかしい(褒めてます)。

そして、映画版のもう一つの特徴は、早々に SF を諦めたことである。脚本は、あの鎌田敏夫サン。当時、鎌田サンは『俺たちの旅』(日本テレビ系)を始めとする青春群像ドラマをよく書いていたので、それで呼ばれたという。そう、同映画を春樹社長は “青春群像劇” と位置付けたのだ。結果として、その戦略は正しかったと言える。

なぜなら、自衛隊員は総じて若い。タイムスリップして戦国時代へ送られる21名のうち大半は20代から30代前半の一等陸士か二等陸士である。つまり、ノンキャリの若者たちだ。悩める彼らの感情の変化をストレートに追うだけで、ドラマになる。現地の人々と触れ合いを通じて、時に彼らの素顔が見える。それ即ち青春である。そこに理屈はいらない。

そうなると、SF の細かなルールが邪魔になる。なぜ、タイムスリップしたのか、なぜ戦国時代なのか、歴史を変えて問題はないのか、補給はどうするのか、どうすれば元の世界へ戻れるのか―― etc. 不思議なことに、同映画の場合、途中からその辺りのことがどうでもよくなる。

そう、同映画は SF映画として、頭よく、小さくまとまるのではなく、たまたま戦国時代へタイムスリップした若者たちの青春ドラマ、人間ドラマを太く、短く描いて成功したのである。

もちろん、中には悪い連中もいる。渡瀬恒彦演ずる矢野隼人 陸士長は、上官の伊庭と反りが合わず、手下を連れて隊を無断で離れる。そして周辺の村々を襲っては、悪事の限りを尽くす。ある意味、それも人間の弱さである。もし、あなたが現代の兵器を持って戦国時代にタイムスリップして、二度と戻れないと悟った時、果たして理性を保てるだろうか。それはそうと、この一連のシーンは女性の裸がガンガン出て来て、当時の小坊には少々刺激が強すぎた。

だが、本当の人間の怖さは、矢野たちではない。千葉真一演ずる、この映画の主人公・伊庭である。当初は隊を率いる指揮官として理性的に振る舞うが、襲撃されて部下を殺されたり、夏八木勲(当時・夏木勲)演ずる武将・ 長尾景虎と友情を育むうち、次第に実戦経験のない自衛隊の存在に疑問を抱くようになり、自らの実力で生き抜く戦国の世に惹かれていく。そして、天下取りを目指す。

薬師丸ひろ子もワンカット出演、フィナーレはジョー山中の歌う「ララバイ・オブ・ユー」


同映画のクライマックスは、終盤、25分間にも渡って展開される武田騎馬隊との一戦である。兵器に勝る自衛隊だが、圧倒的な武田軍の兵力を前に、次第に追い詰められていく。そして、あの有名なシーンとなる。それは、敵兵から辛くも逃れてきた竜雷太演ずる木村の前に、不意に現れた少年兵(薬師丸ひろ子)――。相手が子供と知り、銃を下ろしたその時、容赦なく少年兵の槍が木村の胸を突く。絶命しながら木村がつぶやく。

「まだ…… 子供じゃないか」

同映画のフィナーレはあっけない。辛くも武田軍に勝利した自衛隊だったが、自らの兵器の大半も失ってしまった。荒れ寺で休息する彼らのもとへ、景虎の軍勢がやってくる。伊庭は笑顔で出迎えるが、すぐに不穏な空気を察知する。景虎軍が寺を包囲していたのだ。歴史は、もはや彼らを必要としていなかったのである。

燃え盛る炎の中、ジョー山中の歌うエンディングテーマ「ララバイ・オブ・ユー」が流れる。作詞・阿木燿子、作曲・宇崎竜童。ソウルフルなナンバーが、戦国の世に現れた異色の部隊の最期を哀しく見送る。

 Friendly Oh, Friendly
 友達になれたらいい
 Friendly Oh, Friendly
 それ以上は望まないさ

ちなみに、映画では語られないが、原作では伊庭は織田信長で、荒れ寺は本能寺だったと種明かしがされる。
やはり、歴史は彼らを必要としたのである。


※ 指南役の連載「黄金の6年間」
1978年から1983年までの「東京が最も面白く、猥雑で、エキサイティングだった時代」に光を当て、個々の事例を掘り下げつつ、その理由を紐解いていく大好評シリーズ。

■ 宮崎駿も降板、壮大すぎたアニメ「NEMO/ニモ」映画より面白い制作過程!
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etc…

2019.12.05
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