11月11日

新しいクルマ文化の始まり「ホンダ・シティ」とマッドネスのムカデダンス

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ホンダとソニーのモノづくりは、遊び心にあふれていた!


子供のころからホンダとソニーが好きだった。2つの会社に共通するのは、小学生でも分かる遊び心と、デザインの先進性である。

初めて憧れたソニーの製品は、小学生の時に家電量販店の店頭で見かけた「ジャッカル300」なるラジオとテレビとカセットデッキが一体となった、通称 “ラテカセ” なるジャンルの商品だった。似た機能の商品は他社にもあったが、ソニーが図抜けてデザインがイカしていたのを覚えている。

中学に上がり、前年に出たばかりの「ウォークマン」をお年玉で買ったのが、人生初のソニーの購入体験だった。初期のモデルは盛田昭夫会長(当時)の発案でツインジャック仕様となり、ヘッドホン端子に「GUYS&DOLLS」(野郎どもと女たち)と書かれていた。この遊び心がソニーである。残念ながら、ついぞ僕はその機能を使うことはなかったが――。

一方、ホンダに対しては、兄の影響で小学生の時からオートバイに憧れ、「ヨンフォア」こと、ドリームCB400FOURに夢中になった。美しい曲線を描いた4into1 のマフラーと、赤一色の都会的なタンクが魅力的で、当時“カフェレーサー” なんて呼ばれていた。16歳になったら、すぐに中免を取ろうと心に決めた。

ホンダ車では、初代のシビックにまずハマった。当時、クルマはおじさんの乗るセダンばかりだった時代に、トランクルームのない2ボックスのスタイルは新しかった。コンパクトなサイズも若々しかった。ここだけの話、リアゲートに表記された「CVCC」を当時、僕は「シビック」と読んでいた。小学生では無理からぬ話だった。

驚きのテレビコマーシャル、マッドネスのムカデダンス


「大人になったらシビックを買おう」―― そう固く誓った小坊の僕だったが、中学に上がると、あっさりと前言を撤回する。シビックよりも魅力的なクルマが登場したからだ。

 シティ シティ
 ホンダ ホンダ ホンダ ホンダ
 シティ
 ホンダ ホンダ ホンダ ホンダ

――そう、ホンダのシティである。
マッドネスの歌うCMソング「シティ・イン・シティ(In The City)」の歌詞を文字起こしすると、ほとんど「シティ」と「ホンダ」しか言っていない。だが、そのクルマを説明するのには、それで十分だった。なぜなら、シティはニュースにあふれていたからである。

■ 「低く、長く、幅広い方がカッコいい」とされる当時のクルマのデザインの概念を変える、一見して背の高いクルマ。通称・トールボーイ。
■ 角目が流行りつつあったヘッドライトに逆行するキュートな丸目。
■ 「モトコンポ」なる折り畳み式の原付バイクをトランクに積める遊び心。
■ イギリスの当時の最新スカ・バンド「マッドネス」を使った異色の CM。彼らはクルマと何の関係もない “ムカデダンス” を踊るだけ――。

―― そう、そのクルマはキャッチコピー「シティは、ニュースにあふれてる!」の通り、登場自体が一つの事件だった。

おっと、少々前置きが長くなったが、今日―― 11月11日は、今から40年前の1981年に、ホンダ・シティが発売された日にあたる。

ホンダ・シティが切り拓いた、新しいクルマ文化


その新車は、発表会からニュースにあふれていた。時に、1981年10月29日―― 前年に開業したばかりの新宿のホテル・センチュリーハイアット(現・ハイアットリージェンシー東京)のセンチュリールームにて行われたセレモニーは、異例尽くしの演出だった。普通、自動車会社の新車発表会というと、開会の辞に始まり、社長の挨拶や担当役員の挨拶、パンフレットの配布、各部門の責任者による説明等々、退屈な式次第が長々と続くものだが、そのクルマは違った。

開始早々、いきなり会場が暗転になったのだ。数秒後、1本のレーザー光線が室内を走る。やがて、それは数本となり、激しく交差を始めた。突然、フルボリュームのビートの効いたサウンドが響き渡る。続いて、正面スクリーンに映像が浮かび上がる。サーフィン、ハンググライダー、サンドバギー、ローラースケート、アメフト、サッカー、ジョギング等々、アウトドア・スポーツの風景である。そして、スクリーンがスルスルと上がると―― シティとモトコンポがその雄姿を現した。

その新車発表会は、人々の感性に訴えかけるものだった。効果は絶大で、集まった報道陣や自動車ジャーナリストたちは一様に高揚感を覚えたという。間違いなく彼らは、単なる新車というくくりではなく、新しいクルマ文化の始まりを予感した。実際、シティの開発メンバーの平均年齢は27歳と、異例の若さだった。

メンバーらが会社の上層部から、「80年代の省資源車の決定版を」と、新車開発の指令を受けたのは、発表会からさかのぼること3年半前の1978年4月である。当時、シビックの2代目が開発中で、初代と比べてサイズアップするのは既定路線であり、上層部は初代シビックのようなサイズ感を求めていた。その方針は、平均年齢27歳の開発チームに伝えられるが、これにチームの面々は反発する。

「俺たちが作りたいのは、ミニ・シビックなんかじゃない!」

―― この瞬間、チームの総意として、従来の概念に当てはまらない、新しいカテゴリーのライト・ビークルを目指す開発コンセプトが固まったと言われる。

実際、シティのデザインは今見ても、少しも古臭くない。さもありなん、全長は短くコンパクトに、一方キャビンの背は高く、そしてフロントノーズは短く傾斜をつけ、テールエンドをスパッと切り立たせるシルエットは、時を超えて今の軽自動車に受け継がれている。

「黄金の6年間」と重なるホンダ・シティの軌跡


また、シティはCM音楽においても爪痕を残した。前述のマッドネスを起用した結果、話題性でも大当たりしたのだ。そして以後、ホンダ車とCM音楽は切っても切れない関係になる。2代目プレリュードの「ボレロ」、3代目シビック(ワンダーシビック)の「この素晴らしき世界(What a Wonderful World)」、クイント・インテグラの「風の回廊(コリドー)」、トゥデイの「はぐれそうな天使」等々、それら一連の楽曲はイメージ戦略としても成功し、ホンダに黄金の80年代をもたらす。

シティは発売から2年間で、実に15万台を売上げた。また、2年目にはターボ、3年目にはターボⅡ(ブルドッグ)、4年目にはピニンファリーナがデザインを手掛けたカブリオレをラインナップに加えるなど、常にニュースを提供し続けた。思えば僕自身、過去にシティ・カブリオレを購入して、2年間ほど愛用した思い出がある。取り回しがラクで、オープンにすると気持ちよく、夏場にエアコンが効かない以外は、最高の1台だった。

1986年10月31日、発売から丸5年を経て、シティは2代目にフルモデルチェンジされる。新モデルは一転してロー&ワイドのデザインを採用し、事実上、トールボーイのシティは一代限りで終わりを告げた。

初代シティの開発が始まった1978年から、ターボⅡ(ブルドッグ)が大ヒットする83年まで、シティが歩んだ軌跡は、ほぼ「黄金の6年間」と重なる。東京が最も面白く、猥雑で、エキサイティングだった時代を象徴する1台として、「ホンダ・シティ」の名は永遠に語り継がれるだろう。

ニュースにあふれていたってね。

※ 指南役の連載「黄金の6年間」
1978年から1983年までの「東京が最も面白く、猥雑で、エキサイティングだった時代」に光を当て、個々の事例を掘り下げつつ、その理由を紐解いていく大好評シリーズ。

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etc…


※2019年11月11日に掲載された記事をアップデート

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2021.11.11
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カタリベ
1967年生まれ
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