79年、「ブルー・ラグーン」のヒットでフュージョンというジャンルを日本に拡散する役割を担った高中正義。いわゆるインストゥルメンタルだが、「ブルー・ラグーン」で演奏される彼のギタープレイは、まるで映像やストーリーを描いていくようだった。
強い太陽の光を照り返す南国の青い海や、風に流れる白い雲や、陽焼けの火照りのような感覚や、冷えたコロナをゴクッと飲み込んで胃袋からシュワシュワと体を巡っていく快感まで、彼のフレーズから躍り出てきた。マジでシュワシュワが体を巡っているようなちょっとハイな気分になれた。
クラウディアとかマヌエラとか、そういう名前の美しいブロンドの女性が一緒にいたらもっとハイな気分になれるのになあ、なんて、そんな想像までできた。青い海は透明で、虹色の魚がスッと泳いでいくのを見つけたクラウディアがはしゃいで踊り出したりして... ヤバイ、これ聴いてるとアホになるね、なんてことを友だちと話してたのを覚えてる。
さて、その当時、ぼくは友だちとアコースティックギター・デュオでプロのミュージシャンを目指そうと、ジャンガジャンガとギターをかき鳴らし、曲を作り、懸命に詞を練りあげていたのだが、自分が書いたつまんない詞より高中のギターフレーズのほうがよほど雄弁で、「ブルー・ラグーン」でひとしきりハイになったあとは、けっこう落ちたりもしていたのだ。
70年代の終わりから80年代にかけて、もうアコギで歌い上げるような音楽は「暗い」と一言で片付けられるような時代になっていた。そりゃそうだな。もう歌なんかいらない! そんな気もした(笑)。
2016.05.21
YouTube / ai71382
Information