さらに高中正義は続くアルバム『虹伝説 THE RAINBOW GOBLINS』でインストゥルメンタルサウンドの新たな可能性にチャレンジする。 『虹伝説 THE RAINBOW GOBLINS』はイタリアの画家ウル・デ・リコの絵本の世界を音楽で表現した作品で、アナログ盤2枚組の大作。アルバムと連動する形で絵本(日本語版)も発売され、どちらもベストセラーを記録する。さらに、アルバムの発売日である3月10日とその翌日の2日間に渡り、リリースコンサート『Rainbow Goblins Story Concert』を日本武道館で行い大評判となった。
絵本の『虹伝説 THE RAINBOW GOBLINS』はかなり凝ったアート色の強い作品で、そのまま出版しても大きな話題にはなりにくそうな印象だった。そして高中正義のアルバムも、それまでのリゾート感覚のポップなフュージョンとは違うファンタジックなプログレッシブ・サウンドで、世界観が構築されたコンセプチュアルな作品だった。
しかし、レコードと絵本、さらにはライブを連動させることで『虹伝説 THE RAINBOW GOBLINS』という作品に対するリスナーの関心がより強いものになり、その後盛んに行われるようになるクロスメディアの先駆けとなった。そして高中正義も『虹伝説 THE RAINBOW GOBLINS』によって、ポップなフュージョンギタリストというイメージを払拭し、独自の音楽性をギターで表現するアーティストとしてのポジションを確立していく。
高中正義のターニングポイントとなった『虹伝説 THE RAINBOW GOBLINS』は高中正義の代表作として、今も高く評価されている。 1997年には続編として『虹伝説Ⅱ THE WHITE GOBLIN』が発表され、2021年には『虹伝説』の『Ⅰ』『Ⅱ』とライブ音源や映像を収めたボックスセット『虹伝説BOX -40th Anniversary Deluxe Edition-』も発売されている。