4月5日

デイヴィッド・フォスターとジェイ・グレイドン、エアプレイが残した唯一のアルバム

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エアプレイのファーストアルバム『ロマンティック(Airplay)』の日本盤がリリースされた日
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Airplay / Airplay


竹内まりやからのエアプレイ、デイヴィッド・フォスターとジェイ・グレイドン


前回『シンガーソング専業主婦、竹内まりやの本当の魅力は?』で竹内まりや『Miss M』が半分ロサンゼルス録音で、そのサウンドプロデュースをデイヴィッド・フォスター(David Foster)とジェイ・グレイドン(Jay Graydon)が務めた、ということからのつながりで、今回は、その二人のユニット“Airplay(エアプレイ)”が、1980年に1枚だけリリースした『Airplay(ロマンティック)』というアルバムについて、お話しします。

まず気になるのが、この違和感あふれる「ロマンティック」という邦題。以前取り上げた大貫妙子さんのアルバムと同じなんですが、あちらは「romantique」と“フランス感”を狙ってのこと。フェミニンな感じも合ってます。こちらは… 何が言いたいんでしょ?これを考えた(考えてない?…)人にその理由を訊いてみたい。時間がなかったから?忙しかったから?… でも帯のキャッチコピーが「溢れるロマンティック感覚!!」って胸張ってダブルビックリマークだから、自信あったのかな。

「ロマンティック」の発売日はいつ?


またこのアルバム、1980年発売は確からしいんですが、何月何日なのか分からないんですよ。まあ聴いて楽しむ分には分からなくても全然構わないんだけど、こうして紹介するときは、せめて月は知りたい。1月と12月じゃほぼ1年違うんですから。

なのでとりあえず、レコード会社に問い合わせました。発売時はRCAだったから日本ではビクターだったはずですが、今やソニー・ミュージックに吸収されているので、SMEコーポレートサイトから質問を送信。2日後に返信が来ました。

「担当部門に確認を行いましたが、詳しい発売の日程が資料で確認できなかったため、申し訳ございませんが、月日をお伝えすることができかねます」

… うう。

それなら、と『ミュージック・マガジン』のバックナンバーを入手。すると1980年4月号の「アルバム・ピックアップ」のページと、5月号の「アルバム・レビュー」に載っていました。ただし、これらの記事は発売日の記載がありません。ただ、同じ4月号に掲載されている他のアルバムが、コステロの『Get Happy!!』とか“Journey”の『Departure』とかリンダ・ロンシュタットの『Mad Love』とか、2月発売が多い。なので、おそらく『Airplay』も2月か。1月の可能性もありますが、3月だと4月号には間に合わないよね、たぶん…。

モノはついでだ… 今度は、1981年の『オリコン年鑑』を求めて、国会図書館へ行きました(コロナ禍で抽選で一日1,000名しか入れないので、時間かかった…)。そしたらちゃんとありました!でも予想に反して、4月5日発売でした。なぜミュージック・マガジンの4月号に?そうか、これは日本盤の発売日で、あちらではもっと早かったということは充分ありえますね。もしくはサンプル盤が早めに用意できたか。ともかく、ひとつの明確な日付として、1980年4月5日を発売日としておきましょう。… やれやれ。

辛辣だった発売当時のレコード評


さて、私自身はこのアルバム、発売当時はノーチェック。78年の“TOTO”のデビューアルバムは好きだったけど、「AOR」というジャンルが、なんだか商売臭いというイメージがあって(たぶん『ミュージック・マガジン』などの音楽評論誌の影響…)、遠巻きにしていたところがあります。

「アルバム・ピックアップ」でレコード評を書いているのは鈴木慶一さん。それによると、このアルバムは「かねてからウワサされて」いて、「ついに登場した」。だから「最大級の期待度を持って接した」そうなんですが、面白くなかったそうです。「なんとも並の出来」「期待を見事に裏切られた」「技巧になり切らない技術が走り去ってゆくのを聞く事は、ボクにはガマン出来ない」「二回と聴かないであろう」… と、もう最大限のマイナス評価です。もう長いことヨイショばかりのレコ評しか見ないので、この罵倒に近い筆勢にはちょっとうれしいような気分にもなりますが、でもそんなにひどくはないでしょうという思いも。

慶一さんの評価は共感を得られたのか、それとも異端だったのか。ともかくこのアルバム、当時は大きな話題にはなってないと思います。思いますが、オリコン年鑑を見ると、最高週間75位、年間340位、売上枚数8,710枚。どうなんでしょう? 今なら充分、悪くないって感じですけどね。この時代ではやっぱりダメかな。ちなみに米国ではサッパリ売れず、アルバムを担いでのライブすら行われていません。

いつのまにか「AORのバイブル」化


ところがその後、日本ではどんどん人気が高まり評価も上がりまして、今では「AORのバイブル」とか「AORの教科書」なんて呼ばれています。中には「アメリカロックシーンにおいて外すことのできない名盤」とまで言ってる人もいますが、それはいくらなんでも。

「AOR」とは「Adult Oriented Rock=大人向けのロック」ですが、「アレンジャーとミュージシャンのスキル重視のロック」だと、私は解釈しております。裏を返せば、「曲の良し悪しは二の次」とも言えます。もちろん曲がいい(キャッチーである)ほうが一般的には好かれますので、TOTOやボズ・スキャッグスなどはたくさん売り上げ、曲が大したことないものはそれなりなんですが、AORファンにとってはそんなの関係ねぇ。彼らの専らの関心事は、プロデューサーが誰で、どんなミュージシャンが参加して、どんなプレイをしているか。

ですから、それぞれが引っ張りだこのプロデューサー兼ミュージシャンだったフォスターとグレイドンがタッグを組み、親交の深いTOTOをはじめとする西海岸の腕利きミュージシャンたちを駆使したこの『Airplay』なんて、AORファンにとってはまさに下にも置かぬほどのバイブルなんでしょう。

ミュージシャンクレジットにこだわる日本のAORファン


で、どうもこのAORファンは日本にとても多いようですね。なぜなら彼らにとってとても重要なミュージシャンクレジットを、あちら(米国)はそれほど気にしてない。このアルバムも全体としての参加ミュージシャンは分かるのですが、曲ごとのクレジットがありません。

それで議論を呼んでいるのが、ドラマー。有名なTOTOのドラマー、ジェフ・ポーカロ(Jeff Porcaro)と、やはり売れっ子セッションドラマー、マイク・ベアード(Mike Baird)が参加しているのですが、この二人、プレイスタイルがすごく似ていて、どちらが叩いているのかよく分からない。私はジェフ・ポーカロのファンだけれども、私ごときにはとても判別できません。

2005年、本アルバム発売25周年を記念したリマスタリング盤リリースの際に、AORに超詳しい中田利樹さんがフォスターとグレイドンにインタビューを行ったのですが、その際もこの質問をしたところ、1曲目の「Stranded」では、グレイドンが「これはジェフ」と言うと、フォスターが「え?ベアードだろ」と真逆の回答。それでは、とマイク・ベアードご本人にメールで尋ねると「間違いなく僕だよ」と。さらに2曲目「Cryin’ All Night」ではふたりとも「ジェフだ」と声を揃えたが、ベアードは「いや、これも僕だ」… ですと。

また、日本には株式会社「ポーカロ・ライン」なるものがありまして、ここはなんと、ジェフ・ポーカロを盛り上げるのが業務!らしいのですが、そこが協力して出版された「ジェフ・ポーカロの(ほぼ)全仕事」という本があります。ジェフ・ポーカロが参加した505枚のアルバムを彼中心に解説するというとんでもない本ですが、ここでも、先ほどの中田さんの調査を踏まえつつ、A1、A2は「ジェフと伝えられていた(誰が伝えたんだろ?)が、ジェフらしさが足りない」とし、「ベアードの証言を信じたい」と書かれています。

こんなことに大騒ぎする日本人にはフォスターとグレイドンもビックリだろうし、日本でも興味ない人は一笑に付してしまうでしょうが、これもまた音楽の楽しみ方のひとつには違いないと思いますし、私はきらいじゃないです。ただ、中田さんにしてもそこへの熱情はすごいのに、リリース時期は「1980年のいつか」でも気にならない様子なのは、私には不思議です…。



2021.02.25
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  Apple Music
 

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カタリベ
1954年生まれ
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