「なんだよ。金八かよッ!」
そうツッ込むと私はテレビのスイッチを切ってしまった。だが、なぜかドラマの主題歌だけは不思議と心に残っている。観ていたのは『3年B組金八先生』ではない…。
それは80年代最初の実写ウルトラマン、その名はウルトラマン80(エイティ)。
1975年、視聴率低下に歯止めがきかず、子供たちが愛した2大ヒーローがほぼ同時にテレビから姿を消した。そして1979年、新しい仮面ライダーは男臭い主人公からイケメン俳優(村上弘明)にシフトチェンジ、空まで飛ぶオマケ付きで復活を遂げる。そういう流れを追ってウルトラマンもその翌年、お茶の間に帰ってきた。
実写としては5年ぶりの登場。私は中学生となり、ちょっと色気づいて背伸びをしていたが、子供のころから慣れ親しんできたウルトラマンの復活は正直うれしかった。期待に胸を膨らませテレビのチャンネルを合わせると、そこにはなぜか中学校の先生がいた。
なんと、ウルトラマンに変身する主人公は不登校になった生徒や失恋した少年に心を砕く熱血教師に姿を変えていたのである。そこに映っていたのは今まで僕たちが知っていた「怪獣退治の専門家」ではなかった。
それにしても、この主題歌… そのサウンドはまるでゴダイゴ。かの特撮好きの伊集院光サンも「タケカワユキヒデ失敗っていう感じ」とラジオで熱く語ったほど、非常によく似ていた。
タリスマン(TALIZMAN)、彼らはウルトラマンの主題歌に初めて採用されたロックバンド。
調べてみると… なるほど、作詞は「ガンダーラ」「ホーリー&ブライト」で奈良橋陽子と共同作詞をしていた山上路夫。作曲はヴォーカルの木村昇だが、この曲以外にタリスマンが発表した楽曲を調べてみると、ゴダイゴとの近しい関係が見て取れる。トヨタカローラのCMソング「ユア・ナンバー・ワン」(作詞:奈良橋陽子、山川啓介 作曲:タケカワユキヒデ 編曲:木村昇)も彼らの代表作だ。
さらにネット検索を進めていく。彼らがロックミュージカル『ヘアー』の主題歌「アクエリアス(Aquarius)」の日本語版をリリースした際にも、その訳詞にタケカワユキヒデと奈良橋陽子の名がある。詳しいことはわからないが、どうやら、このミュージカルを奈良橋サンが演出していたらしい。
「ガンダーラ」「ビューティフル・ネーム(国際児童年協賛歌)」「銀河鉄道999」を大ヒットさせ人気絶頂だったゴダイゴ。想像するにその時期にCM、映画、テレビ番組のプロデューサーを生業としていれば、「ゴダイゴみたいなテーマソングが欲しいよね!」などと誰もが一度くらいは言ったことだろう。しかしゴダイゴは多忙を極める。
例えば、1983年に劇場公開された『カンニングモンキー天中拳』。当時人気上昇中だったジャッキー・チェンのカンフー映画だが、その日本限定主題歌の作曲はタケカワユキヒデ。しかし、こちらも作曲だけで本人は歌わず、声質が似た沖縄出身のシンガーshyがヴォーカルを担当している。「モンキー・マジック」を彷彿とさせるメロディ、知らずに聴いていればゴダイゴと思った人もいたに違いない。
同様に、現実がどうあれゴダイゴが大ヒットを飛ばした直後の1980年ならば、尚更そうした求めはあっただろう。それにタリスマンが応じることになったということはあり得る話だ。
―― とはいえ、好きになれず観るのを途中で投げ出してしまった『ウルトラマン80』。その主題歌が耳に残り、人生の半ばを過ぎたオジサンの記憶の底に焼き付いているということが実はかなりすごいことなんじゃないだろうか? タリスマンの木村昇然り、shy然り、タケカワユキヒデに肉薄する非凡な才能を持ったヴォーカリストたち。
機会があれば、彼らの歌う主題歌をカラオケで歌ってみるといい。「銀河鉄道999」と並んで、なかなか歌い甲斐のある、実力を試される一曲なのだ。
2017.10.27
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