4月5日

トランプ歌謡の最高峰 ♤♢♧♡ 石野真子「ハートで勝負」

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1980年代の訪れと共に解き放たれた歌謡曲に、80年1月1日発売の沢田研二「TOKIO」があったことはわりと知られているだろう。新時代の幕開けに相応しいアバンギャルドな一曲だった。

そして同じ日に出されたレコードには、石野真子の「春ラ! ラ! ラ!」もある。スマッシュヒットを連ねてアイドルとして抜群の人気を得ていたものの、そこまでの大きなヒット曲には出会っていなかった彼女にとっての最大ヒットとなり、『ザ・ベストテン』にも初のランクインを果たすこととなった。同曲のヒットは、アイドル・石野真子が名実ともにトップアイドルの座を掴んだ証しであり、続くシングルにも注目が集まったのは言うまでもない。

78年3月に「狼なんか怖くない」でデビューしてから8枚目のシングルにあたる「ハートで勝負」は「春ラ! ラ! ラ!」の発売から3ヶ月後となる80年4月5日にリリースされた。2月21日には岩崎良美が「赤と黒」でデビューし、4月1日には松田聖子が「裸足の季節」でデビューと、80年代アイドルも続々と登場してきた中でのニューシングルは正に “勝負作” であった筈だ。

作詞には、「春ラ! ラ! ラ!」の前のシングル「ジュリーがライバル」を書いた松本礼児が再び起用された。「ジュリーがライバル」は松本の作詞家デビューとなった作品で、考えてみればその後同日に発売となる「春ラ! ラ! ラ!」と「TOKIO」の関係を予見していたことになる。

作曲はさらにひとつ前のシングル「ワンダー・ブギ」を手がけた馬飼野康二。そんなふたりによる絶妙なマッチングから生まれた「ハートで勝負」は、オリコン、ザ・ベストテン共に「春ラ! ラ! ラ!」の順位を上回る好成績を記録したのである。

作詞の松本礼児は、もともと日本航空で国際線のチーフパーサーとして勤務した後、キャニオンレコード(現・ポニーキャニオン)に設立時から参加。ディレクターを経て作詞家に至ったという変わった経歴を持つ。ディレクター時代に作詞家との打合せが詞にうまく反映されなかったもどかしさから、自らが書き手となってしまったのだという。

「ジュリーがライバル」では、それまでのシングル曲がずっと阿久悠の作詞だった均衡を破っての登板にもかかわらず、元・トランザムの幸耕平とのタッグで石野真子の歌世界を違和感なく継承し、さらに「ハートで勝負」を決定打としたのだった。その実績が買われ、翌81年、結婚のために一時引退となった際の最後の曲「バーニング・ラブ」も松本が作詞を手がけている。

さて、「ハートで勝負」は4月のリリースながら、詞は夏向けの内容である。「春ラ! ラ! ラ!」にしてもまだまだ寒い1月発売だったりと、当時はずいぶんと先取りされていたことが判る。そして水着というアウトドアなキーワードが登場するにも拘らず、トランプのポーカーが採り入れられている構造が面白い。

トランプを題材にしたアイドルソングといえばキャンディーズの「ハートのエースが出てこない」がまず思い出される。ほかにもアルバム曲では麻丘めぐみ「トランプ遊び」、小林麻美「トランプ占い」など。ジャンルを拡げると、西岡恭蔵「プカプカ」や渡辺真知子「迷い道」、古くは高峰三枝子「湖畔の宿」にもトランプが出てくるが、だいたいが独りでやるトランプ占いで、ポーカーゲームというのはなかなか斬新であった。

思えば若い頃はよくトランプ遊びに興じた。大人数で旅行へ行った時など誰かしらがトランプを持ってきて、ババ抜きや大貧民、時に七並べや神経衰弱といったゲームで盛り上がったもの。そんな時のポーカーやブラックジャックはちょっと大人の匂いがして、ゲームの中でも格上な感じがした。そんな自分におけるトランプ全盛時代(なんだそりゃ)に聴いた「ハートで勝負」は格別に気に入ってしまい、すぐにレコードを買った憶えがある。

なにしろいきなり “ワンペア” から導入され、最後は強い手の “フラッシュ” を閃光とかけて “まぶしいあなた” に見立てる抜群の言葉遣いに感心しきり。欲を言えばどこかに “ストレート” や “フルハウス” などのワードも入れて欲しかったが、それは贅沢というものだろう。作詞家・松本礼児の卓越したセンスは、その後も河合奈保子「ムーンライト・キッス」や、少年隊「You're My Life」といった作品で発揮された。2011年、68歳での逝去が惜しまれてならない。

「ハートで勝負」がヒットしていた時はまだ松田聖子というとんでもない逸材の存在には気づいておらず、これはしばらく石野真子の天下が続くものと思っていたが、時代の変わり目と共にアイドル界の勢力図も大きく変化してゆく。

石野真子はこの後も「めまい」「彼が初恋」とヒットを連ねるものの、翌81年には結婚のため一時引退することとなった。その背景には80年代アイドルたちの台頭が少なからず影響したとおぼしい。しかしながら85年の歌手復帰を経て、2003年からは歌手活動を本格再開。今なお現役で歌い続ける彼女は、昨年(2018年)デビュー40周年を迎えている。

これから展開されてゆくであろうステージで歌われる今の「ハートで勝負」をぜひ聴きに行かなければ!


※2018年4月5日に掲載された記事をアップデート

2019.01.31
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カタリベ
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