1980年代の初め頃、TOTOは既に日本でとても人気があった。「日本で」と敢えて限定したのは、82年に「ロザーナ」や「アフリカ」を収録した4thアルバム『TOTO IV~聖なる剣』がリリースされるまで、TOTOは決して世界的なバンドではなかったからだ。 実際、本国では、デビューアルバム『宇宙の騎士(TOTO)』とシングルカットされた「ホールド・ザ・ライン」が小ヒットしただけの若手バンドの1つに過ぎなかった。 だが、日本では本人達の作品のみならず、TOTO絡みであれば何でも話題になった。例えば、先日のコラムで紹介させて頂いたアルバム『ベイクド・ポテト・スーパー・ライヴ!』は日本だけでリリースされたし、Charのソロアルバム『U.S.J』はTOTOメンバー主導で制作された。きっとTOTOサウンドには、日本人の琴線に触れる何かがあったのだろう。 本日紹介するエアプレイもその典型例の一つで、本国では全くチャートインしなかったのに、日本ではそこそこ知られていた。ちなみに、エアプレイについては、田中康夫のデビュー小説『なんとなく、クリスタル』の巻末の「NOTES」が、簡潔に紹介してくれている。 >スティーヴ・キプナー、マーク・ジョーダン、マンハッタン・トランスファー等のアルバム・プロデューサーであるジェイ・グレイドンと、EW&F、ホール&オーツ、デニース・ウィリアムス、マイケル・ジャクソン等のアルバムのプロデューサーであったデヴィッド・フォスターが、リード・ヴォーカルにトミー・ファンダーバークを加え、バックにはトトも参加して作ったグループ。(原文ママ) 要するに、LAの音楽シーンで活躍していたデイヴィッド・フォスターとジェイ・グレイドンの2人が組んだ訳だが、アルバムを1枚リリースしただけで終わったので、結果的には期間限定ユニットであった。 その唯一の作品は本国ではそのまんま『Airplay』と題されてリリースされたが、日本では『ロマンティック』に改題された。一体このアルバムのどこがロマンティックなのかは、何度聴いても謎のままである。 このアルバムには2つの特徴がある。1つめは弟分であったTOTOから4人のメンバーを借りていること、2つめは他アーティストに提供した楽曲のセルフカバーが収録されていることだ。 カバーしたのは、アース・ウインド&ファイアーのアルバム『黙示録(I Am)』に収録されてシングルヒットもした「アフター・ザ・ラヴ・ハズ・ゴーン」と、マンハッタン・トランスファーの4thアルバム『エクステンションズ』に収録された「貴方には何も出来ない(Nothin' You Can Do About It)」の2曲だ。 後者については、デイヴィッド・フォスターが『JT SUPER PRODUCERS '94』で来日した際に、ジェイ・グレイドンをゲストに招いて共演したので記憶している人がいるかもしれない。 驚くのは、どちらも、楽曲を提供した側(=エアプレイ)よりも提供された側のバージョンの方が洗練されているということだ。そもそも、エアプレイのサウンドはTOTOとよく似てはいるものの、TOTOよりもずっと歌謡曲っぽくて、正直ダサい印象だ。 実は、このあたりの彼らのセンスが、後にデイヴィッド・フォスターがプロデューサーとしてビッグヒットを連発することに繋がっているんじゃないか、と僕は考えている。 なぜなら、いつの時代でも、大衆は「洗練」より「ベタ」を好むものだから。
2017.10.16
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