衝撃的名曲、大貫妙子「都会」のリメイクカバー
なんと今から49年前にリリースされた、大貫妙子の「都会」。彼女のとてつもなく透明な声と軽やかなメロディーに乗って歌われる「♪その日暮らしは止めて」という歌詞はあまりにも有名だ。 “そんな澄んだ声で「その日暮し」って言うのやめて―ッ!” と叫んだ人も多いだろう。かくいう私もその1人だ。初めてラジオでこの曲を聴いた時は、マジでその日暮しだったのでクラクラきた。
この衝撃的名曲のリメイクカバーが、2026年1月14日に配信された。名義は槇原敬之 feat. 大貫妙子。これは2025年9月からスタートした、PANAMレーベル生誕55周年記念企画『PANAM 55/100 SUPER SONG COVERS』の第5弾リリースだ。
この企画は第1弾から、かぐや姫による1973年の名曲「僕の胸でおやすみ」を藤井フミヤがカバーする(名義は藤井フミヤ with 南こうせつ)という神人選だったが、今回のマッキーもさすがとしか(泣)。どれだけ心を震わせれば気が済むのかPANAMッ。神様から授かった透明感と美声の連携、沁みないはずはない。
帰る場所がなさそうな大貫妙子バージョン
大貫妙子のオリジナル「都会」は1977年リリースのセカンドアルバム『SUNSHOWER』収録曲。大貫妙子(作詞・作曲)と坂本龍一(編曲)が放ったこの楽曲は、今聴いてもまったく古くない。シティポップブームに乗り、世界中で新しい評価を受けているのも納得だ。
タイトルは「都会」だが、描かれているのは憧れではなく、そんなものをとうに超えた先にある孤独。しかし、そこはさすが大貫妙子と坂本龍一。洗練された、非常に明るい曲調になっている。街並みの華やかさの美しい描写も、望郷感のなさも、東京と言わず「都会」とタイトルに持ってくるのも、ニクイほどハイセンス。東京に生まれ育ったお2人だからこそ出せたものだろう。
この歌がリリースされた1977年に日本で流行した、イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」にも少しリンクする。夢を求め、やっとたどり着いた「都会」は光だけではない。輝きが強いほど伸びる影は濃い。気がつけば、取り返しのつかない場所にいる――。そんな脆さを、透明感の極みのような声を持つ大貫妙子が、あえて感情を排除したように歌っていた。だから俯瞰で街を観ているイメージがすごい。大勢のざわめきのなかにいても、1人違う世界にいるような主人公。自分だけそこからさよならしたらいいのに、「♪その日暮しは止めて」と繰り返す。達観と執着の混在!
「どんなときも。」の都会とリンクする2026年版
この浮遊感と静かなる孤独ともどかしさを歌い継いだのが槇原敬之。今回配信された「都会」を聴いて、ほんのりと彼のサードシングル「どんなときも。」(1991年)に登場する都会の風景を思い出した。前向きに「♪僕が僕らしくあるために」と歌ったあの歌のベースも、やはり都会。そのなかで本当に好きなものを失わないよう、ビルの間に溶けていく夕陽を眺め、言い聞かせているような歌だった。
流されてしまう弱さも含め、自分らしくありたいと歌ったマッキーが、都会への距離感をどう歌うのか。憧れと苦しさはコインの裏表のようで、マッキーの持つ素朴さが、大貫妙子のナチュラルボーン・シティ感とクロス。2人はドライさと透明感を放ち、隣同士に並び、時に重なり、街を俯瞰して観ている。その溶け込み具合は不思議なほど心地よい。
街を見下ろしている大貫妙子さんの隣に、マッキーが1993年にリリースしたアルバム『SELF PORTRAIT』のジャケットの姿さながら、あの羽を着け、ちょこんと座っているイメージを思い浮かべてしまった。槇原は今回のカバーについてこう語っている。
大貫さんと僕が主人公に「一緒に帰ろう」とにっこり笑って手を差し伸べているような、素敵な仕上がりになったと思います。
そういえば、1977年のオリジナルでは「♪家へ帰ろう 一緒に」より「♪その日暮らしは止めて」の部分が強烈に聴こえたものだ。今回も「♪その日暮はやめて 家へ帰ろう 一緒に」の部分だけは、大貫妙子がメインで歌い、マッキーはコーラスに徹している。
ただ、今回は大貫さんの歌い方もマッキーのハミングも、やさしく言葉を置くようだ。だからなのか、「♪その日暮らしは止めて」より「♪家へ帰ろう 一緒に」のほうが印象深く聴こえてくる。ざわめきだらけの社会に疲れた私たちに、囁いているように。
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2026.04.18