2026年1月28日、アリスのベストアルバム『アルティメット・メモリアル ’72-’79』(ハイレゾマスターDLカード付)が生産限定盤として発売される。
これは、音質の優れた重量盤レコードにアリスの主要シングル曲12曲が収められたアナログアルバム。オリジナルのマスターテープから新たにマスタリングされた音源を使用しており、リリース時のニュアンスに沿ったフラットでナチュラルな音を生み出している。また、このアルバムにはハイレゾ音源がダウンロードできるシリアルコードの入ったカードが封入され、アナログでもデジタルでも高音質でアリスの神髄が味わえるという貴重なアイテムになっている。
「走っておいで恋人よ」でレコードデビューしたアリス
まずは、アリスについて簡単に紹介しておこう。大阪のフォークグループ “ロック・キャンディーズ” でレコードデビューもしていた谷村新司が、日本のミュージシャンたちによるアメリカツアー『ヤング・ジャパン国際親善旅行』(1971年)に参加。そこで出会ったR&Bグループ “ブラウン・ライス” のドラマー・矢沢透と出会い、帰国後一緒にグループを結成することを約束する。さらに、谷村新司は音楽仲間だったロックバンド “フーリッシュ・ブラザース・フット” のボーカリスト・堀内孝雄に声をかけて、アリスとして活動を開始。1972年3月に谷村新司の書いた「走っておいで恋人よ」でレコードデビューを果たす。
その初期は、メンバー3人の音楽性が違っていたこともあってか、レコードセールスでは苦戦が続いていた。そのためシングルでは自作曲だけでなく職業作家の曲を歌うなど、さまざまな試行錯誤を強いられることになる。しかし、演奏レベルの高さやステージングの楽しさが口コミで広がっていき、ライブの動員もぐんぐん増えて人気グループになっていった。
「冬の稲妻」の大ヒットによってトップグループに
1975年に7枚目のシングル「今はもうだれも」がヒットするが、これは “ウッディ・ウー” というグループの曲のカバーだった。彼らのオリジナル曲によるシングルヒットは続くの「帰らざる日々」(1976年)からになる。そして1977年にリリースした「冬の稲妻」の大ヒットでブレイク。アリスはトップグループとして活躍していく。
しかし、ヒットメーカーとしての存在が大きくなるにつれて、彼らが求められるものと彼らが表現していきたい音楽との間に齟齬が生まれていく。さらにグループ活動と並行して行っていた谷村新司や堀内孝雄のソロ活動が充実したものになっていったことが、皮肉にもグループとしてのバランスを変化させる要因ともなり、1981年に活動を停止することとなる。
その後、1987年、2000年、2005年と短期の活動を行いつつ2009年、3人が還暦を迎えるタイミングで本格的に再始動した。しかし、2023年の谷村新司の死去により3人での活動は終止符を打つことになった。
選曲や曲順もアーティストの表現やメッセージが
『アルティメット・メモリアル ’72-’79』に収められている12曲は、アリスがデビューした1972年から1979年まで所属した東芝音楽工業 / 東芝EMI(現:ユニバーサル ミュージック)で発表したシングル曲から選ばれており、1980~1981年にポリスターレコードから発売された楽曲は収められていない。しかし、大局的に見て第一次アリスのヒット曲を網羅するという意味では過不足のない選曲になっている。
収録されている12曲は、アナログ盤ではA面とB面に6曲ずつ分かれている。CDや配信の時代になってからは収録されている曲を一気に流し聴きしたり、気に入った曲だけをピックアップするという聴き方が普通になっているけれど、アナログ盤の場合はA面とB面がそれぞれ別のブロックとなっていて、それぞれの面の選曲や曲順もアーティストの表現やメッセージの一部になっていることが多かった。そして、このアルバムもそんなふうに聴くべき作品なのだろう。
冒頭を飾るのは最大のヒット曲「チャンピオン」
まずA面を見てみよう。アルバムの冒頭を飾るのはアリス唯一のチャート1位獲得曲であり、最大のヒット曲となった「チャンピオン」(1978年)。ボクサーのカシアス内藤をモデルに谷村新司が書いたこの曲からは、迫力ある演奏とボーカルの中から闘う男の美しさと哀しさが伝わってくる。
続く「遠くで汽笛を聞きながら」は作詞:谷村新司、作曲:堀内孝雄による1977年のシングル。初のヒットアルバムとなった『ALICE Ⅴ』からのリカットで、初期アリスの特徴である内省的なロマンティシズムの魅力を最大限に生かした沁みるバラードになっている。3曲目の「秋止符」は東芝EMIからの最後のシングルとして1979年に発表された曲で「遠くで汽笛を聞きながら」と同じく谷村新司と堀内孝雄による作品。曲調にも「遠くで汽笛を聞きながら」との関連を感じさせるしっとりとした曲。
4曲目は一転して、1977年に大ヒットして注目を集めた「冬の稲妻」。ロックテイストな演奏に乗せたワイルドなボーカルがインパクトを感じさせ、その後のアリスのイメージを確立した曲だ。5曲目に置かれているのは1972年のデビュー曲「走っておいで恋人よ」。ヒット曲をセレクトしたこのベストアルバムの中でもっとも売れていないシングルだが、彼らの原点としてやはり外せない曲だ。1970年代初期のフォークの雰囲気も今聴くと新鮮だったりする。
そしてA面の最後に置かれているのが、オリジナル曲として初のヒット曲となった「帰らざる日々」(作詞・作曲:谷村新司)だ。自殺する女の子をテーマにしたという暗い歌詞なのだが、わざとリズミックなサウンドに乗せることで不思議な躍動感を演出している。
唯一収録されたソロ曲「君のひとみは10000ボルト」
B面の1曲目にはメンバーのソロ曲で、堀内孝雄の1978年の大ヒット曲「君のひとみは10000ボルト」が置かれている。ここにソロ曲が入ることに違和感を覚える人もいるかもしれないが、この曲も谷村新司と堀内孝雄のヒットコンビによる作品であり、元々はアリスとして発表するはずが谷村新司の病気入院により断念せざるを得なかったという経緯があった。しかも、この曲のヒットがアリスにもプラス効果をもたらしたことを考えれば収録も頷けるのではないか。
続く「夢去りし街角」は「チャンピオン」に続くシングルとして1979年に発表されたフォークロック・テイストの曲。同じ作詞作曲コンビの「君のひとみは10000ボルト」と聞き比べてみるのも面白い。続いては、アリスにとって初のヒットとなったカバー曲「今はもうだれも」。そして、アリスのタフさの中の優しさをさらに印象付けた「涙の誓い」(1978年)。この2曲はタイプは違うが、どちらもアリスらしさを感じさせてくれる楽曲だ。
「ジョニーの子守唄」も「涙の誓い」に続く1978年のシングル曲。まさに彼らの上り坂の時代を象徴する曲のひとつだ。そして、アルバムのラストを飾るのが1977年に発表された「さらば青春の時」(作詞・作曲:谷村新司)だ。この曲も大ヒットはしていない。しかし、アリスがブレイクする前に発表されたこの曲は、メンバーの思いがストレートに伝わってくる名曲だ。
『アルティメット・メモリアル ’72-’79』はヒットシングル集でもある。だが、このアルバムはベスト盤によくある発売順に曲を並べるようなデータ主義を取っているわけではない。アナログ盤のA面とB面をそれぞれ6曲の組曲として味わってもらい、さらに全体を通してアリスの音楽性の広がりが感じ取れるように構成されている。その意味で、この作品はアリスを愛してやまない人が楽しめるベストアルバムと言えるだろう。
Information
タイトル:アルティメット・メモリアル ’72-’79 [生産限定盤] [ハイレゾマスターDLカード付]
アリス究極の12曲をアナログとハイレゾで楽しめる一挙両得盤!
▶ 発売日:2026年1月28日(水)
▶ 価 格:6,600円(税込み)
▶ 収録曲:
〈SIDE A〉
01. チャンピオン
02. 遠くで汽笛を聞きながら
03. 秋止符
04. 冬の稲妻
05. 走っておいで恋人よ
06. 帰らざる日々
〈SIDE B〉
01. 君のひとみは10000ボルト
02. 夢去りし街角
03. 今はもうだれも
04. 涙の誓い
05. ジョニーの子守唄
06. さらば青春の時
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2025.12.17