11月5日

松原みき「真夜中のドア」世界中から共感されるシティポップ・ブームの核心とは?

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松原みきのデビューシングル「真夜中のドア~Stay With Me」がリリースされた日
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メロディが9割 Vol.1
真夜中のドア~Stay With Me / 松原みき


国境を越えて共感されるメロディアスなナンバー


映画『猿の惑星』には原作となった小説がある。

作者はフランス人小説家のピエール・ブール。同様に映画化された『戦場にかける橋』の原作でも知られる御仁だが、『猿の惑星』の小説版は、都合3度シリーズ化されたどの映画版とも異なる。最大の違いは “言葉” である。

まぁ、これを言ったら元も子もないが、小説版は猿が英語を喋らない。そもそも小説版の “猿の惑星” は未来の地球じゃなく、300光年離れたベテルギウスを回る第二惑星だ。で、僕が感心したのは、惑星に不時着した地球人と、そこに暮らす知性を持った猿との意思疎通の方法である。

2つの異なる星の文明人同士がどのように会話するか?―― なんと “数学” なんですね。例えば、ピタゴラスの定理は、異星人同士の間でも不変の法則。2人は数学の様々な法則を手掛かりに、次第に意思疎通を図ったんです。数学が全宇宙共通語と呼ばれるのは、そういうこと。

このくだりを読んで、僕はふと考えた。ならば “音楽” はどうだろう。いわゆる名曲と呼ばれる音楽は、異星人に対しても名曲に聴こえるのではないだろうか――。

実際、この地球上においても、いわゆる名曲と呼ばれる音楽は古今東西、人々に感動を与えている。例えば、モーツァルトやベートーヴェンなどのクラシック音楽は21世紀の現代も聴衆を魅了し、アフリカ起源の黒人音楽=ジャズは洋の東西を問わず愛好家を惹きつけてやまない。南米起源のフォルクローレだって、サイモン&ガーファンクルによって「コンドルは飛んでいく」としてカバーされ、今や世界のスタンダードナンバーだ。

そう、優れたメロディは言葉や文化、宗教の壁を越え、人々に共有される。例え詞の意味が分からぬとも、メロディアスなナンバーは国境を越えて共感される。ある意味、メロディは言葉とも――。

ビートルズが持っているもの、持っていないもの


音楽史上、最も優れた音楽家は誰か? と問われたら、あなたは誰と答えるだろう。多分、半数くらいの人は、この名前を挙げるんじゃないだろうか――「ビートルズ」と。

何が凄いって、特にファンじゃない人でも、彼らの曲が流れたら「あぁビートルズね」と分かるところ。メロディの発明において、質量ともにビートルズを凌駕する存在は、あと1000年くらい出てこないんじゃないだろうか。

2019年に製作されたイギリス映画に『イエスタデイ』なる作品がある。売れないミュージシャンが交通事故に遭い、昏睡状態から目を覚ますと、そこは過去にビートルズが存在しない世界という話だ。誰も「イエスタデイ」も「レット・イット・ビー」も「ヘイ・ジュード」も知らず、主人公はビートルズの楽曲を自らの作品と偽り、成功しようとするコメディ作品である。2時間弱の中に30曲近いビートルズナンバーが登場するが、まぁ、その心地よいこと。

ビートルズと同時代のライバルというと、ローリング・ストーンズやボブ・ディランの名を挙げる人が多いだろう。両者とも、ビートルズが持たないものを持っている。ストーンズはサウンドとパフォーマンスに優れ、ディランは言葉と思想に長けている。ファンの思い入れの深さにおいて、その人気はビートルズに負けずとも劣らないだろう。だが―― ことセールス面に限ると、ストーンズもディランもビートルズの足元にも及ばない。両者の間に横たわるのは、“メロディ” である。

海外も注目するシティポップ、優れたメロディがあってこそ得られる共有感


批判を承知で極論を吐く。長きに渡る音楽史において、最も人々の共感(=セールス)を得られたのは、メロディである。サウンドも言葉も大切だが、それらがスポットライトを浴びるには、その前提として優れたメロディがあってこそ。

そう、メロディが9割――。
これが、リマインダーにおける僕の新しい連載のタイトルである。はっきり言って、僕は音楽についてはド素人だ。譜面も読めない。楽器もできない。というか、自分が物書きをしていることもあり、むしろ思い入れが強いのは作詞家先生の方だ。でも―― そんな僕でも、楽曲が人々に共感される(=売れる)ために最も大切なのは「メロディが9割」だと自信をもって言える。

ここ数年、日本の70年代後半から80年代前半にかけての “シティポップ” が海外から注目され、ブームの様相を見せている。思うに、これも「メロディが9割」の影響ではないだろうか。なにせ、ブームの火付け役の「プラスティック・ラブ」の竹内まりやサンを始め、そこを起点にブームの広がりを見せるシティポップの面々―― 山下達郎、大貫妙子、南佳孝、細野晴臣、矢野顕子、角松敏生らの御仁にしても、皆、類稀なるメロディメーカーなのだ。

松原みき「真夜中のドア」、なんと41年と4ヶ月ぶりにリリース


いや、何も作り手はシンガーソングライターに限らない。昨年、こちらも海外から火の着いたシティポップ―― 松原みきの「真夜中のドア~stay with me」は1979年11月のリリースで、作曲は林哲司サン。

彼はシンガーソングライターでデビューしながら、次第に職業作曲家へ軸足を移したのは、リマインダーの読者の皆さんなら承知の通り。同曲のリリース前には、竹内まりやの「SEPTEMBER」を手掛け、80年代に入ると、杏里の「悲しみがとまらない」や中森明菜の「北ウイング」を作曲するなど、彼もまた優れたメロディの作り手として知られる。

ちなみに、今日3月10日は、松原みきの「真夜中のドア~stay with me」の復刻版のレコードが、実に41年と4ヶ月ぶりにリリースされる日。あの上目遣いの切れ長の目が印象的なジャケットがまんま甦るのだ。

少々前置きが長くなったが(長すぎる!)、今回は新連載「メロディが9割」の第1回として、そんなシティポップブームの核心に迫りたいと思う。心配しなくても、ここから先の話は長くない。

シティポップの前史、ニューミュージック、フォークソングとは?


そもそも、シティポップとは何か?
それを語る前に、その前史―― 70年代半ばに生まれた “ニューミュージック” から紐解きたいと思う。そのカテゴリーに属するのは、ユーミンを始め、井上陽水、オフコース、チューリップ、中島みゆき、松山千春、ゴダイゴ―― 確か、初期のサザンもその中に含まれていた気がする。

当時、彼らの何が “ニュー” だったかというと、サウンド面だ。フォークよりも多重的で、ポップで、疾走感があった。詞もフォークのように内省的じゃない。もっとストレートで、外国小説や映画の1シーンのように情景的。恋愛描写も重くなかった。早い話が、フォークソングのフォークギターをエレキギターに持ち替え、歌詞から反戦と貧しさを取っ払ったのがニューミュージックだった。

そう、ここが大事なところ。ニューミュージックはフォークの純粋な進化形だった。では、さらにさかのぼって、70年代前半の “フォークソングブーム” とは何だったのかを考察すると、音楽評論家の多くは “思想と言葉の時代” だったと答えるだろう。だが、僕はそこに異を唱えたい。

確かにフォークはメッセージ性が強かった。でも、フォークが若者たちの心を捉えた最大の理由は、圧倒的にメロディが素晴らしかったからである。「あの素晴らしい愛をもう一度」「戦争を知らない子供たち」「翼をください」「なごり雪」「夢の中へ」「学生街の喫茶店」「神田川」「精霊流し」―― どれもめちゃくちゃ曲がいい。

70年代、フォークが隆盛を誇る一方、和製ロックがヒットしなかった最大の理由は、メロディの差である。フォークは言葉がクローズアップされながらも、実はメロディに優れ、若者たちはそこに共感した。対して、和製ロックはサウンド面に重点を置きすぎて、正直、メロディの魅力に欠けていた。

さて、そこでシティポップである。単刀直入に言えば、それはニューミュージックの進化形だった。つまり、フォーク→ニューミュージック→シティポップの系譜となる。それは何を意味するかと言えば、メロディの継承である。

ニューミュージックとディスコサウンド究極のハイブリッド、シティポップ


シティポップとニューミュージックの違いは、これもサウンド面である。早い話が、1977年12月に全米で公開された映画『サタデー・ナイト・フィーバー』を契機に、ディスコブームが到来。ビー・ジーズ、シック、ABBA、アース・ウィンド&ファイアー、ボーイズ・タウン・ギャング等々のディスコサウンドが盛り上がり、その波は日本にも押し寄せる。1978年夏、六本木にサーファーディスコブームが訪れたのだ。

ブームの陰にメロディあり。ディスコサウンドが多くの若者たちの共感を集めたのも、やはり曲がよかったからだ。ABBAの「ダンシング・クイーン」やボーイズ・タウン・ギャングの「君の瞳に恋してる」がかかると、その夜のダンスフロアの熱気は最高潮に達した。

シティポップはそうした背景から生まれた。サウンドは劇的な進化を遂げ、詞も英語のフレーズが増えるなど、より洗練された。だが―― それよりも何よりも、最も大事なのはメロディである。それはニューミュージックとディスコサウンドが融合した、究極のハイブリッドとなった。

あれから40年―― 今、シティポップに、言葉の壁を越えて世界中から共感の声が集まる。さもありなん。優れたメロディはそれだけで言葉の代わりになる。

なんたって、メロディが9割ですから。



2021.03.10
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