10月

人生100年時代到来? PANTA のライブに押し寄せる高齢化の波

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PANTA & HALのライヴアルバム「TKO NIGHT LIGHT」がリリースされた時期
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photo:brain-police.com  

歳をとったせいなのか、最近、ライブに足を運ぶことが少なくなってきたように感じる。椅子があればまだしも、スタンディングのライブハウスには尚更足が遠のく。昔はステージ前で汗だくもみくちゃになってもあんなに楽しかったのに人間とは不思議な生き物だ。

もみくちゃライブには行かなくなっても、PANTA のライブには時々足を運んでいる。弾き語りのライブが多いせいなのか、観客の高齢化によるものなのか、椅子が用意してあることが多いからだ。椅子に座って客席を見渡してみても平均年齢は高い。50オーバーの僕ですらここでは若輩者かも。

椅子があるので当然 PANTA が登場してもわーっと前に押し寄せることもなく暖かい拍手で迎える。落ち着いたいい感じだ。変わらないのは PANTA を呼ぶ声ぐらいか。その声に少しハリがなくなっているのは歳のせいかもしれない。

2枚の名盤『マラッカ』と『1980X』をリリースした PANTA & HAL が次に(そして最後に)放ったのが2枚組のライブアルバム『TKO NIGHT LIGHT』だった。全16曲のうち、未発表曲が6曲、アルバム未収録曲が1曲、さらに HAL 以前のソロ時期の楽曲に新しいアレンジを施した2曲が収録されていて、聴き応え満点のライブアルバムなのだ。バンド自身ノリにノッている時期で、臨場感あふれる迫力ある演奏が聴ける。

このアルバムの一番の聴きどころが「裸にされた街」だ。アルバム『マラッカ』に収録されたスタジオバージョンももちろん素晴らしいのだが、このライブバージョンが輪をかけて素晴らしいのは、ライブ収録に立ち会った観客の力によるところが大きい。

「裸にされた街」のイントロが流れると歓声が上がり、「パンタ!」と呼ぶ声が客席のあちこちから飛び始める(その多くが男性の声というのも笑えるところではあるが)。大きい声や小さい声が続いたところで、「♪ なにごともなかったみたいだ」と PANTA の歌が始まると、そこに被せるように一際威勢のいい掛け声がかかる。

「パンタ〜!」

このタイミングが絶妙でなんとも気持ちがいい。ナニコレ? 事前に一緒に練習でもしてるの? と思うほど。

歌舞伎の掛け声もこんな感じなのだろうか。

「成田屋!」
「音羽屋!」
「パンタ!」

もしかしたら PANTA & HAL のライブは伝統芸能の域にまで達していたのかもしれない。

僕もこれを真似して、実際に PANTA のライブで掛け声をかけたことは何度となくあるのだが、同じ思いを持った誰かの掛け声とかぶったりしてうまくいった試しがない。そもそも演奏の邪魔をしそうで、あんなハリのある声を出す勇気がない。

PANTA のライブに行くと、もしかしたらこの中にあの掛け声の人がいるんじゃないか、またあの絶妙なタイミングの掛け声を聞けるんじゃないかと思うと落ち着かなくなってくる。でも会場を見回してみてもあの人を見つけることはもう無理だと思ってしまうのだ。あんなにハリのある声を出せそうな若々しい人が見当たらないからだ。

高齢化が加速する PANTA のライブにはこれからも足を運び、こっそりとあの人を探しながら PANTA の歌を楽しもうと思う、と高齢化を他人事のように思っていたら、娘から「お父さん、おじいちゃんみたいな匂いがするよ」と言われ、僕もあの会場では違和感がない年齢になったのかと思うと、嬉しいような悲しいような気分になるのだった。

2018.09.15
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カタリベ
1963年生まれ
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