3月25日

なにもかもが風変わりなバンド “突然段ボール” の強烈な真髄!

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突然段ボールのデビューシングル「ホワイト・マン / 変なパーマネント」がリリースされた日
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すべてが風変わりなバンド、蔦木兄弟による “突然段ボール”


打首獄門同好会、ゲスの極み乙女。、Official髭男dism、ヤバイTシャツ屋さん、レキシなどなど、変わったバンド名を耳にすると、気になってそのバンドの音源を聴いてみたくなる。どんなサウンドなんだろう? 歌詞は? 見た目は? と興味が深まる。聴いてみると、面白い歌だったり、そうでもなかったり様々だ。でもバンド名を耳にした最初の時のような、「もっと知りたい」という感覚を超えないのが正直なところ。それは、突然段ボールという、バンド名どころか歌詞もサウンドも容姿もそれ以外もすべてが風変わりなバンドのせいなのかもしれない。

突然段ボールは、蔦木栄一(兄)・俊二(弟)の兄弟が中心のバンドで、1980年3月にパス・レコードからリリースされたシングル「ホワイト・マン / 変なパーマネント」と同年11月にリリースされた7インチEP「pass live」はそれまでに僕が聴いてきたロックとはまったく異なるもののように感じた。よく分からないけど、すごく気になる。

パス・レコードは、他にもフリクションやPhew、グンジョーガクレヨンなど独特なバンドの音源をリリースしていたが、それに輪をかけて独特だったのが突然段ボールだった。そして1981年にリリースされたアルバム『成り立つかな?』に至っては、この人たちはどこまで行ってしまうのかと思うほど遥か先に進んでしまったように感じた。

その後、『三宅裕司のいかすバンド天国』に出演した時も唖然とするほど強烈な演奏だった。今回コラムを書くにあたって YouTube でこの時の映像を探してみるとすぐに見つかった。今見ても演奏の新鮮さはさることながら、スタジオでの蔦木(兄)の風貌を見て僕は笑ってしまった。スーツ姿でおかしな楽器を抱えている。どこかの国の音楽家か!意味ありげな佇まいがバンドの音楽とはまったく無関係で、それを一人で楽しんでいるかのよう。そんな蔦木(兄)を見て、そういえばあの時もそうだったな… と思い出したことがある。

一夜限りのぶっつけ本番ライブ。湯浅学、根本敬らも参加!


以前、僕は一度だけ蔦木兄弟のバンドのメンバーとしてライブをやったことがあった。突然段ボールではなく、別ユニットのノイズバンドだったのだが、そのバンドのメンバーから一緒に演ってみないかと声がかかり、またとない機会だったので入れてもらうことにした。事前の顔合わせも練習もなし、ぶっつけ本番という得体の知れない不安を抱えながらの参加だった。

ライブ当日、蔦木兄弟に挨拶をすると「今日の君の楽器はこれね。使い方はお任せします」と渡されたのがヤカンとビー玉と爆竹とライターだった。これは楽器ではないぞと思いながら話を聞いていると、蔦木(兄)は楽しそうに「マイクも置いておくので歌ってもいいよ」と言う。そして、もっと楽しそうな顔でバンドエイドを二箱渡された。「これは顔中に全部貼ってね」と。全部だからね、と念押しされたのが印象的だった。こうなったらもはや意味や理由を考えるものではないなと思い、その楽しそうな顔に乗っかることにした。

その日のバンドメンバーは、蔦木(弟)のギターを中心に、湯浅学(音楽評論家)がギター、根本敬(漫画家)がドラムなどサブカル界の怪しい人たちがいた。この日、蔦木(兄)は出演せず、総監督として各パートに楽しそうに指示を出していた。ライブ直前に「根本さん、ドラム叩けるんですね」と話しかけると、「今日初めてあの椅子に座った。これ(スティック)も握ったの初めて」とこれまた楽しそうに言う。なるほど、今日はこういう人たちの集まりなのかと思った途端、ぶっつけ本番という不安は微塵もなくなっていた。

ライブ終了後、蔦木(兄)に「顔にバンドエイドをあれだけ貼ると面白いな」と音楽とはまったく関係ない感想を言われ、なんだか少しだけ自分を誇らしく思ったりした。以来、怪我をしてバンドエイドを貼っていると、蔦木(兄)のあの楽しそうな顔を思い出し、必要以上に貼りたくなるのは、突然段ボールの真髄にほんの僅かでも触れられたものの特権だと思っている。



2020.08.07
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カタリベ
1963年生まれ
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