10月1日

18歳の松田聖子「Eighteen」ヒット曲で歌われるのはいつも17だったけど…

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松田聖子のサードシングル「風は秋色 / Eighteen」がリリースされた日
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photo:SonyMusic  

ヒット曲で歌われるのは、いつも17だった


1980年10月1日、松田聖子の「風は秋色 / Eighteen」が両A面シングルでリリースされた―― 今回は、両A面ではあるものの、事実上はB面の位置にあった2曲目「Eighteen」について語りたいと思う。

「風は秋色」という穏やかなタイトルでありながらも「♪ La La La…… Oh, ミルキィ・スマイル」と始まる華やかなA面とは異なり、ゆるやかで優しい雰囲気につつまれた「Eighteen」に、私は18の夢を見た。

ヒット曲で歌われるのは、いつも17だった。高らかなリズムと共に森高千里が歌い上げた「17才」。桜田淳子は「十七の夏」で裸の胸にイニシャルを落書きしてたし、ABBA は “ダンシング・クイーンは17才だ” と歌っていた。

中森明菜は “いわゆる普通の17才だわ” と歌っていたけれど…


都内の中高一貫校で校則に縛られて生活していて、おまけにおしゃれの仕方もろくに知らないウブな私は、自分が17才を迎えた日、ついにあの「17才」になってしまったという絶望感があった。幼い頃から思い描いていた17才とは、自分があまりにもかけ離れていて、寂しかった。

彼氏もいなければ、華やかな女子高生でもない。周りの子達が少し先に進んでいく話を耳にして、眩しいなと思いつつ、定期テストの勉強をするくらいしかやることがなかった。私より勉強もできておしゃれで華やかだった子たちもいたけれど、そんな子達に置いて行かれないように、ついていくのに必死だった。

中森明菜は「♪ いわゆる普通の 17才だわ 女の子のこと 知らなすぎるのあなた…」と歌っていたけど、私は17才の女の子だったのに女の子のこと知らなすぎて不甲斐なかった。「♪ 似たようなこと 誰でもしているのよ」と言われても、よだれを垂らして午後の授業を聞く以外やることがない。まったく、じれったいのはこっちのほうだ。挙句「♪ 特別じゃない どこにもいるわ」なんて言われてしまった日には、自分が子供すぎて悲しくなる。

どこか奥ゆかしく、恥じらいを含んだ「Eighteen」


17才の春、高校3年生の春からは受験勉強が始まる。青春の1ページを、それにかけてもいいほどの価値は見出していたけれど、もうすこし華やかな思い出が欲しかったなと思う。念願叶って早稲田に入った頃にはもう18を迎えていて、なんだかなぁ… という気分になる。大学の自由闊達な文化の中で、高校時代はそっと隠していた愛する80年代の音楽に再び触れてみようと思った時、松田聖子の「Eighteen」に出会った。

もちろん、小さな頃から車の中で耳にしていたのでよく知っている曲だったし、イントロを聴けば途端に懐かしさが蘇る。ただ違うのは、あの頃はもっともっと先だと思っていた18になったことだ。

 夢の中に出てきた
 あなたはとても素敵
 いつも君だけ恋して暮らしているさと
 私は頬を染めて
 もじもじしていたけど
 心は答えていたの とても好きよ好きよ
 愛してるの心から
 恋するハート私は Eighteen

“17才” を歌った曲たちに溢れる、好奇心や若さゆえの溌剌さ、向かうところ敵なし! という雰囲気に比べて、「Eighteen」にはどこか奥ゆかしく恥じらいを含んだ少女的な甘い空気感がつまっている――

ひょいっとハードルを飛び越えて大人になっていった女の子と違って、そこに行くまでのためらいやもどかしさが描かれている「Eighteen」の歌詞が、自分を受け入れてくれているようで、嬉しかった。それを包み込むファンタジックなサウンドに魅せられた私は、18才の間狂ったようにリピートをしてひたすらに聴き続けた。

ありがとう聖子ちゃん、空想しがちで夢見がちな18の私にピッタリ!


 みんなあなたのことを
 噂しているみたい
 だから私は遠くでいつも見ているの

という歌詞も、天下のアイドル松田聖子が歌っている時点で、そんな彼に見初められるのはお察しなのだが、噂されているような彼を遠くからしか見ることができなかったウブな私にとってはなんだか、身近な気がした。

おまけに「いつも君だけ恋して暮らしているさ」なんて言ってくれる彼が登場するのは夢の中。空想しがちで夢見がちな18の私にはピッタリだった。まぁ、今でも「Eighteen」を聴くときは、白いワンピースを着て波打ち際で遊んでいるような景色を妄想してしまうし、大して変わっていないような気もするけど…

この曲を聴くと、映画『サウンド・オブ・ミュージック』の「もうすぐ17才(Sixteen Going On Seventeen)」のシーンを思い出す。雨の中、庭のガラス張りの東屋で、ドレスを着たリーズルが恋人のロルフと舞い踊り愛を確かめ合う場面で歌われるのだけど、この優雅でロマンチックな雰囲気を松田聖子の「Einghteen」につい重ね合わせてしまう。

現実離れしているけれど、少女から大人になる瞬間のゆらぎをファンタジックに描き出した「Eighteen」―― 17の弾ける若さで全てを飛び越えていくような女の子にはなれなかったけど、18で大人へのステップを夢に見ながらまどろんでいる聖子ちゃんのこの曲があったからこそ、私の18才はちょっとだけ明るくなったように思う。

ありがとう、聖子ちゃん。


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※2018年10月1日に掲載された記事をアップデート

2020.10.01
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