我が家ではウサギを飼っている。と言っても、ウサギの世話はすべて娘がやっていて、僕は時々餌をあげて遊んでいるだけでなんの世話もしていない。吠えたり鳴いたりしないからうるさくなくていいな程度の感覚だ。
そのウサギも今年で8歳。人間でいうと70歳を超えているらしい。今や僕よりも先輩ということになる。元気なようでいて、最近は少しずつ衰えが出始めているように感じることがある。先日も夜になって急にじっとして動かなくなったかと思うとブルブルと震え始めた。
大丈夫か?
少しは気になったりもするが、それよりもその様子を心配そうに見ている娘の方が僕は気になってしまう。
「心配だから一緒に寝る」と言って、一晩中様子を見ていたりする。このウサギが死んでしまったら娘はどんなに悲しむんだろう。できればそんな悲しい目には会わせたくない。でも近い将来その時はきっとやってくるだろう。なんとかして避けられないだろうか―― そうだ! ペット・セメタリーがあった!
そんな僕の気持ちを代弁するかのような映画『ペット・セメタリー』は1989年に公開されたホラー映画。主人公一家が住む家の裏には近所の子供達が作ったペット墓地があり、さらにその奥には先住民族が残した死者を蘇らせる墓地がある… という話。公開当時は単なるB級ホラーのゾンビ映画としてしか見ていなかったのだが、この年齢になって改めて観るといたるところに教訓を感じてしまう映画だったのだ。
家族を悲しませたくない、失いたくないという気持ちが募り、ものごとはどんどん悪い方へと進んでいく。分かる、分かるよ、その気持ち。そんな墓地の近くに住んでいたら判断ができなくなって間違いなく同じことをやってしまうだろう。
映画のエンドロールで流れるラモーンズの「ペット・セメタリー」はグッと抑えたアレンジで映画の余韻を強く感じさせる名曲だ。原作者スティーヴン・キングの依頼で作られたようだが、この頃のラモーンズ自身のことを歌っているようにも感じる。
I don't want to be buried in a Pet Sematary(ペット・セメタリーに埋葬されたくない)
I don't want to live my life again(自分の人生をやり直したくない)
「ペット・セメタリー」のPVではラモーンズのメンバー全員がまとめて埋葬されてしまうが、最後の最後で「やり直しなんか嫌だね」と言うように墓に手を振りながら朝日に向かって歩いていく姿がなんとも言えず格好いい。きっとこれはPVの撮影が終わって「お疲れ!」って感じで歩いているところなのだろう。
でも僕はこの最後の3秒足らずのシーンにラモーンズからのメッセージが込められているように感じてしまう。
ところで、我が家のウサギはといえば―― 震えながら夜を過ごした翌日、動物病院でお尻に注射を一本打たれ、再び元気を取り戻している。
そして近い将来やってくるその日までに、ホラー映画嫌いな娘に『ペット・セメタリー』を見せておこうと思う。「子供にも死を教えておくべきだ」とこの映画の中で一番怪しくて好人物のジャドに教えてもらったから。
歌詞引用:
ペット・セメタリー / ラモーンズ
2018.04.29
YouTube / BoPTePegar
YouTube / LiebermannRamone3
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