2003年 1月19日

【Y2Kリバイバル】木村拓哉「GOOD LUCK‼」30%超えの視聴率とANA全面協力のリアリティ

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2003年のドラマ『GOOD LUCK‼』、初回の名シーン


乗客「一か八かでも飛べよ!」
新海「一か八かで人を死なせるわけにはいかねぇんだよ!」

―― 2003年のドラマ『GOOD LUCK‼』(TBS系)の初回の名シーンである。成田発ロス行の便が航行中、管制からロスの空港が火災でクローズしたことを知らされ、機長(岩城滉一)の判断で成田空港へ引き返す。しかし―― 乗客の1人(平泉成)がどうしても納得しない。“明日中にロスにつかないと、仕事の契約ができないんだ” “この契約が成立しないと、ウチの会社がつぶれるんだ” ―― 仕舞には “機長を呼べ!” とCAを突き飛ばして、コックピットへ向かう。

その時、コックピットで一連のキャビンでのやりとりを聞いていたコーパイ(副操縦士)の新海元(木村拓哉)が意を決して、ヘッドセットを外して立ち上がる。同乗中の香田監査官(堤真一)が “パイロットはみだりにコックピットを出ることは禁じられている” と制するも、 “パイロットもこのシップのクルーの1人です。シップを守るのも仕事ですから” とドアを開けてキャビンに出る。対峙する新海と乗客―― 。

「副操縦士の新海です」
「ロスへ行ってくれ」
「ロスへは行けません。この機は成田に戻ります」
「なんでだ」
「ロスに向かっても、空港に降りられるメドがまだついておりません」
「到着する頃には再開してるかもしれねぇだろうが!」
「この飛行機には片道分の燃料しか積んでいません。万が一、安全に降りられる空港がなかった場合、大変なことになります」

―― と冷静に説明したところで、激高した乗客が放った言葉と、思わず新海も声を荒げたのが冒頭の応酬である。ここで、同ドラマの雄大なテーマ曲「DEPARTURE」(作曲:佐藤直紀)が流れ、場の空気が好転する。物語は解決へと向かい、ハッピーエンドへ。この後もドラマは毎回、クライマックスに同テーマ曲がかかり、航空ドラマらしく高揚感と共に物語が収束する。

木村拓哉演じる副操縦士、新海元の成長物語


ドラマ『GOOD LUCK‼』は2003年1月クールにTBSの日曜劇場で放映され、全10話の平均視聴率が30.4%、最高視聴率37.6%(最終回)と大ヒットした。主演・木村拓哉、ヒロインに航空整備士・歩実を演じる柴咲コウ。共演には堤真一、CA役の黒木瞳、内山理名、チーフパーサー役の段田安則、風変わりな機長役の竹中直人、そして元(はじめ)の父親役のいかりや長介と、弟役の中尾明慶(当時15歳!)等々 ――。脚本はドラマ『ギフト』のセカンドライターだった井上由美子サンに、演出チーフはドラマ『ビューティフルライフ』でセカンドを務めた土井裕泰サンと、制作陣も盤石だった。

ドラマは、副操縦士(コーパイ)になったばかり、新海元の成長物語である。子どもの頃に乗った飛行機でコックピットを見せてもらい、キャプテン(機長)のカッコよさやスチュワーデスのやさしさに触れ、皆が1つのチームとなって飛行機を飛ばす姿に感動――この業界を志したという。性格はまっすぐで、時に熱く、情にも厚い。女性にモテるが、合コンや飲み会は苦手。人を見た目や仕事で判断せず、誰に対してもフラットな目線。そして愛車は―― ランクルの “ヨンマル” (トヨタランドクルーザー40系)である。

深いトラウマを抱えているドラマの登場人物たち


同ドラマの基本フォーマットは、そんな新海の成長を1話完結で描いていく。当初、機長兼運航監査官の香田とはソリが合わず、規律主義の彼を “サイボーグ” と呼び、何かと衝突を繰り返すが―― 物語が進むに連れ、互いに打ち解け合い、やがて師弟のような関係になる。また、航空整備士の歩実とも最初は何かと衝突するが、互いを知るにつれ徐々に接近、やがて恋人の関係に―― このあたりは、少女漫画の王道パターンだ。

だが、そんな香田と歩実はそれぞれ深いトラウマを抱えている―― というのが、ドラマの後半へ向けての伏線になる。奇しくも、2人とも12年前に起きた航空機事故に深く関わっており、香田はキャプテンとして乗務する予定だったが、当日朝に体調不良になり、スタンバイの先輩機長へ交代。事故で彼を失った。一方、歩実も両親が同機に搭乗し、事故で亡くしていた。以来、彼女は飛行機を恐れ、それを克服するために整備士になるが、未だに飛行機に乗ることができない。

ドラマは終盤、訓練中に香田をかばって誤って高所から落下した新海が足に再起不能の重症を負い、パイロット人生に赤信号が灯る。しかし―― 歩実のトラウマを克服させるには、自分が操縦する飛行機に乗ってもらうしかないと、再びパイロットに復帰すると歩実に告げる。

「俺やってみるわ。これ治して絶対もう一度空飛んでみせる。みんなさ、無理だ無理だって言うんだけどさ…… これ俺の足じゃん。俺がなぁ、俺が…が諦めちゃダメでしょ。それに、お前も、やっぱ乗せてえし。どんなことしても絶対お前のことシップに乗っけてさ、ああいう雲どーんと突き抜けて、スッゲー近いとこで太陽見せてやりてぇから」

ANAの全面協力で生まれたワンシーンごとのリアリティ


さて―― 同ドラマは100%の航空ドラマである。ゆえに、ANAの全面協力は欠かせない。ANAのオフィスで撮影させてもらったり、機外の風景を同社の映像ソフト『BLUE ON BLUE』を使わせてもらったりと、ドラマにリアリティをもたらすのに一役も二役も買っている。ちなみに、初回の放送後からANAの株価が上昇、日本航空(JAL)が歯ぎしりしたという(*奇しくも、JALの破綻は同ドラマの第1話がオンエアされてから丁度7年後の2010年1月19日である)。

実際、それまでの航空ドラマと言えば、『アテンションプリーズ』(TBS系 / 1970年~71年)を始め、『白い滑走路』(TBS系 / 1974年)や『スチュワーデス物語』(TBS系 / 1983年~84年)など、ほとんどJALの協力のもとに作られてきた。例外は桜木健一サンがパイロットを目指す主人公を演じた『虹のエアポート』(TBS系 / 1975年)が唯一、全日空の協力で作られたくらい。

とはいえ、『GOOD LUCK‼』は脚本がかなり踏み込んでおり、それまで航空ドラマでタブー視されてきた “航空機事故” を扱ったり、CAに “エコノミーが狭い” と禁断の台詞を吐かせる(笑)など、航空関係者曰く “JALに協力を依頼しても断られただろう” ――。もっとも、『やまとなでしこ』のように、航空会社の協力が得られず、架空の会社「エアドリーム」を名乗り、それっぽい施設で撮影するなど、力づくで航空業界を描いた例もある(褒めてます)。まぁ、スッチーがあれだけ合コン三昧だと、断られて当然だけど(笑)。

つまるところ―― ドラマ『GOOD LUCK‼』の見どころは、“神はディテールに宿る” じゃないが、ワンシーンごとのリアリティに尽きると思う。 “コーパイ” や “便乗” (パイロットやCAが一般の乗客として旅客機に搭乗すること)、 “シップ” (飛行機)、“ダイバート”(空港を変えて着陸)などの航空用語をサラリと用いたり、初回の岩城滉一サンを始め、3話の津嘉山正種サン、7話の柴俊夫サンなどの珠玉のバイプレイヤーたちを惜しみなくゲストスターに投入、彼らが演じる機長を厚く描き、キムタク演じるコーパイをあえてメインストーリーの脇に置いたのも、機長=最高責任者という航空業界の鉄則を語る上で不可欠だった。

スーパーサブに徹する役のほうがキラリと光るキムタクの演技


ちなみに、津嘉山正種サンは、JALが提供するラジオ番組『JET STREAM』(TOKYO FM)の裏で、長くライバル番組『クロスオーバーイレブン』(NHK-FM)のナレーターを務めた方。ある意味、JALのライバル役に相応しく、そのキャスティングは同ドラマの確信犯とも噂された。実際、彼が演じた夏川キャプテンは容姿・声ともハマり役で、新海への台詞 “熱くて頑固者は、空の男の伝統だ” は、ほれぼれするほどカッコよかった。

そう、主人公のキムタクがメインのキャプテンではなく、その脇のコーパイを演じる―― これが、同ドラマが成功した一番の要因だと思う。実際、当時のキムタクの年齢(30歳)では機長には若すぎるし、同ドラマの終着点をキャプテンに置くのも、平均的なコーパイ期間が8年〜10年という慣例から不可能。何よりキムタク自身、昔からど真ん中にいる役より、その脇でスーパーサブに徹する役のほうがキラリと光ることが多い。『あすなろ白書』(フジテレビ系)の取手クン、『ラブジェネレーション』(フジテレビ系)の哲平、『ビューティフルライフ』(TBS系)の柊二―― みんなそう。ちなみに、キムタク自身、以前、ラジオ番組で “自身の歴代ドラマで最も好きな役は?” とのリスナーからの問いに、『GOOD LUCK‼』の新海元と答えている。

珠玉のエンディングは山下達郎「RIDE ON TIME」


さて―― 最後に、ドラマ『GOOD LUCK‼』を語る上で、絶対に忘れてはならない主題歌の話を。同ドラマのラストは決まって、ここぞという決めのショットに被さるように、山下達郎サンの歌声が流れる。その瞬間、お茶の間はアドレナリンが一気に上がり、その歌詞の通り、大空から地平線を眺めるかのごとく高揚感に包まれる。同ドラマの読後感の良さは、間違いなく、この珠玉のエンディングにある。―― そう、山下達郎サンの名曲「RIDE ON TIME」である。

 青い水平線を いま駆け抜けてく
 とぎすまされた 時の流れ感じて
 
 AH ときめきへと 動き出す世界は
 忘れかけてた 遠い夢の訪れ

リリースは1980年5月1日。作詞・作曲・編曲:山下達郎。リリース当時は、達郎サン自身が膝まで海に浸かり、カメラ目線で指鉄砲を構える日立マクセルのカセットテープのCMで一躍バズった。それも悪くないが―― 間違いなく、同曲を聴く最高のシチュエーションは、ドラマ『GOOD LUCK‼』のエンディングである。

ぶっちゃけ。

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2026.05.23
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カタリベ
1967年生まれ
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