夏うたを2026年の視点で再編集 vol.12
十年先のラブストーリー / TUBE
TUBEの人気バラード「十年先のラブストーリー」
TUBEといえば、多くの音楽配信サイトの夏うたランキングにて全世代で上位となる「あー夏休み」(1990年)や、ブレイクのキッカケとなった「シーズン・イン・ザ・サン」(1986年)。あるいは、J-POPシーン全体で8㎝シングルのミリオンヒットが量産された時期の「夏を待ちきれなくて」(1993年)とか「夏を抱きしめて」(1994年)。さらには歌謡曲の切ない要素を取り入れた「さよならイエスタデイ」(1991年)や「ガラスのメモリーズ」(1992年)など——。こういった曲をを思い浮かべる人が多いかもしれない。
しかし、TUBEのコアファンによる投票では、こういった夏を全面的に押し出した数々の大ヒットシングルと並び、1991年のアルバム『湘南』に収録された「十年先のラブストーリー」と、1992年のアルバム『納涼』に収録された「君となら」が上位に挙がるのだ。確かに、彼らのバラード集である2枚のアルバム『Melodies & Memories』(1994年)と、『Melodies & Memories Ⅱ』(2001年)のどちらにも収録されているのはこの2曲だけ。2015年リリースで彼らの30周年を記念したCD4枚組 『Best of TUBEst 〜All Time Best〜』にも当然のごとく収録されている。
そして2026年7月5日現在、Spotifyでの再生回数でみてもバラードTOP3は、1998年のドラマ『世界で一番パパが好き』(フジテレビ系)の主題歌だった「きっと どこかで」が約329万回でトップであるものの、2番手に「十年先のラブストーリー」が約312万回、そして3番手に「君となら」が約280万回となっており、名だたるシングルにも引けを取らない人気バラードになっている。
3番手の「君となら」は、1990年代において藤井フミヤの「TRUE LOVE」や、山根康広の「Get Along Together」と並んで結婚式ソングの定番として浸透していたので、今なお広く浸透しているのは納得できる。一方で「十年先のラブストーリー」は、ドラマ主題歌やCMソングなど、全国規模のタイアップもないのに2番手につけているのは、楽曲本来の魅力があるに違いない。そこで、今回は3つの切り口から「十年先のラブストーリー」の魅力をあらためて考えてみた。
誰もが歌いたくなる、圧倒的なカラオケ人気曲
まず、第1の魅力は《歌いたくなること》だろう。穏やかなAメロ、少ししんみりさせるBメロ、そしてサビで一気に熱唱するという曲の展開は、昭和後期から平成のJ-POPリスナーならすぐ覚えられそうだ。「♪君の好きなカセット」「♪出会いのマリーナ」といった歌詞中のフレーズも、昭和世代ならではの親しみやすさがある。
また、ボーカルの前田亘輝の高音域を活かしたハイトーンも、いかにもカラオケで挑戦したくなるほど聴いていて心地よい。実際、TUBEの楽曲の中ではカラオケ人気で長らく4番手に定着している(JOYSOUND調べ)。30万枚以上のシングルヒットを14作も持つTUBEにおいて、アルバム曲でありながら長年カラオケ人気4位を誇ること自体が、この曲の人気を物語っている。
ライブでは壮大な演出で演奏する曲
次に、第2の魅力としては《ライブでの感動》とリンクしていることが大きい。過去のライブ映像を観ると、本作のドラムス、ギター、ベースが一堂に会した力強いイントロが聞こえた途端、大きな歓声が上がっている。また2コーラス目のラストで前田が「♪I'm still in love」と熱く歌い上げるやいなや、作曲者である春畑道哉のギターがむせび泣くようにうねり出す流れも胸に響く。
さらに、彼らのスタジアムライブ名物でもある全方位からの大噴水を浴びながら、前田が「♪ラブストーリー最後は君と」と歌いきる姿は、多くの観客の涙腺を崩壊させてきた。筆者がギターの春畑道哉とベースの角野秀行の2人にインタビューした際も “噴水をぶち上げるなど、壮大な演出で演奏する曲” の筆頭格として本作を挙げていた。彼らにとっても「十年先のラブストーリー」といえば “大噴水” のイメージなのだろう。
輪廻転生まで想起させる歌詞
そして、第3の魅力は《どこか希望のある失恋ソング》として、歌詞に共感するファンの声が非常に多いことだ。例えば、動画サイトのコメント欄を見ると、“大好きだったのに別れた彼を想い出す” とか “青春時代の彼女との良い想い出” とか、男女問わず別れても想いが続いている方に強烈に響くようだ。これはまさに「♪もう一度 二人戻れるなら(中略)君を離さないよ 十年先でも」という本作の歌詞と想いが見事にシンクロしているからだろう。
大サビで「♪千年先でも ラブストーリーいつかは君と」と歌詞が出てくるためか、“亡くなった夫とまためぐり逢いたい” といったコメントも見受けられ、輪廻転生すら想起させる点も単なる失恋ソングの枠を超えている。これは「♪千年先」という言葉だけでなく、高らかに歌うボーカルや清々しいバンド演奏も相まって、大きな希望の歌に昇華しているのではないだろうか。
より多くの世代に知ってほしいTUBEの大名曲
昨今は、日本のアーティストがシティポップとして世界中で聴かれていて、その中には杉山清貴&オメガトライブや大滝詠一など、リゾートやシーサイドを想起させる楽曲も少なくない。TUBEにもそういった描写は出てくるものの、シティポップ勢が海辺でクールに過ごすイメージが多いのに対し、TUBEは実際に海に出て、泳いだりナンパしたりしてホットなイメージが強い。
そういった意味では、とりわけ夏に大きな一歩を踏み出したい時、TUBEの楽曲は大きな後押しになるだろう。そして、たとえ悲しい別れになっても、「十年先のラブストーリー」のような希望あふれる楽曲が守ってくれることだろう。やはり、より多くの世代に知ってほしいTUBEの大名曲であることは間違いない。
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2026.07.26