FM放送の話ということで、映画では当時のAORの代表曲が全編に渡って流された(Kiwi FM オリジナル・サウンドトラックとして発売されている)。ところが、久し振りに映画のパンフレットを出してきたら、思わぬ発見があった。そこにはFM局Kiwiのランキングボードの写真が載っていたのだが、意外なことに、Top20の中にAOR以外のジャンルが何曲も入っている。そして、その中に日本の曲が2曲も。大滝詠一と山下達郎だ。
これまで本サイトで僕が取り上げたアーティストや楽曲は、全ていわゆる “洋楽” である。実際、学生時代に女子を隣に乗せてドライブする時、クルマの中で流す音楽は殆ど洋楽だった… と言うか、正直、日本の曲を流すことはあまり考えなかった。しかし、何事にも例外はあるもので、大滝詠一の『A LONG VACATION』と山下達郎の『FOR YOU』だけは僕のクルマの中に常備されていた。70年代から洋楽を聴きまくってきた僕の耳にも耐えられる… いやいや、それ以上のクオリティだったからだ。
81年3月21日にリリースされた『A LONG VACATION』と82年1月21日にリリースされた『FOR YOU』は、どちらもトータルアルバムとして質が高く、共通点も多い。『A LONG VACATION』のジャケットはプールサイドをモチーフとした永井博のイラストで、当時は「ジャケットで売れた」とも言われていた。『FOR YOU』は西海岸をイメージした鈴木英人のイラストだ。80年代の “夏” に、この2人のイラストレーターの存在は不可欠だと心の底から思う。
『A LONG VACATION』はA/B面に5曲ずつ収録されているが、両面とも4曲目にコミカルな曲を入れてアルバム全体の流れに緩急をつけている。『Pap-Pi-Doo-Bi-Doo-Ba物語』と『FUN×4』だ。『FOR YOU』では、『INTERLUDE』という短いアカペラをA/B面に2回ずつ挿入することで、やはり全体の流れに緩急をつけている。だからどちらのアルバムも、A面の最初からB面の最後まで、元の順番で通して聴いた方が絶対にいい。