洗練されたアイドルよりも、少し野暮ったい女の子に興味が向いていた10代の頃、UKシーンで目を引いたのは断然バナナラマだ。ピストルズのメンバーによるサポート、ポール・ウェラーの楽曲提供、テリー・ホールとの共演などパンク方面からの追い風を受け、ポップなソウルを歌う点に興味を惹かれた。ファースト・アルバムがリリースされた頃、日本ではホンダタクトのCMに出演(歌も提供)していたが、とにかく愛らしかった。
決定打は1984年にリリースされ、イギリスでは彼女たち最大のヒット曲となったセカンド・アルバム収録曲 “愛しのロバート・デ・ニーロ”。持ち味のノスタルジックなポップ性を備えたダンス・チューンゆえに耳になじむうえに、歌詞がイイ。「周りの男の子たちには興味なくて、映画館でロバート・デ・ニーロを見ているときが最高!」的な内容の反リア充ソング。映画と音楽にどっぷりハマッていた自分、なんかこの気持ちがわかったぞ。
しかし、女心はわからない。その後、自分は田舎から上京して一人暮らしを始めるが、同年に出たサード・アルバムからのシングル曲 “ヴィーナス” を聴いてショックを受ける。カバーだからノスタルジックではあるものの、曲調は当時盛り上がっていたユーロビートで、もはやソウルもパンクもない。
この曲は本国ではまあまあのヒットに留まったが全米チャートを制覇した他、世界中で大ヒットを飛ばす。なんというか、垢抜けない点に魅力があった女の子が、都会に出たらいきなりメイクバッチリでディスコのお立ち台の上に立っていた… という状況にも似たショック。上京しても一向に垢抜けなかった自分には眩しくも寂しく映った。ポップにおける失恋。
数年前、ふと思い立ち、バナナラマのベスト盤をCDで購入。当然ユーロビート期の曲も入っているが今聴くと、これはこれで悪くない。野暮ったいオッサンなりに、大人の余裕で聴けるようになりましたよ。
2016.09.19
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