2023年 8月2日

ジャンク フジヤマの夏モード全開!現在進行形のシティポップ名盤「DREAMIN’」

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村上 “ポンタ” 秀一の最後の弟子、ジャンク フジヤマ


2023年夏。エアコンの効いた部屋から見える青空は、とても爽やかに見える。ああ外に出たい! と一瞬思うのだが、一歩外に出たら灼熱の太陽に焼かれる。

ジャンク フジヤマさん。あれはたしか2012年5月、ラジオで楽曲を知り、「あ、これいい」とメジャーデビュー直前の目黒ブルースアレイでのライブを見て、好感を持ったのが最初の出会いだったから、もう11年も経過したことになる。

村上 “ポンタ” 秀一さんの最後の弟子とも言われた、1983年生まれのジャンク フジヤマさんは、2021年から2022年にかけて、少年の頃から敬愛する山下達郎さんのカバーを配信シングルでリリースするなどオリジナル以外でも、デジタル音源には収まりきらない肉体性と迫力のある個性的な声でポップミュージックを聴かせるシンガーとして認知されている。

2011年のインタビューで、彼は次のように語っていたが、それが徐々に花開き、若い人たちへの伝道師となっている。

「今の僕ら世代の人たちって、70〜80年代の音楽をほとんど聴いてないんですね。でも、その時代こそ本当に音楽にパワーがあった時代なんで、その音楽に突き動かされるものがすごく多いんですよ。かと言って、みんながその時代の音を聴いても、何がいいのか、どこがすごいのか分からないみたいなんですよね。もう完全に感性がかけ離れちゃってる。どっちが良い悪いは別として、僕が消化したそういう音楽を、現代に伝えることによって若い世代も分かって欲しいと。どれだけその年代の音楽を知らないで生活してることが損なことかを知らしめるがための僕の活動なんです(笑)」
(ぴあ関西版WEBより)



今風の美しい松花堂弁当のようポップミュージック


ジャンク フジヤマさんとここ数年共同制作している、1990年生まれの神谷樹さんがメインで作るサウンドは、1965年生まれで、70年代後半から80年代にかけて洋楽を聴きまくっていたわたしにとっては「うまく綺麗にまとめて若い世代にアプローチしていて、なかなか良い!」というのが第一印象。あの頃、洋楽が大好きだったミュージシャンの皆様が作っていた、どこか汗臭くゴリゴリしたサウンドを、つるんとしたパッケージングで聴きやすくまとめている、という印象を受けたものだ。

現代の空気感、ポップミュージックに求められている爽やかさ、楽しさ、浮遊感、陽気さ、翳り、哀愁… といった要素をほどよく詰め込んでいる、よくできた、今風の美しい松花堂弁当のようだ。

そのサウンドと、人間が普遍的に持つ肉体性を存分に表現しているジャンクフジヤマさんのヴォーカルの組み合わせは、青空と灼熱の太陽にも似ている。

80年代、90年代以降に生を受けた作り手の彼らが2020年代のいま、いいところだけ見ている、憧憬の70年代後半から80年代の風景は、その裏には汗臭く泥臭く闇もあり、決して美しいだけのものではない。ただし希望はあった。

希望とは、頭の中や心に持つもの。希望というフィルターをかけてみると凄く良く見えるのだ。

70年代後半から80年代の雰囲気を今の時代にうまく再現


さて、ここからはアルバムの収録曲をさらっと紹介していこう。面白そうだな、そう思ったら、ぜひ聴いて欲しい。

アルバムのタイトルチューンであるM-1「DREAMIN‘」のイントロの途中、グゥイーンと無重力を感じさせる音から歌に入るところは、1980年代から2023年の今へ。つまりジャンク フジヤマさんが生まれた40年前に無重力でタイムスリップさせてくれる。この始まり方は、その後に聴ける作品への期待を感じさせてくれる上手い手法だ。2023年11月にアナログ盤が発売予定だが、レコードというメディアで続けて聴くと、よりその時間旅行感が増すのではなかろうか。

イントロのヴォーカルワークからカッティングに入る場面で、いきなりの転調が面白いM-2「CATCH THE RAINBOW」(Album Version)。全編に纏わりつくカッティングは完全に山下達郎テイスト。本編途中の転調からウェイトを増し、アウトロでは完全に主役となっていくコーラスが山下達郎さんオマージュ。本当にこういうのが好きな人なんだ、そう思わせる1曲。

山下達郎さんの「Silent Screamer」を彷彿とさせるM-3「NIGHT CRUISING」は、ベースのブリブリ感や音作りが70年代後期的。ライブでのソロ回しも期待でき、この時代の音楽が好きな人にはたまらない。アルバム『DREAMIN‘』の節々に感じる「人間が音楽を作っている」なかでも、このアルバム随一の肉体的なパフォーマンスが見えるシーンでもある。続く美しいバラードM-4「SOUTHERN CROSS」は高音の美しさが映える。意図的にヴォーカルを抑えているように感じられたが、これはぜひジャンク フジヤマさんのパフォーマンスをライブで聴きたい1曲。間奏で入るサックスも魅惑的。

この、アナログ盤ではA-2、3、4、に相当する流れは、70年代後半から80年代の雰囲気を今の時代にうまく再現している。

アルバムの最後を飾るのは布施明のカバー「君は薔薇より美しい」


今回のアルバムのリード曲であるM-5「あれはたしかSEPTEMBER」はスピード感の中にほのかに見える翳りが効く1曲。ドラマの場面を切り取ったかのようなナンバーで、中間色の綺麗なイラストのアニメーションで誰か映像作品を作らないかしら、そんなことを考えた。

アナログ盤ではレコードを引っくり返したところでのM-6「雨あがりの街」(Album Version)。既にシングル配信されている作品に、最初に雨の効果音とミュートピアノが入り、より雨上がり感アップ。ジャンク フジヤマさんの声の良さがよく出ていると思わせる作品。

彼がこれまでのいろいろなポップミュージックから影響を受けていることを如実に表すのが、M-7「STEP BY STEP」。モータウンサウンドは人類共通のハッピーアイテム。手を叩き、浮き浮きして歩きだしたくなるような1曲。ライブでもハンドクラップが映えそう。続くM-8「MID-SUMMER」は涼し気なガットギターの音色と、ロマンチックな詞が夏の海とロマンスを誘う。

わたしのお気に入りはM-9「UTOPIA」、山川恵津子さん作曲の、このアルバムでは若干異色な作品で、浮遊感があるKIRINJIを思わせるサウンドをずっとエンドレスで流していると、とても気持ち良い。

そして最後を飾るのは布施明さんのカバー。M-10「君は薔薇より美しい」パワフルなヴォーカルなのにあまり暑苦しく感じさせないのは、つるんとしたサウンドの力が大きい。

渋谷の雑踏に少女が佇む「DREAMIN’」のジャケット


そういえば、1983年生まれのジャンク フジヤマさんのお父様が山下達郎さんと同じ年だという。
1982年にリリースされた山下達郎さんの『FOR YOU』のジャケットでは鈴木英人さんがアメリカ西海岸の電気屋さんのイラストを描き、そのビジュアルを含めて、聴いているわたしたちに強い印象を残した。40数年後のいま、ジャンク フジヤマさんの『DREAMIN’』のジャケットは、渋谷の雑踏に少女が佇む。イラストレーターはみなみはん。意識していないとは思うが、ジャケットが音楽作品を聴く私たちに与える印象は、どこか共通感がある。

これから40年後の2063年、いま57歳のわたしは生きているかどうかわからないが、その頃に1970〜80年代の遺伝子を持った作品を、その頃の人々が楽しんでもらえていたら、嬉しいと思っている。願わくば、わたしも97歳のおばあちゃんになっているが、遺伝子を持った作品を聴いてみたい。

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2023.08.06
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カタリベ
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