「ポンキッキーズ」に出演、朝から癒やしと元気を与えてくれた鈴木蘭々
僕はショートカットの女性が好きだ
いきなり個人的な告白で、「知らんがな」と総ツッコミを受けてしまいそうだが、これは実は昔から一貫している。スケバン刑事では相楽ハル子演じる「ビー玉のお京」がお気に入りだった。その後も石川亜沙美、内田有紀等々…。現在でも本田翼やのんが推しだ。
そんなショートカット好きの自分が、1994年から1999年にかけての時期に一番の推しだったショートカット美少女が、鈴木蘭々だ。特にフジテレビ『ポンキッキーズ』で、安室奈美恵と二人でうさぎの着ぐるみを着たユニット「シスターラビッツ」は、ちょうど新社会人になりたてで、不慣れなサラリーマン生活を送っていた当時の自分にとって、憂鬱な朝の一服の清涼剤として、朝から癒やしと元気を与えてくれる存在だった。
芸能生活35周年、本人監修のベストアルバムをリリース
その鈴木蘭々が、今回芸能生活35周年を記念して、本人監修によるベストアルバムをリリースするという。
アーティストとしての鈴木蘭々といえば、スマッシュヒットしたデビュー曲「泣かないぞェ」、そして前述のシスターラビッツで安室奈美恵と一緒に歌っていた童謡のマッシュアップソング「一寸桃金太郎」や「汽車ポッポ鉄道どこまでも」、あとはポンキッキーズ出演後期にリリースされた「キミとボク」が有名で、自分にもその印象が強かった。
しかし今回このベストアルバムを聴いて、まず驚いたのは、鈴木蘭々のシンガーとしてのクオリティの高さだ。当時から聴いているファンの方からすると「何を今さら」と思われるかもしれないが、本当に目から鱗が落ちたというのが率直な感想だ。
筒美京平プロデュースのポップチューン「泣かないぞェ」からスタート
まずはデビュー曲「泣かないぞェ」からスタート。筒美京平プロデュースのポップチューンで、彼女の明るさや元気がストレートに伝わる楽曲だ。タイトルの小さい “ェ” が、彼女のバラエティ番組で見せるキャラクターを上手く表現しているように思う。M2の「なんで なんで ナンデ?」も同様に、元気さに溢れたナンバーだ。デビューからのこの2曲は、世間一般の持つバラエティタレントとしての鈴木蘭々のイメージにぴったりだ。
しかし、逆にその印象が強すぎるために、彼女本来の歌唱力や表現力が伝わりにくくなってしまったのではないかな?と思ってしまう。それはR&BテイストをふんだんにあしらったM33「kiss」やM4「magic」での歌声を聴くと、すごくその思いが強くなる。彼女自身も好きだったというR&Bスタイルの曲だと、さらに活き活きとした彼女のシンガーとしてのポテンシャルを感じることができる。
それはM5「・・・of you」、M6「Shoobie Doobie Doing!」を聴いても同じだ。しっとりとしたバラードもダンサブルなポップソングも、彼女は等身大で飾り気がなく、それでいて様々な顔を覗かせる歌声で、表情豊かに歌い上げている。
コロナ禍を経て現在進行形の鈴木蘭々
M7は “ポンキッキーズメロディ” でもある「キミとボク」。EPOの作詞作曲による優しさあふれる詞とメロディーを、ナチュラルな歌声であたたかく歌い上げる。
そしてこの曲は、ボーナストラックに入っている、コロナ禍の2020年8月にYouTubeで発表されたM16「キミとボク (リモートバージョン)」と是非聴き比べていただきたい。よく歌い手によっては年齢を重ねると歌い方を変えたり妙に癖のある歌唱に変わってしまうことも多いが、彼女の場合は、変わらず自然で、尚且つ程よく角の取れた柔らかい歌声を聴かせてくれている。
そんな現在進行系の彼女は、M8「迷宮輪舞曲」M9「Mother」M10「Just Do it, Do it over」の今回初CD化された配信曲3曲と、M13「Rain」M14「戦場のラブレター」M15「明日、またね、、、」の新曲33曲で堪能することができる。ちなみにこれらの曲の間に、デビュー前のデモ音源であるM11「Meet The Flintstone」(アニメ「原始家族フリントストーン」の主題歌)とM12「Bye Bye Baby」 (マドンナのカバー曲)のフレッシュな歌声が挟まれているのが、曲順としてはニクい演出である。
満を持して歌い上げた「戦場のラブレター」
これら現在の曲の中でも特に「戦場のラブレター」は、若かりし頃、筒美京平より提供されたものの、当時は「まだ早すぎる」との判断でお蔵入りしていた曲に、今回新たに鈴木蘭々が作詞し “満を持して” 歌い上げた曲ということで、なかなかに聴きごたえのある曲だ。
このように今回のアルバム『鈴木蘭々 All Time Best〜Yesterday&Today〜』は、アーティスト鈴木蘭々の魅力がいっぱいに詰まったアルバムである。古くからのファンはもちろんのこと、「明るく元気なバラエティタレント」という印象を持っている人こそ、シンガーとしての実力を知り、彼女を再評価することができるアルバムとして楽しめるのではないだろうか。
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2023.07.23