11月25日

幻のシンガー間宮貴子!まったく注目されなかった極上のシティポップ「LOVE TRIP」

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6回目の開催となる「CITY POP on VINAL」


『CITY POP on VINAL』は、“CITY POPをレコードショップで、しかもアナログレコードで!” をコンセプトにしたイベント。筆者もシティポップ・サウンドをこよなく愛している1人なので、このイベントを毎年心待ちにしている。発売されるレコードジャケットが一斉に並ぶと、懐かしいような、近未来を見ているような不思議な気持ちになるのは毎度のことだ。

今回の『CITY POP on VINAL』は8月2日(土曜日)からの開催だが、2020年に始まった本イベントも早いもので6回目の開催となる。今回のラインナップをざっと見渡すと、大貫妙子の初期3枚のアルバムは変わらず人気が高いようだが、定番として人気の高いアルバムがCindy、池田典代、そして今回のコラムの主役である間宮貴子だろう。

伝説のアーティスト間宮貴子


間宮貴子のLP『LOVE TRIP』は、2020年、2021年、そして2025年と3回目の登場となるが、アナログレコードとしては7回目の再発売ということになる。再発の回数を見るだけでも、いかに素晴らしいアルバムかがお分かりいただけるだろう。この作品は1982年11月25日にキティレコードから発売になったわけだが、間宮はこのアルバム発表後、表立った活動をしておらず、ネットがここまで普及した令和になってもその消息は不明。いわば伝説のアーティストとして語り継がれている。

1982年のポップスシーンを振り返ってみると、山下達郎『FOR YOU』、松田聖子『Pineapple』、松任谷由実『PEARL PIERCE』、ナイアガラ・トライアングル『NIAGARA TRIANGLE Vol.2』などが年間アルバムチャートのTOP10にランクインしており、昨今のシティポップ・ブームで再評価の高いアルバムを数多く目にすることができる。11位に来生たかお『夢の途中』がランクインしているが、来生といえば中森明菜の一連のヒット曲や、松田聖子にも楽曲提供している。

来生はこの『LOVE TRIP』にも「ONE MORE NIGHT」という曲を提供しているが、当時まったく注目されなかったのが不思議でならない。また、LPの帯には、”消えないでイルミネーション、ワン・モア・ナイトあなたと……”。サブコピーには “女流ヒットメーカー来生えつこ、三浦徳子を迎え、ポップス界今をときめくコンポーザー来生たかお、井上鑑等によってまとめあげられた待望のデビューアルバム。ジャジーでソフトな夜を……” とあるが、文字だけでこのアルバムの素晴らしさを表現するのは難しいかもしれない。



バックを支えている超一流ミュージシャン


アルバム『LOVE TRIP』は、椎名和夫、星勝が中心となりアレンジされており、歌謡曲的エッセンスをまったく感じさせないセンスの良い作品で、間宮のボーカルと絡み合うサウンドが絶品だ。「たそがれは銀箔の…」という曲は唯一井上鑑が作・編曲を手がけているが、全体の世界観を壊すことなくスウィートな仕上がりになっている。

参加ミュージシャンも超一流がバックを支えており、椎名和夫(ギター)、難波弘之(キーボード)、鳴瀬喜博(ベース)、上原裕(ドラムス)、横山達治(パーカッション)、帆足哲昭(パーカッション)、沢井原兒(サックス)、包国充(サックス)、井上鑑(キーボード)、松木恒秀(ギター)、数原晋(トランペット)、向井滋春(トロンボーン)というレジェンドたちが参加している。

コーラスには同年、アルバム『Thru Traffic』をリリースした東北新幹線(鳴海寛、山川恵津子)がクレジットされていることも見逃せない。東北新幹線も当時はまったくと言っていいほど注目されなかったことを考えると、名盤というのは財宝のようにあちこちに埋もれているのかもしれない。

“シティポップのお手本” と呼べる「真夜中のジョーク」


収録曲の中でも特に人気の高い曲は難波弘之が作曲した「真夜中のジョーク」で、まるで “シティポップのお手本” と呼べるような素晴らしい1曲だ。ちなみに2021年には「LOVE TRIP / 真夜中のジョーク」としてシングルカットされ、7インチでリリースされている。アルバム『LOVE TRIP』は発売から30年間、まったく陽の目を見ることなく、2012年にようやく初CD化されたが、その後、アナログレコードだけでなく、2022年にはカセットテープやSACDハイブリッドとしてリリースされている。



このアルバムは音源とクレジット以外、当時を振り返れるような資料は残されておらず、謎に包まれている非常に珍しいタイプの1枚だ。つまり推測してこのアルバムを語らなければいけないのだが、音楽というのはそもそも余分な予備知識など必要ないのだと、このアルバムを聴くたびに強く感じる。『LOVE TRIP』はストリーミングでも気軽に聴くことができる作品だが、是非、アナログレコードで聴いていただきたい。

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2025.07.06
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カタリベ
1967年生まれ
長井英治
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