12月1日

パクリはインスパイア? 元ネタを彷彿とさせる J-POP の名曲

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松任谷由実のアルバム「NO SIDE」がリリースされた日
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ユーミンの「ノーサイド」は「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」?


2019年の大晦日、松任谷由実が「ノーサイド」(1984年発表のアルバム『NO SIDE』に収録)を TV 初披露するということもあって、僕は珍しく『NHK紅白歌合戦』を観ていた。

リリース当時を知る者としては、「ラグビーW杯で活躍した日本代表に感謝を伝える」という文脈でこの曲が語られることに違和感がなくもなかったが、それは一旦置いておくとして、とにかく松任谷正隆が弾くローズ・ピアノのイントロに耳を澄ませてみたのだった。

ところが、35年前に初めてこの曲を聴いた時と同じように、やっぱり僕はどうしてもクリストファー・クロスの「ニューヨーク・シティ・セレナーデ(Arthur's Theme - Best That You Can Do)」を思い出してしまう。この2曲のイントロは、それほどまでに似ているのだ。

松任谷正隆が自著で述懐… しかし影響を受けるのは当然


松任谷正隆は、自著『僕の音楽キャリア全部話します―1971 / Takuro Yoshida-2016 / Yumi Matsutoya―』(新潮社)の中で、この曲のイントロは、たまたま知り合いのミュージシャンが弾いているのを聴いて譲ってもらったところ、後でクリストファー・クロスに似ていることに気づいてがっかりした… と述懐している。

とは言え、当時この手の話は腐るほどあったし、僕自身は決して悪いことではないと考えていた。そもそもポップミュージックは僕たち日本人にとっては輸入文化だし、本家の影響を受けるのは当然だからだ。それに、例えて言うなら、学者が論文を書く時に他の学者の論文を引用するのと同じようなものである。

実際、松任谷正隆のアレンジには、元ネタを彷彿とさせる曲が少なくなかった。例えば、松任谷由実のライブでお馴染みの「埠頭を渡る風」は、誰がどう聴いてもスティーヴィー・ワンダーの「アナザー・スター」だ。ついでに言えば、八神純子の「みずいろの雨」もこの曲をベースとしているのではないだろうか。

元ネタを探索するのも楽しみのひとつ!


松任谷夫妻以外にもたくさんある。オフコースの「愛を止めないで」を聴けばボストンの「遥かなる想い(A Man I'll Never Be)」を思い出すし、大沢誉志幸の「そして僕は途方に暮れる」は当時、ポリスの「見つめていたい(Every Breath You Take)」に似ていると言われていた。もっともポリスのこの曲も、ニック・ロウの「あふれでる涙(Too Many Teardrops)」(アルバム『ニック・ザ・ナイフ』に収録)がルーツだという説もある。

このように、僕のような音楽オタクにとっては、元ネタを探索することも音楽を聴く楽しみの一つなのだ。その証拠に、80年代半ばには『ドロボー歌謡曲:盗作ヒット曲リスト公表!!』(日本歌謡曲倫理委員会編、データハウス)という本が出版されたし、渋谷陽一の『サウンドストリート』(NHK-FM)では「著作権料よこせリクエスト大会」なんて性格の悪そうな企画も組まれた。

しかし、僕のような音楽オタクでなくてもわかりやすいアーティストが、佐野元春とレベッカだ。

ハマっている音楽がストレートに滲み出る佐野元春


佐野元春は、その時にハマっている音楽がストレートに自分の作品に滲み出てしまうミュージシャンではないかと思う。当時「SOMEDAY」を聴いて、ブルース・スプリングスティーンの「ハングリー・ハート」を思い出さなかった音楽ファンは一人もいなかったのではないだろうか。また、前作『Heart Beat』に収録された「ナイトライフ」は、おそらく「ロザリータ(Rosalita - Come Out Tonight )」だろう。

“ボス” の次は、スタイル・カウンシルだ。国際青年年のテーマソングになった「Young Bloods」は「シャウト・トゥ・ザ・トップ」そのまんまだったし、スタイル・カウンシルの『カフェ・ブリュ』に対して佐野元春は『カフェ・ボヘミア』、「インターナショナリスツ」に対して「インディビジュアリスト」といった具合で、ここまで来るとむしろ彼が可愛らしくさえ見えてくる。

ナイル・ロジャースもビックリ? レベッカ「ラブ イズ Cash」


続いて、レベッカ。以前、リマインダーのコラムで レベッカの「MOON」がマドンナの「パパ・ドント・プリーチ」に似ていると書いたことがあったが、これはまだマシな方かもしれない。
※『音楽界の当たり年=1958年に生まれたマドンナのターニングポイントは?』

彼女たちの3枚目のシングル「ラブ イズ Cash」は、もはやカバーと言い切った方がよほど潔かったのではないかと思うほど、マドンナの「マテリアル・ガール」そのものだ。ここまで来るとナイル・ロジャースもビックリに違いない。


Song Data
■ ノーサイド / 松任谷由実
■ 作詞・作曲:松任谷由実
■ プロデュース:松任谷正隆
■ 発売:1984年12月1日(収録アルバム『NO SIDE』リリース日)


2020.02.13
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1965年生まれ
goo_chan
世でパクリと言われている作品の多くは、実は耳当たりのよい方向に音を寄せていくアレンジャーの仕業という気がします。コンポーザーとしては不本意なことも多いもあるのではないでしょうかね。
2020/02/20 08:41
0
返信
カタリベ
1965年生まれ
中川肇
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