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自然体こそ自己主張、杉真理の多彩なキャリアにちょっとびっくり!

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2019年3月14日は杉真理の65回目の誕生日。改めて彼のキャリアを見なおすと、知っていたつもりでも、その多彩さにちょっとびっくりする。それは、僕が感じている杉真理という人の印象とのギャップの大きさへの驚きでもある。

杉真理は1977年に大学の音楽サークルで結成したバンドをベースとした杉真理&レッド・ストライプスでレコードデビューしたが、この時はあまり脚光を浴びることもないまま病気によって活動停止を余儀なくされている。僕も彼のことを知ったのは、1980年に「Hold On」でシンガーソングライターとしてソロデビューしてからのことだった。同曲は、レッド・ストライプスにも参加していた竹内まりやのセカンドアルバム『UNIVERSITY STREET』(1979年)のために杉真理が書いたバラード曲で、これはいわばセルフカバーだった。

杉真理がデビューした1980年前後は、日本のポップミュージックシーンに新しい才能が次々と登場していった時期、見方を変えれば日本のポップミュージックが商売になると踏んだレコード会社が、積極的に新人を売り出そうとした時期でもあった。

そんな新人売り出しの動きのひとつに、1981年に行なわれた新人キャンペーン『ジャパコン(Japan Contemporary Sound コンサート)』があった。杉真理、佐野元春、網倉一也、浜田金吾と、所属レコード会社が異なる4人のシンガーソングライターを共同でプッシュしようとする企画で、そのハイライトとなったのが新宿のライブハウス・ルイードで4人が日替わりで行なった連続ライブだった。この最終日に大滝詠一が登場して、杉真理と佐野元春に『ナイアガラ・トライアングル Vol.2』への参加を呼び掛けたのも有名なエピソードだ。

さらに、1982年には松任谷由実、須藤薫とのジョイントコンサート『Wonder Full Moon 行かないで夏休み』を行うなど、この時期の杉真理には、多くのアーティストと積極的に交流する期待のホープというイメージがあった。けれど、正直に言えば、彼には新人らしいガムシャラさというか、ギラギラした自己主張があまり感じられなかった。その作品は洗練されたポップ感覚にあふれていてサウンドのクオリティも高かった。けれど、ボーカルも含めた全体の質感がマイルドなこともあって、強烈なインパクトはあまり伝わってこない印象があった。

その後も、杉真理はソロアーティストとしての活動と並行して、松尾清憲らとの BOX、松尾、伊豆田洋之らとの Piccadilly Circus、村田和人との ALOHA BROTHERS など、多くのユニットを組んで多彩な活動を続けていった。その折々に彼の作品には触れてきたけれど、やっぱり僕の印象は変わらなかった。

でも、考えてみればそんなマイルドなポップさこそが杉真理の自己主張というか、個性だったのだと気づいたのは、ずいぶん後になってからだった。

大滝詠一、松任谷由実、佐野元春、竹内まりやをはじめとする、多くの個性的アーティストとのコラボレーションも、杉真理は軽々と自然体で行っているように見せていた。けれど、どのコラボレーションも、相手の音楽性を引き立てながらも、けっして一方的に相手に寄せていっているわけではなかった。杉真理は杉真理としてしっかり存在しつつ、自然なハーモニーを生みだしていた。そんな彼の足腰の強さを、流れてくる音楽のマイルドさに隠れて見逃していたんじゃないだろうか。

そこになかなか気づかなかった自分の不明を恥じつつ、これだけ多彩な相手と共振しながら自己表現ができるアーティストは、けっして多くはないと改めて思った。そして、彼が果たしてきた業績にふさわしい名声は受けていない… いわば過小評価されているアーティストのひとりなんじゃないかとも感じていた。

おそらく彼自身が望みさえすれば、杉真理は現在より大きくクローズアップされる存在になっていたと思う。けれど、たぶん彼の野心はそこには無かったのだろう。彼は、スターとして時代に君臨することよりも、共感するアーティストたちと一緒に音楽シーンのなかで良い作品を生みだし続けることに生きがいを見出したのではないだろうか。そして、そんな姿勢で活動を続けているから、杉真理は今も過去の人になっていないんじゃないか。そんな気もする。

ソングライターとしても活躍している杉真理。彼の最大のヒット曲は何だろうと考えた時に、真っ先に「ウイスキーが、お好きでしょ」が思い浮かんだ。「バカンスはいつも雨」や「いとしのテラ」ではなく、さまざまなシンガーが歌っている「ウイスキーが、お好きでしょ」が出て来るのも、彼らしいのかなと思う。

2019.03.14
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カタリベ
1948年生まれ
前田祥丈
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