12月1日

松任谷由実のアルバムで一番 “冬” を感じる「NO SIDE」ラグビー経験者には染みる!

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ユーミン=冬というイメージを定着させた「NO SIDE」


1981年、「守ってあげたい」のヒットをきっかけに始まったと言われるのが「第2次ユーミンブーム」だが、その後もコンスタントにハイレベルなアルバムをリリース、どの作品も高セールスを記録し、ニューミュージック界の女王として揺るぎない存在になっていた。

1982年、1983年と年2枚ペースでアルバムをリリースしていたユーミンだが、1984年からは年1枚になる。しかもリリース時期が年末ということもあり、すっかり “ユーミン=冬” というイメージが定着したような気がする。そのきっかけとなったアルバムがその年の12月にリリースされた『NO SIDE』である。

ジャケットはゴールドをバックに、YとMを合体させたマークがセンターにあるだけのシンプルなもの。これはイギリスのデザイン・アートグループ “ヒプノシス” によるもの。ジャケットを初めて見たときに「えっ? これだけ? なんちゅう潔さ!」と思ったものだ。

数々の記録を残したアスリートたちに影響を受けた作品


前作『VOYAGER』が全体的にスペイシーでクールなイメージだったのに対し、こちらはヒューマニスティックで温かみのある感じがした。テーマは “WATCH ME”。「元気を出すためには本当に走っている人間を見ろ、私も走るから、っていう意識が溢れてたんじゃないかな」と後にご本人が語っている。リリースされた1984年はロサンゼルス・オリンピックが開催された年でもあり、ユーミンも数々の記録を残したアスリートたちに影響を受けたのかもしれない。

アルバムは静かなイントロから始まり、サビにつれて壮大に展開する「SALAAM MOUSSON SALAAM AFRIQUE」で幕を開ける。ユーミンは歌詞を書いていたある雨の日に、窓についた雨粒たちをずっと見つめていたことがきっかけでこの曲を書き上げたと、数年後のコンサートのMCで語っていた。アフリカの壮大な自然を歌ったこの曲、ユーミンは雨粒の輝きから果てしなく広がる大地が見えたのだろうか。

タイトルチューンでもある「ノーサイド」は、麗美に提供した曲のセルフカバー。発表当時から人気があり、2013年に旧国立競技場で行われたラグビーの試合(早稲田 VS 明治大)終了後のセレモニーで歌われるなど、ユーミンファン以外にも認知度の高い作品だったが、より認知度を上げたのは、ワールドカップ日本代表の前で歌った2019年のNHK紅白歌合戦だろう。キックがゴールを逸れたことで試合に負けてしまった男性と、それを見守る女性の情景を描いた曲だが、失敗を繰り返しながら生きてきたサラリーマンなどは、これを人生の応援歌として捉える人も多いのではないだろうか。



「DOWNTOWN BOY」は「Uptown Girl」のアンサーソング?


「DOWNTOWN BOY」は山の手で暮らす彼女と下町で暮らす彼氏との格差恋物語。ビリー・ジョエルの「Uptown Girl」のアンサーソングなのかもしれない。残念ながら結果的に2人は別れてしまうのだが、「今度はあきらめないでね」というフレーズから察するに、彼氏はナイーブでピュアだったからこそ自ら身を引いたのかもしれない。この曲は当時、富士フイルムのビデオテープのCMに使われていた。歌いながら髪型と着物がクルクルと変わっていく姿がとても美しくて印象的だった。

「BLIZZARD」は、映画『私をスキーに連れてって』で使われたことから世間でもよく知られている。毎年恒例の苗場プリンスホテルのコンサートでもお約束のナンバー。ライトを浴びながらこの曲を歌うユーミンは実に神々しい。サビでは両手を上げて左右に振る振り付けがあるのだか、「私の曲の中で唯一ファンに振り付けを許してる曲」なんてことを言っていたこともある。「自分でスキーを滑るようになったからこそ書けた曲。今なら “サーフ天国、スキー天国” みたいな曲は書かない」とラジオで話していた記憶がある。

「一緒に暮らそう」は、恋人と2人で来ていたデパートで、急に「一緒に暮らそう!」と彼女からプロポーズするというシチュエーション。彼氏が驚いてるのは「一緒に住むのはまだ早い」ということよりも「まさか彼女からそんな言葉が出るなんて!」ということだったのかな?と思ったり。「(プロボーズしたのは)ウィンドウの食器が素敵だったせいじゃない」というところがかわいい。聴いてるだけでとてもハッピーになれる曲。1986年に日本テレビで放送された音楽番組『Merry X'mas Show』でも披露された。

ライブで披露されると超盛り上がる「破れた恋の繕し方教えます」


「破れた恋の繕し方教えます」は、おまじないが好きな人にはたまらないタイトル。シンセサイザーとルイス・ジョンソンのシャープなベースが絡み合うサウンドに乗せて繰り広げられるのはまさに黒魔術。バケツに月を映して指でまぜながら呪文唱えたり、彼が脱ぎ捨てたシャツを100回きざんで媚薬をかけたりと、情念の炎を燃やしまくるような行為の数々はちょっと怖い。「それでも効かないときは永遠に恋はできなくなる」と言われても、彼をもう一度振り向かせたいほどの恋だったのだろうか。こんなおどろおどろしい内容ではあるが、ライブで披露されると超盛り上がるナンバーでもある。

忘れかけた頃にかかってきた別れた彼からの電話に、戸惑いと少しの嬉しさが交差する「午前4時の電話」は、ライトなアレンジが既に吹っ切れている彼女の心情を表しているようで面白い。曲中の「Who are you?」というウィスパーは、当時ユーミンが「オーシャン・ブルー」という曲を提供した稲垣潤一。

「木枯らしのダイアリー」は、「午前4時の電話」とは真反対。過去の日記を読み返しながら、彼のことがなかなか忘れられない女心の未練を歌った曲。「一日きままに街を歩く 想い出と腕をくみ」という歌詞がとても切ない。ゆったりとしたアレンジと美しいコーラスワークが、冬の情景を見事に表している。

「SHANGRILAをめざせ」は、アルバムのテーマである “WATCH ME” が歌詞に織り込まれており、「目をそらさずに」「そこから抜け出して」「ついておいで」「命つきる前に」「私と一緒に見つけよう」など、当時のユーミンとしては珍しい、数々の力強いかつストレートなメッセージが印象的。後にロシアのアーティスティックサーカスとコラボレーションしたショー「YUMING SPECTACLE SHANGRILA」(1999年、2003年、2007年)でも披露された。

ユーミンのアルバムの中では一番 “冬” を感じることができる作品


ラストチューン「〜ノーサイド・夏〜 空耳のホイッスル 」は、”続・ノーサイド” ともいえる。「ノーサイド」が歌われた2013年の早明戦終了後のセレモニーでは、この曲の歌詞がユーミンによって朗読された。若かりし頃の練習の辛さや仲間との絆を振り返りながらひとり佇む老人の姿… ラグビー経験者には「ノーサイド」以上に染みることだろう。なぜなら、高校の頃の体育の授業でしかラグビーをしたことがない私でさえ、この歌詞にはグッとくるのだから…。そんな切なさを残しながらアルバムは幕を閉じる。

このアルバムはオリコンLPチャートで初登場1位を獲得。1985年の年間チャートでも6位を記録している。そして本作以降、ユーミンのアルバムリリースは年末商戦として、毎年怒涛のプロモーションが繰り広げられることになっていく。ユーミンのアルバムの中では一番 “冬” を感じることができる作品だと思うのだが、みなさんはどう感じるだろう。

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2023.12.01
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カタリベ
1966年生まれ
綾小路ししゃも
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