このたび4月22日、
東京新橋に『Re:minder stand RADIO(レイディオ)』がオープンいたしました! 広さ7坪、席数15席の小さな BAR です。音楽の楽しさを伝えていける場にできればと思い、RADIOと命名しました。
まだまだスタートを切ったばかりの実験店舗風ではありますが、今後は、テーマに沿ったプレイリストを募って店内でオンエアしたり、Re:minder との連動イベントを行ったりと、みんなで好きな音楽を持ち寄って楽しむ企画も盛り込んでまいります。是非ご参加ください!
さて、店名の RADIO について、皆さまにとって、ラジオとはどういう存在だったでしょう。
私の実家には、昭和40年代前半の産物と思われる東芝製の黒いラジオがありました。今なお現役、食卓で鳴り続けるそのラジオについては、両親の夫婦ゲンカの際、母親の口上によく登場しました。
「お父さんはねぇ、結婚する時、ラジオとドライヤーしか持って来んかったんよ。もう、びっくりしたばい」
今となれば笑い話ですが、新婚当時、まだ20代でスカンピンだった父親にとっては、何にも勝る必需品だったのでしょう。
そして、蛙の子は蛙、中学に上がる頃から、そのラジオは、私にとっての大切な存在となりました。
80年代初頭といえば、TV では音楽番組が花盛り! ゴールデンタイムのお茶の間では、旬のヒット曲が1週間に何度も、目に耳に飛び込んできます。また、『ベストヒットUSA』の放送開始によって、洋楽ヒットチャートも身近なものとなり、斬新なビデオクリップが台頭していったのもこの頃でした。
81年、アメリカの音楽専門チャンネル MTV の発足時、最初にオンエアされたミュージックビデオが、バグルスの「ラジオ・スターの悲劇」というのもオシャレな皮肉。数々のスターを生み出したラジオへの敬意と時代観のベストマッチですね。
そんな流れの中でも、私の夜更かしの友となったのは、父親の古いラジオ。TV のような華やかさはないものの、そこには、むしろ深淵ともいえる世界が広がっていました。
思い出のエピソードとともに流れる誰かのリクエスト曲。好きなアーティストが紹介するルーツミュージック。自分が生まれる前のヒット曲や、シングルカットされていない隠れた名曲。知らない言葉、知らないリズムによる遠い外国の曲… 。
それらはプロモーションありきの選曲ではなく、どこか人の体温を感じさせるストーリーに基づいた編成で、ヒットチャートに捕らわれない音楽の楽しみ方を教えてくれました。
そして昭和のラジオ独特の、パーソナリティーのお喋りも個性的で強烈。ハガキ職人と呼ばれるリスナーからの投稿も、放送作家を上回るほどの冴え具合で、TV ではとても放送できない言葉と笑いの自由区がそこにはありました。今思えば参加型メディアのハシリだったのでしょうか。
ラジオを通じて、人知れず感動の1曲に出逢えたり、真夜中に笑い転げたり、大人の世界を垣間見たり… 。そうして、家族や友達との時間とは違う、少し背伸びをした秘密のテリトリーを手に入れた気分になったものです。深夜、眠気が訪れるまでの自分だけの時間。それは、大人になっていく上で、なくてはならないひと時でした。
My only friend through teenage nights
10代の頃、お前だけが深夜の友達だった
And everything I had to know
知らなきゃいけないことは
I heard it on my radio
全部ラジオが教えてくれた
まさにこの歌詞と同じ思い! 84年のクイーンのヒット曲「レディオ・ガ・ガ」です。TVに人気を奪われつつあったラジオへの賛歌であると同時に、“You’ve yet to have your finest hour (お前はまだまだ終わっちゃいない)”の一節では、第1次黄金期を過ぎた自分たちを鼓舞する意味もあったのではと思います。
今や音楽は、配信サブスクリプションサービスが主流となり、好きな時、好きな場所で聴きたい曲を聴けるようになってきました。1曲との出逢いがとても貴重で、ときめきに溢れていた頃。自分の大好きな曲が電波から舞い降りるのを心待ちにした時代は、すでに遠い昔。それでも今なお、知らなかった名曲と出逢ったときの喜びに変わりはありません。
ここに、Re:minder stand RADIOからのご挨拶に代えて、ラジオに因んだ邦楽のプレイリストを作成いたしました。1曲でも、どなたかのお気に入りとなってくれると嬉しいです。
■ サザンオールスターズ / お願いD.J.(1979)
■ 佐野元春 / WILD HEARTS - 冒険者たち -(1986)
■ JUDY AND MARY / RADIO(1994)
■ RCサクセション / トランジスタ・ラジオ(1980)
■ 世良公則 / ストーンズが聞こえた街(1988)
■ 浜田省吾 / 初恋(2005)
■ 奥田民生 / サウンド・オブ・ミュージック(2004)
■ 大滝詠一 / Happy Endで始めよう(1997)
■ EPO / ポップ・ミュージック 2nd(1981)
■ さだまさし / Once Upon A Time(1986)
■ アン・ルイス / 甘い予感(1977)
■ アリス / さよならD.J.(1987)
■ 井上陽水 / 8月の休暇(1980)
■ 渡辺美里 / 泣いちゃいそうだよ(1992)
■ 徳永英明 / 壊れかけのRadio(1990)
■ 尾崎亜美 / 伝説の少女(1992)
■ 杏里 / D.J. I LOVE YOU(1988)
■ 山崎まさよし / 低気圧ボーイ(1999)
■ 井上陽水 / 青い闇の警告(1978)
■ 斉藤和義 / 誰かの冬の歌(2008)
■ 忌野清志郎 / オーティスが教えてくれた(2006)
■ 松任谷由実 / Valentine’s RADIO(1989)
■ 桑田佳祐 / 月光の聖者達(ミスター・ムーンライト)(2011)
2019.05.10