海外アーティストの国内盤に付けられる邦題は、しばし議論の的となるが、担当者が開き直って付けたようなフランク・ザッパのアルバム群は別格として、『女の泪はワザモンだ!!』という邦題のインパクトに勝るものはそうそうないと思う。
言うまでもなく、デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズ、1982年リリースの2ndアルバム『Too-Rye-Ay』にあたえられた邦題だ。
この年の夏、同アルバムからのシングル「カモン・アイリーン」がイギリスで大ヒット。勢いを逃すな!とばかりに、秋にはこのタイトルで日本フォノグラムから国内盤もリリースされる。それはUKロックにハマっていた、当時高校一年生の筆者の熱に冷や水を浴びせる、あまりに破壊的な邦題だった。ナミダの演歌的な漢字に、業界用語的なワザモンって……。
これだけならまだしもフォノグラムさんは「カモン・アイリーン」のシングルレコードに「マイッタなあ~」という弛緩しまくりのキャッコピーを付けていた。土曜深夜のラジオ日本『全米トップ40』『全英トップ20』を聴いていると、合間にこのシングルのCMが流れ、その度に「マイッタなあ~」という脱力フレーズが挟まれる。マイッタのは、聴いているこっちですよ……。
この時点で日本では売れなかったアルバム&シングルも、翌年の春に全米で大ヒットし、『ベストヒットUSA』でビデオクリップがガンガン流れるや俄然、注目されるようになり、日本中に “この邦題はナンだ!?” という疑問を広げ、洋楽好きの若き魂の反逆者たちを怒らせることになる。
フォノグラムさんの邦題伝説は、他のレコードにも多く見られるが、それはまた別の機会に。ともかく、シンセ・サウンドが主流の当時の洋楽シーンで、これほど生音を魅力的に響かせたバンドはいなかった。ソウルやケルト音楽の面白さを教えてくれたデキシーズ、今でも大好きです。
2016.02.16
YouTube / lobo solitario
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