そろそろ、クリスマスカードを出す時期だ。近年では「Merry Christmas」と書かずに、「Happy Holidays」とか「Season's Greetings」とする方が、特に米国では一般的らしい。
それには、クリスマスと新年の挨拶を兼ねているという合理的な理由もあるだろう。だが、それ以上に米国のような多民族多宗教な国家(合衆国憲法では信教の自由が保障されている)においては、どんな宗教でも受け入れられるフレーズを使う方が無難だし、それがマナーと言うことではないだろうか。
個人的には、大統領就任式で新大統領が聖書に手を置いて宣誓する姿を見ると矛盾を感じなくもないが、それはともかく、全ての人がクリスマスを祝いたいと思っている訳ではないというのは、恐らく事実なのだと思う。
そんな中、ビルボードのウェブサイトで「Christmas Music for People Who Hate Christmas Music」という記事を見つけた。要するに「クリスマスミュージックを嫌いな人のためのクリスマスミュージック」ということで、全22曲が紹介されている。
このうち1980年代にリリースされたのは、ザ・ポーグス「ニューヨークの夢(Fairytale of New York)」、プリンス「アナザー・ロンリー・クリスマス」、ザ・ウェイトレスィズ「クリスマス・ラッピング」の3曲だが、今年取り上げるべきは何と言ってもプリンスだろう。
このクリスマスソングは「ダイ・フォー・ユー(I Would Die 4 U)」のB面としてリリースされた、おそらく彼の唯一のクリスマスソングだが、そもそもこの曲をクリスマスソングと呼んでいいものか。
シャンシャンシャンという鈴の音も聖歌隊風コーラスもなく、深くエコーのかかったボーカルとシンプルなバックだけで構成されたこの曲に、いわゆるクリスマスっぽさはない。
この曲でプリンスはこんな風に歌っている。
Every Christmas night for seven years now
I drink banana daiquiris till I'm blind
12月25日に亡くなった恋人への想いを綴った、とても内向的で感傷的な歌詞だ。
そして、彼のエモーショナルなボーカルがその “悲しみ” をより深めていて、ある意味でとてもプリンスっぽい、彼の隠れた名曲と言ってもいいのではないかと思う。
えっ?
こんな暗い曲でクリスマスを迎えたくない? こりゃまた失礼しました。
Another Lonely Christmas
Prince and The Revolution
作詞・作曲・プロデュース:Prince
脚注:
「Fairytale of New York」(87年12月26日 全英2位)
「Christmas Wrapping」(82年12月25日 全英45位)
2016.12.15
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