高校生の時、西武池袋線と有楽町線を乗り継いで通学していたのだが、池袋での乗換の際によく家電製品売り場に立ち寄ったものだ。目的は、1981年にパイオニアから家庭用に発売されたばかりのレーザーディスクの音楽映像を観ること。音楽を “観る” のが新しかった時代、コンテンツは全く充実していなかったが、それでも十分に魅力的だったのだ。
当時、高中正義『TAKANAKA WORLD』、RCサクセション『RC SUCCESSION AT BUDOHKAN』、サイモン&ガーファンクル『セントラルパーク・コンサート』などが一日中流れていた中で、僕たちのハートを奪ったのはオリビア・ニュートン=ジョンの『フィジカル(虹色の扉)』だった。
彼女が美人だったということはもちろんあるが、それより各曲がストーリーを持ったイメージビデオ風になっていたのが新しかったし、観ていて楽しかったのだ。その中にあって、シングル曲「フィジカル」は、レオタード姿でエアロビクスをくねくね踊るといういささか滑稽なものだった。それでも、少なくとも日本では彼女の新しい “健康的な” 魅力が引き出されたと評価されていたし、僕たちもそう思っていた。
ところが、それから何年も経って英語が多少話せるようになった頃、改めて歌詞をちゃんと聞いてその過激さに驚いた。なにしろオリビアが「Let me hear your body talk」と連呼しているのだ。後で知ったことだが、当時、海外の一部の地域では放送が自粛されるほどだったそうだ。彼女自身もインタビューの中で、歌詞が直接的すぎるのでエアロビダンスで薄めたと言ったそうな。
Physical / Olivia Newton-John
作詞・作曲:Steve Kipner, Terry Shaddick
プロデュース:John Farrar
発売:1981年9月28日(81年11月21日1位)
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2016.02.06