7月21日

1984年の伊藤銀次「BEAT CITY」 L.A.レコーディング事情 ~ その3

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photo:SonyMusic  

『1984年の伊藤銀次「BEAT CITY」 L.A.レコーディング事情 ~ その2』からのつづき

鍵はアメリカ人ミュージシャンとのコミニュケーション!


1984年のアルバム「BEAT CITY」は銀次のソロアルバムで初の海外レコーディング。いつもいっしょに演奏してくれてる日本のミュージシャンとは違って、初めて出会うアメリカ人のミュージシャンたちとのコミニュケーションがうまくとれるかどうかが鍵だった。

それまで1980年の沢田研二さんの『ストリッパー』のレコーディングでは、ポール・キャラックやビル・ブレムナー、そしてアン・ルイスさんの「LUV-YA」ではリー・ハート&ロールアップスと一緒にレコーディングしたことがあったから、外国人とのセッションは初めてではなかったけれど、シンセサイザーのサウンド作りや今回シーケンサーを使って打ち込みもするので、当時の僕の片腕的存在の国吉良一さん、そして全体のサウンドを会話に苦労せずに任せられるエンジニアの井口進さんの二人にお願いしてロスまで同行していただくことにして万全を期した。

オリビアの「フィジカル」でプレイしたドラマー、カルロス・ベガ


いよいよレコーディング初日。今回のレコーディングでのすべてのミュージシャンの手配と通訳をしてくださるのは現地の女性コーディネーターのロビンさん。やさしい人だったけどビシッと仕事のできるしっかり者のキャリア・ウーマンでした。おかげでセッションは何の問題もなくスムーズに運んだ。スタジオで彼女と挨拶をしていると、そこへスタジオに次々とミュージシャンがやってきた。

まずはドラマーのカルロス・ベガ。ラテン系の人だけあって、濃い口髭にギョロギョロしたするどい目つきに、ちょっと僕は緊張して、自己紹介の時に、社交辞令の気持ちをこめて「あなたのオリビア(・ニュートン=ジョン)の「フィジカル」でのプレイが好きです」と言うと、彼は笑いながら「あれからステージでも何万回と演奏したからもう飽きちゃったよ」の一言で打ち解けることができた。きっぱりとして陽気なナイス・ガイ!!

ベースのボブ・グローブ、そしてギターのマーク・ゴールデンバーグ


反対にベースのボブ・グローブは、どちらかというと寡黙。おだやかなたたずまいがまさにベーシストらしい。初夏のロスはすでに暑いくらいで、そんな彼が「クルマのエアコンがいかれてまいったよ」と言ってたのを今でも思い出す。

そして、唯一すでに面識のあったのが、ギターのマーク・ゴールデンバーグ。1980年代に彼がクリトーンズとして来日した時に、そのライヴを佐野元春と共に観たあと、音専誌の取材でインタビューしたことがあった。

スタジオの入り口で挨拶をしながらその話をすると彼は、まさかの「ああ覚えているよ。銀次!」のうれしいひと言。ほんとにそうかは定かではないが、ひとまず喜んでいるとマークが、「ところで今日は誰がキーボードを弾くんだい?」と尋ねてきた。もちろん国吉さんがプレイするので、そのことを説明すると彼はこう言った。「ああ、それは残念だね。いまちょうど僕のクルマにヤマハのDX-7が載ってるから、もし良ければ僕がキーボードもって思ったんだ」

そこで僕は誰かから聞いた、渡辺貞夫さんのバックバンドをやってたときに、リチャード・ティーが自分の作曲した曲の入ったカセットテープを貞夫さんに手渡して、もし気に入ったら使ってくれないかと自らプレゼンしていたという話を思い出した。とかく日本人は控えめで、自らこういうアピールをしないものだが、さすが音楽がしっかりビジネスになっているアメリカ。なるほどね、とシンプルに納得のいった行動だった。

タイムコードが消えた! レコーディングを救った国吉良一のプレイ


メンツも揃って、「さあ、それでは行ってみるか!」と張り切ったところで、なんだかエンジニアの井口さんが困った顔に。なんとテープレコーダーとシンセが同期しないのだ。テープを回すと、テープに録音された、“ガリガリガリガリ…” という音のタイムコードに制御されてシンセが自動的に走るのだが、なんとそのタイムコードが消えてなくなっているのだ。

そこでスタジオのアシスタント・エンジニアに尋ねると、なんとタイムコードのことを知らなくて、前日テープを僕らから預かったあと、ただのノイズだと思ってご丁寧に彼がぜ~~んぶ消してしまったというのだ。ガビ~~ン!!

一瞬目の前がまっくらに。タイムコードがなければ打ち込みは不可能だ。今回イメージしていたロスでの80年代型サウンドの夢が音を立てて崩れ落ちたかと思われたそのとき、国吉さんの笑顔でのひと言が僕を救ってくれたよ。

「銀次、だいじょうぶ。僕が手で弾くから」

「Summer In The City」などの一聴して打ち込みに聞こえるアルバム『BEAT CITY』のサウンドは、なんと国吉さんの手弾きによるフレーズなのだ。打ち込みはかなわかったけれど、70年代的レイドバックしたL.A.サウンドにならずに済んだのは、すべて国吉さんのデジタルなプレイのおかげ。サンキュー!! 国吉さん!!

その国吉さんのひと言で、なんとかレコーディングがスタート!! この続きは、また次回のココロだ!!

To be continued

『1984年の伊藤銀次「BEAT CITY」 L.A.レコーディング事情 ~ その4』につづく

2020.08.24
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カタリベ
1950年生まれ
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