2月23日

中森明菜に見いだしたハードロック魂!攻めのロックナンバー「1/2の神話」

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photo:Warner Music Japan  

ギターサウンドがフューチャー、松田聖子に感じたロックテイスト


小学校の高学年で洋楽やロックに目覚めた僕だったけど、人並みに昭和アイドルへの興味も抱いていた。思春期を迎えて最初に好きになった女性アイドルは、ご多分にもれず松田聖子で、アイドル雑誌に掲載されたグラビアを切り抜き、クリアファイルに入れてしげしげと眺めたり、学校で友達同士見せ合ったりした。

可愛いアイドル達の姿を見るのは好きでも、彼女達が歌う楽曲の多くには、正直それほど魅力を感じなかった。というのも、洋楽やロックのような激しい音楽を聴き始めたことで、今となっては笑い話だが、歌謡曲を聴くこと自体が何だか格好悪い… と子供心に勘違いしていたからだ。

僕はアイドルを聴く理由づけとして、次第にロック度の高い楽曲を探すようになっていた。アイドルのロック路線といえば、山口百恵の「ロックンロール・ウィドウ」あたりが思い浮かぶけど、自分から見れば、ひと世代上のアイドルの歌謡ロックンロールは、同曲の歌詞ではないが「何かが違うわ~」と、興味の対象になり得なかった。

そんな中で、僕の心を捉えたのが松田聖子の「チェリーブラッサム」だった。今剛が奏でるディストーションを掛けたギターサウンドがフューチャーされており、これまでの聖子の楽曲とは明らかに違う “ロックテイスト” が感じ取れ、すぐさまお気に入りの1曲となった。

その時の音楽知識では、この曲がロックというより、ジェイ・グレイドンとエアプレイのオマージュ的なアレンジで創られたことを知る由もなかった。けれども次曲「夏の扉」も含めて、西海岸のAOR、ハードポップ風味の爽快な曲調は、聖子の突き抜けるような天性の歌声と、清純で明るいアイドルの王道をいくイメージにピタリとマッチしていた。ルックスだけでなく楽曲もお気に入りとなった僕は、すっかり聖子派を自認していたが、それは程なくして覆される。

なぜなら翌年、僕が中2を迎える頃に中森明菜がデビューしたからだった。

アイドル楽曲らしからぬ確かなロックテイスト「少女A」奏でたのは矢島賢


中森明菜を強く意識したのは、デビュー曲「スローモーション」ではなく、多くの人達同様に「少女A」からだった。テレビの歌番組や雑誌のグラビアで見た明菜は、必要以上に笑顔を振り撒かない雰囲気を醸し出しており、山口百恵の流れを汲むアイドルなのは子供心にも理解できた。

ちょうど中二病真っ只中の僕にとっては、アイドルチックな明るさを前面に押し出した、ぶりっ子路線の聖子よりも、どこか影を感じさせる憂いを秘めた、ツッパリ美少女路線の明菜の方が魅力的に映り、心惹かれていった。

魅力的だったのはルックスだけではない。「ロックンロール・ウィドウ」のギタリスト矢島賢が奏でる、印象的なイントロでのリードギターのリフレインは、アイドルの楽曲らしからぬ確かなロックテイストを放散していた。その歌声や歌唱も、やはり百恵を彷彿とさせる憂いを秘めた情感豊かなもので、歌詞のインパクトもさることながら、ステレオタイプの清純派アイドルとは真逆の不良っぽさを、見事なバランスで表現していたのだ。

この頃の松田聖子といえば、ロック好きには少々退屈に聴こえたスローバラード中心の路線に舵を切っており、自分の中では、余計に聖子派から明菜派への傾倒が一気に加速していった。

もはや歌謡ハードロック! 想像をはるかに超えた中森明菜「1/2の神話」


待ち焦がれた明菜の新曲は、「スローモーション」以上に静かなバラード「セカンド・ラブ」だった。叙情的なメロディと物哀しいアレンジは美しく、確かな歌唱力で情感たっぷりに歌い上げる明菜の歌声に魅了された。けれども、明菜には再びロック調の楽曲を期待せずにはいられなかった。それまで3曲のシングルは、静→動→静と繰り返した流れできており、次はきっと “動” のロックナンバーが来るはず。それは中学生の僕でも、何となく想像できた。

自分の中での予感は、いい意味で裏切られることになる。大沢誉志幸のペンによる新曲「1/2の神話」は、僕の想像をはるかに超えた “攻めのロックナンバー” に仕上がっていたのだ。

ディストーションを効かせたリードギターから入る流れは、「少女A」の続編的なニュアンスを否が応でも感じさせる。ギターの歪みやバランスはさらに大きくなり、何より楽曲のBPMは歌謡曲らしからぬ速さだ。

歌のバックではロックらしいパワーコードのリフが刻まれ、中間部に歌謡曲としては長いギターソロ、エンディングにもオブリガードが繰り返され、ギター三昧のアレンジで駆け抜けていく。

当時の昭和アイドル歌謡で、最もロック成分が高めの楽曲は、もはや “歌謡ハードロック” といっても過言ではないテイストを醸し出していた。

常識を覆す明菜流ハードロック、強みの芳醇な声質を駆使


並みのアイドル歌手なら、ただメロディを乗せるだけで呑まれてしまいそうな激しい曲調を、明菜はブレることのない世界観で表現していく。ハードロックでは異例の中低音域で朗々歌うAメロを経て、Bメロではハリのある高音域と中音域巧みに使い分ける。そして、「♪ いい加減にしてえ~!」の決めゼリフが炸裂するサビを、パンチの効いた伸びのある歌唱で力強く表現しながら、一転してサビ締めのヴァースでは台詞回しのように切なげな歌唱でドキッとさセる。そんなメリハリの効いたヴォーカルが、終始絡みつく激しいギターと見事にマッチしているのだ。

ハードロックでは、バックの音圧に埋もれないハイトーンヴォイスでの歌唱が基本だ。明菜はその常識を覆すように、自らの強みである芳醇な声質の中低音域をも駆使して、明菜流のハードロックを見事に表現した。

のちに明菜自身は、「少女A」のようなロック路線に乗り気ではなかったと告白しており、よりハードな「1/2の神話」は、尚更そうだったのかもしれない。それでも迷いを吹っ切ったかのように、自らの歌で難しいハードロックを表現してみせたことは、トップアイドル明菜にとって、シンガーとしての可能性をさらに広げた意味合いは、大きかったに違いない。

ギター専門誌でまさかの掲載!「1/2の神話」の楽譜


あるTV番組での「1/2の神話」の歌唱時には、中森明菜は金色の刺繍が入った漆黒の衣装を身にまとい、そのヴィジュアルも可愛いだけのアイドルとは一線を画すロックなイメージを見事に体現していた。そんな姿を目で追い、耳で歌を堪能しつつ、ハードなギターにも同時に耳を奪われていた。

当時エレキギターを弾くのに夢中だった僕は、いつしか「1/2の神話」を弾いてみたいと思うようになった。そんな気持ちを見透かすようなことが起きた。毎月買っていた『ヤングギター』誌に、ナイト・レンジャー「ドント・テル・ミー・ユー・ラヴ・ミー」 エリック・クラプトン、キッスらと共に、何と「1/2の神話」のギタータブ譜が掲載されているではないか! 当時のギター専門誌は洋楽やロック至上主義で、歌謡曲を扱うのはまずあり得ず、アイドルの楽曲が取り上げられるのは異例だった。

誌面を見るなり嬉しくなった僕は、早速にギターを手に取り、練習に励んだ。ニュアンスはともかく、単純に音を追う作業はそれほど難しくなく、明菜のバックで弾くギタリスト気分になれた。今思えば、当時洋楽のHM/HR好きの中にも、“アイドルなら明菜派” が、少なからずいたのかもしれない。

そんな明菜のキャリアの中で、最もハードロックテイストを感じる楽曲と言えば、「DESIRE -情熱-」のカップリング曲「LA BOHÈME」だ。メインのギターリフを聴くだけで、もはやヘヴィメタルと言いたくなるパワフルな曲調の中で、明菜のヴォーカルが生き生きと自在に躍動する。その親和性の高さを聴くにつけ、明菜による1枚丸ごとハードロック、強いてはヘヴィメタル風のアルバムを一度聴いてみたかった… と、今でも強く夢見てしまう。

「1/2の神話」をハードロックに染め上げたギタリストは大平彰彦?


ここからは余談だが、「1/2の神話」をハードロックに染め上げた、あの印象的なギターは一体誰が弾いているのか?―― 「少女A」の矢島賢、「北ウイング」の松原正樹のような正解がどこにも書かれていない。スタジオ系でも前述のギタリスト達とは明らかにテイストの違う、特徴的なギターフレーズと音色に手がかりはないだろうか。

ネット上でもそうした捜索がされており、ある方が “大平彰彦” というギタリストの名を挙げていた。“たんぽぽ大平” の愛称を持つ大平彰彦は、初期チャゲ&飛鳥のバックバンド、火魔神のギタリストとして知られている。ギタリストCharのボーヤとしてのキャリアもあるらしい。

当時、チャゲアスが歌番組に出演時し、バックバンドと共に生演奏している映像を動画サイト上で確認ができるが、それを見聴きして驚いた。粘り気のある独特なリードギターの音色、特徴的な泣きのフレージングの組み立て、決められたフレーズをなぞるだけでない主張の激しさなど、「1/2の神話」で聴けるギターにそっくりなのだ。

考えてみれば、チャゲアスの当時のレコード会社はワーナー・パイオニアで、中森明菜も同じワーナーだ。ちなみに「少女A」を残した矢島賢は、同時期のチャゲアスの作品にも関わっている。レーベルとスタジオミュージシャンの繋がりが深い時代、矢島氏との関係から大平氏が「1/2の神話」のレコーディングに参加した、と推測できないだろうか。

大平氏は残念ながら、すでにお亡くなりになっているので、ご本人から真相を知る由も無い。ちなみに大平氏のボーヤをやっていたのが、B’zの松本孝弘というのだから、これもまた興味深いつながりだ。のちに様々女性シンガーをサポートして、ハードロック化推進の一助になったのは、大平氏から学んだDNAゆえなのかもしれない。



2021.05.04
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カタリベ
1968年生まれ
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