2026年 7月22日

未唯mie × T-GROOVE【50周年対談 後編】ディスコクイーンが挑む現在進行形の「Anti Limit」

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現在もアーティストとして自身の音楽をクリエイトしながら、ピンク・レディーの楽曲も様々なアプローチで歌い続けている未唯mie。今年(2026年)の7月22日には、ピンク・レディーのデビュー50周年とソロ活動45周年を記念した新曲「Anti Limit」をリリースした。サウンドプロデュースを担ったのは、日本が世界に誇るソウル / ディスコ・クリエイターのT-GROOVEだ。

そんな未唯mieとT-GROOVEによる50周年対談。後編では、NBCの冠番組『ピンク・レディー・アンド・ジェフ』をはじめとするアメリカでの活動から、未唯mieがソロ活動を通してダンスミュージックへと回帰していった軌跡を辿る。そして2人がタッグを組んだ新曲「Anti Limit」は、どのようにして生まれたのか。さらに、50年を経ても色褪せないピンク・レディーの楽曲を次の世代へ繋ぐ、未唯mieの現在の思いにも迫る。

ザ・ビーチ・ボーイズが参加した「波乗りパイレーツ」


ーー 後編では、アメリカ進出後のピンク・レディーについてお話しいただきたいと思います。

T-GROOVE:アメリカで「Kiss In The Dark」がリリースされた1979年5月1日、日本ではヴィレッジ・ピープルの「イン・ザ・ネイビー」をカバーした「ピンク・タイフーン(In The Navy)」がリリースされています。その次が「波乗りパイレーツ」。この曲はハワイでレコーディングされ、ザ・ビーチ・ボーイズが演奏とバックコーラスで参加しています。

未唯mie:そうそう、ハワイでした。バスでレコーディングすると聞いていて、“えーっ!” ってびっくりしたんですけど、実際に行ってみたら、本当にバスの中がレコーディング・スタジオになっていました。

T-GROOVE:都倉先生は「渚のシンドバッド」の頃からビーチ・ボーイズのようなウエストコーストのサウンドを採り入れたかったとか。それにしても、よくビーチ・ボーイズを捕まえましたね。



「ピンク・レディー・アンド・ジェフ」で世界的アーティストと共演


未唯mie:あの頃は忙しすぎて、いろいろな感覚が麻痺していたのが、パフォーマンスにはプラスに転じたと思っています。アメリカ進出後、NBC(*アメリカ3大ネットワークのひとつ)で放送されていた冠番組『ピンク・レディー・アンド・ジェフ』はゴールデンタイムの番組で、観客を入れての収録だったので、司会のジェフ・オルトマン(人気コメディアン)もかなり緊張しているんです。でも私たちは、仕事の規模が小さかろうが大きかろうが、数多くある仕事のひとつという感覚でした。世界的に有名な人たちがゲストとして出演してくれましたが、そういう感覚だったので、何の緊張もなかったんです。

T-GROOVE:『ピンク・レディー・アンド・ジェフ』にはブロンディも出ているんですよね。それに、ブラックミュージック界のトップアーティストだったテディ・ペンターグラスも出演しています。本当にすごい人たちと共演していますよね。

未唯mie:テディさんは “いいお兄ちゃん” という感じでしたよ。

未唯mieとドナ・サマーに共通するダンスミュージックへの回帰


T-GROOVE:「KISS IN THE DARK」でアメリカに進出し、冠番組も持ち、ピンク・レディーはアメリカの音楽シーンに果敢に挑んで実績を残していくわけですよね。そんな経験を経てソロデビューした未唯mieさんは、今も洋楽的なディスコサウンドやダンサブルなものがすごく似合いますよね。

未唯mie:ソロデビューの時は、阿木燿子さんと宇崎竜童さんのお2人と一緒に、ロックの方向に行こうってなりましたけど。

T-GROOVE:そこから3年後の1984年に「NEVER」でドカンといくわけですよね。この曲のオリジナルはダンスミュージックのヒット曲で、映画『フットルース』のサウンドトラック盤にも収録されていました。この流れが、ディスコクイーンとして人気を博したドナ・サマーと似ているんです。彼女も一度はディスコ路線を離れますが、1983年の「情熱物語」(She Works Hard for the Money)でダンスミュージックに回帰してヒットチャートに返り咲きます。ドナ・サマーと同じように、やはり未唯mieさんにはダンスミュージックが似合うんですよね。

未唯mie:私自身もダンスミュージックのほうが合っていると感じつつ、仲間たちと音作りを続けていきました。だけど、ロック方面に向かうこともあったし、レコード会社を移籍した時にはニューミュージック的な音楽をやってほしいとも言われました。それで何曲かやってみたんですが、“これは違う。自分自身が楽しくない” と思うようになって、契約途中でしたが辞めさせてもらいました。その時に “やっぱり私はダンスミュージックが歌いたい” とはっきりわかったんですね。そんな紆余曲折を経て、1995年にファンハウスからリリースしたのが「LOVE JAIL」でした。

T-GROOVE:未唯mieさんのソロ曲の中で僕が特に好きなのは「LOVE JAIL」なんです。この曲の根っこにあるのはクラブミュージックで、その雰囲気が未唯mieさんにバッチリとハマる。だから未唯mieさんと一緒に何かやりましょうとなった時に、もう “ディスコしかない!” となったわけです。

未唯mie:私もT-GROOVEさんがディスコサウンドを知り尽くしているから一緒にやりたかったし、仲良しになりたかったという気持ちもありました。

50周年の新曲「Anti Limit」はこうして生まれた


T-GROOVE:ピンク・レディーといえば「ペッパー警部」とか「UFO」とか、代表曲に思い入れがある人が多いと思います。だけど僕のピンク・レディーの入口は「マンデー・モナリザ・クラブ」でした。だから未唯mieさんと知り合った時から、絶対に「マンデー・モナリザ・クラブ」みたいな曲を一緒にやりたいと思っていたんです。最初にライブをご一緒した時も、ディスコサウンドを基盤とした1977年のライブアルバム『サマー・ファイア '77』を参考にしました。

未唯mie:その時のライブがすごく楽しかったし、面白かったから、“新曲を一緒に作ろうよ!” ってライブ中のMCで言ったんだよね。

T-GROOVE:そうでした。そのライブで、バーブラ・ストライサンドとドナ・サマーの「ノー・モア・ティアーズ」みたいな曲を作りたいという話にもなって。ライブの興奮の中で勢いに任せて言ってしまったんですが、その後、本当に新曲を作ってほしいという光栄なお話をいただきました。

未唯mie:それで私からも、“もうちょっとこういうのはどう? あんなのはどう?” って、いっぱい書き直してもらいました。そうやって出来上がった「Anti Limit」は50周年に相応しい、本当にカッコいい曲です。



「Anti Limit」を変えた未唯mieのアイデア


T-GROOVE:だけど、まさかこの「Anti Limit」がピンク・レディーの50周年のアニバーサリーにリリースされるとは!さらに、ソロ活動45周年を記念した東京国際フォーラムで行われるアニバーサリーコンサート『未唯mie DEBUT 50th & SOLO 45th Anniversary Celebration』のオープニング曲にもなると伺って、これは責任重大だなと思いましたよ。

未唯mie:最初に出来上がった時は、ちょっとしっとりした曲でしたよね。

T-GROOVE:コンサートのオープニング曲になると後から聞いたので、だったら壮大でカッコいい、アッパーな曲にしようと。そこから試行錯誤して、最終的にはサルソウルディスコやフィリーソウルのような雰囲気に仕上がりました。未唯mieさんからは “もっとテンポを上げた方がいい” とも言われて。

未唯mie:“もっとガッツリ行こうよ” とか、“浮遊した感じで終わるエンディングにしよう” とかね。

T-GROOVE:メロディやアレンジについても、未唯mieさんからいろいろなアイデアをいただきました。

未唯mie:共作って言っていいかどうかわからないけれど、私のアイデアをしっかり具体化してくれました。

T-GROOVE:どちらかといえば、未唯mieさんはプロデューサー的な立ち位置でもありましたね。それで完成した「Anti Limit」を聴いた時に、どことなく筒美京平先生っぽいものも感じたんです。

未唯mie:ピンク・レディーの解散が決まってから、解散までにソロシンガーとしていろいろトライさせてもらった時期があって、その中で京平先生にも2曲書いていただき、レコーディングしました。

T-GROOVE:制作中は筒美京平ワールドを意識していなかったので、完成した曲を聴いて、もしかしたら京平先生がひょこっと現れてくれたのかな、という不思議な感覚がありました。

未唯mie:私は、こういう方向性で行くんだったら、例えば “オブリガート(裏旋律)をもっと足してみて” とか、単純に自分が楽しいと思えることをどんどん伝えていったんです。その結果、ああいう仕上がりになったんだと思います。



ジェーン・スーの歌詞が「Anti Limit」を現在形にする


T-GROOVE:そこにさらにマジックが加わるんです。それがジェーン・スーさんの歌詞です。あの歌詞が届いた時は驚きました。

未唯mie:私も面白い歌詞を書いてくれたなと思って。どうやってこの歌詞を曲の中で料理しようかと考えていた時、T-GROOVEさんが “言葉が多すぎて、整理しないと曲に入らないですよ” って言いましたよね。だけど私は、いやいやちょっと待ってと。ひとつの音符に言葉を2つ入れることもできるかもしれないし、全部うまく詰め込めたら絶対に良い楽曲になる。実際に歌ってみたら分かるからって。それで私が歌ったものを聴いてもらおうと思っていたら、T-GROOVEさん自身が歌ってくれたんですよね。

T-GROOVE:恥ずかしながら歌わせていただきました。そうしたら、しっくりきましたね。あの言葉の多さって、最近のJ-POPによくありますよね。サウンドは70年代ディスコ風ですが、楽曲の根っこは現在の音楽シーンにあるんです。

未唯mie:歌詞については、ジェーン・スーさんがヒットチューンを意識して書いてくださいました。でも、これは音符通りに綺麗に収めてはダメだって思ったんです。だから、ワンセンテンスの途中に休符を入れたり、次のフレーズを跨いだり。昔だったら絶対にやらなかったと思うけれど、今はあえてそういう歌い方をするのが面白いんですよね。言葉の意味は少し分かりづらくなるけれど、たぶんジェーン・スーさんもそこを狙って書いてくださったんだと思います。

T-GROOVE:自分ひとりでは分からないこともあって、こうやってディスカッションすることで、自分の中に新しい価値観が生まれるんですよね。その結果、予定調和ではない、すごく面白い楽曲になりました。ピンク・レディーの “おもちゃ箱をひっくり返したような” というコンセプトの要素も入れることができたと思います。

未唯mie:今回の曲は、最後の最後まで、関わってくれたみんなが納得できる良いものにしたかったんです。“これで行こう!” と決めたレコーディング当日ですら、“ここのフレージングはどうだろう?” と話し合いましたね。ジェーン・スーさんもスタジオに来てくださって、“じゃあ、こういうフレーズにしたらどうですか” と言ってくれて、“それ、いいね” って。作詞家も作曲家もその場にいたので、最後まで一緒に修正しながら完成させました。

ピンク・レディーの名曲を次の世代へ繋ぐ


T-GROOVE:「Anti Limit」も、みんなが全力投球で意見を出し合いながら完成した曲です。ピンク・レディーの楽曲も、制作に関わった人たちの熱い思いが詰まっている。その熱量は、今回の制作にも通じるものがあると思います。

未唯mie:そういう背景で作られたあの頃の楽曲だからこそ、ある意味、今も進化し続けているんじゃないかと思うんですよね。若い人たちも面白がってくれて、そこから新しい聴き方や価値観が生まれていく。1970年代の楽曲であっても全然古くならないし、今の時代には逆に新鮮に聴こえるくらい。それを好きだと言ってくれる人たちがいることは、すごく光栄だし、嬉しいですね。

当時の曲は歌詞もメロディーも素晴らしくて、アレンジを変えることで、いろいろな伝え方ができるんです。だから私もソロシンガーとして、いろいろなアレンジで歌ってきました。“この曲はこういうことを伝えたかったんだ” と改めて感じてくださる方もいるし、私自身、“こんなに深い意味があったんだ” と気づいて涙が出たこともありました。そうした経験も含めて、ピンク・レディーの楽曲を次の世代に繋げていけたらと思っています。



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