朝丘雪路の代表作「ふり向いてもくれない」など全52作品を配信
1963年(昭和38年)に創立した日本クラウン(現:日本クラウン)からリリースされた昭和レトロな歌謡曲を復刻するプロジェクト『昭和歌謡復刻シリーズ』の第9弾の配信が7月22日からスタートした。歌謡曲がミュージックシーンの中心的存在だった昭和40〜50年代の作品に焦点をあて、配信にて復刻されているアーカイブ企画である。
今回配信されたのは、1966年の『第17回NHK紅白歌合戦』で歌われた朝丘雪路の代表作のひとつ「ふり向いてもくれない」、後に女優として活躍する篠ヒロコ(現:篠ひろ子)の歌手デビュー曲「水色の風」、和製プレスリーのキャッチフレーズでデビューし、「宇宙戦艦ヤマト」や「銀河鉄道999」などのアニメソングで多くのヒット曲を持つささきいさおが、佐々木功で活動していた頃の「ギターをひこうよ」など、女性歌手と男性歌手を織り混ぜての全52作品。YouTubeチャンネル『昭和レトロ 歌謡秘宝館』では全楽曲のオフィシャルオーディオ(公式試聴動画)が順次公開されている。
篠ひろ子の歌手デビュー曲「水色の風」
「涙をつれて / 愛の接続詞」を歌った牧れい子は、元東宝青春女優の牧れいとは別人の歌手。牧れいも東芝で牧麗子として歌手活動した後に牧れい子を名乗っていた時期があるため、非常に紛らわしいのだが。悶え声から入る「愛の接続詞」は言葉遊びも秀逸な必聴のフェロモン歌謡。ザ・ヴァイオレッツのコーラスといい、1975年の発売にしては妙に1960年代味がある。
第8弾で「さよならはイヤイヤ / 愛しても」が配信済みの日吉てる子、今回は遡って1968年の「涙みせたりするものか / 涙がほろほろ」 が配信になった。お座敷歌謡にマッチする艶っぽい歌声で和のフェロモンが炸裂する。
続いては、1964年から1966年にかけて出された岬エリのシングルを4枚。デビュー盤の「アジサイ物語」の作曲にクレジットされている “いづみゆたか” は、コロムビア専属だった市川昭介の別名義。同年に水前寺清子のデビュー曲として提供された「涙を抱いた渡り鳥」もいづみ名義の作品である。作詞の “結城隆麿” も星野哲郎の別名で、有田めぐむと共に使い分けていた。2枚目の「愚かなわたし」 は、二谷英明が主演した日活映画『夜霧の脱出』の挿入歌だった。
女優として名を馳せた篠ひろ子はテレビ番組のアシスタントから芸能活動をスタートさせ、いずみたくの事務所オールスタッフへ。歌手デビュー曲となったのが1968年10月に出された「水色の風」。当時は篠ヒロコ名義で活動していた。セカンドシングル「愛ってなあに」と共にいずみたく作曲。同曲は山上路夫の作詞で、そのカップリングとなった「愛の言葉を」 は、先日残念ながら訃報が届いた渋谷毅がアレンジを手がけている。クラウンからはシングル2枚のみ、その後1970年代はキングとビクターからリリースが続いた。
アニソン歌手ささきいさおの原点「ギターをひこうよ」
現在は “ささきいさお" として活躍している佐々木功はコロムビアでデビューし、1964年からはクラウンに移籍した。「ギターをひこうよ」はその1枚目で、水島哲作詞、たけだのりを作曲。水島哲は読売新聞文化部の記者だった安倍亮一のペンネーム。西郷輝彦「君だけを」や布施明「霧の摩周湖」などヒット曲が多数ある。2枚目の「旅路」も同じ作家陣による作品。この後、後藤久美子とのカップリングだった「ウェディング・ドレス」を出してからしばらく新曲が途絶えるが、1970年代にアニソン歌手として復活をとげるのだ。
船橋浩二や千葉のぼるはドメスティックな歌謡作品を歌った男性歌手。東京オリンピックの影響もあっただろうか、当時は “東京" をタイトルに冠した曲が著しく、「東京おけさ」もまた然り。柴田幸一や山内久の曲には、やがて隆盛を極めるフォークっぽいテイストも時折感じられる。
青春歌謡のブームが訪れた頃に創立されたクラウンでは西郷輝彦や山田太郎、美樹克彦らの活躍が目覚ましかったが、その中で彼らの存在も見逃せない。今回、デビュー曲「十代のふるさと」をはじめ、6枚のシングル曲が一気に配信された鹿島一朗も、クラウン青春歌謡歌手のひとりとして記憶に留めておきたい。
セクシー歌謡の極み、朝丘雪路「スキャンドール」
深夜番組『11PM』のホステス役として大橋巨泉とのコンビで親しまれた朝丘雪路も歌手としてのキャリアは長きに及ぶ。ジャズから民謡まで幅広く歌った東芝時代を経て、1970年にCBS・ソニーの酒井政利プロデューサーが「雨がやんだら」で大ヒットさせるが、その前の約4年にわたるクラウン時代も忘れてはならない。
東芝からの移籍第1弾となった「ふり向いてもくれない」は青島幸男の作詞。本作はクレージーキャッツと坂本九以外では最もヒットした提供作品に挙げられる。中村八大が作曲した「私はマッチ箱」、山下毅雄作曲のテレビドラマ主題歌「そむかれて」、やはりテレビ主題歌で宇野誠一郎作曲の「うちのヨメはん」、そしてセクシー歌謡の極み「スキャンドール」などなど話題作が満載。間違いなく第9弾配信の芯となっている。
ほかにも1971年に「東京夜景」でデビューし、星野哲郎 × 市川昭介コンビの秀作「恋にいのちがけ」を歌った聖佳代、今いれば「ジャンボリミッキー!」を踊って欲しかったジャンボリー・シスターズの超レア盤「あなたは悪い人」、さらには1962年に5歳で歌手デビューし、史上最年少のジャズ歌手として話題になった後藤久美子(初代)のクラウン期のシングル5枚も遂に解き放たれた。いやぁ、歌謡曲って本当にいいもんですね。
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2026.08.06