5月28日

ボウイ、たけし、坂本の “原点” 「戦場のメリークリスマス」

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大島渚監督作品「戦場のメリークリスマス」が日本で劇場公開された日
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photo:シン虎の尾を踏む男たち  

『戦場のメリークリスマス』を観に今は無き東急文化会館の収容人員1,100人超の大映画館、渋谷パンテオンに足を運んだのは、公開から4日後の1983年6月1日水曜日だった。

1981年1月から始まった『ビートたけしのオールナイトニッポン』でたけしの大ファンになった僕にとって、この映画はいち早く観なくてはならなかった。が、この日を選んだのは映画の日だったから。当時一般1,500円の入場料がこの日は700円だったのである。そのお蔭もあって平日夕方にもかかわらず映画館は超満員。高3の僕らは何とか2階席後方に座れたのだった(当時は自由席)。

当時『オールナイトニッポン』でビートたけしが嘆いていた通り、オープニングにテロップで “TAKESHI” と名前が出ると場内から笑い声が聞こえた。ファンとしては、やはり少し悔しい思いがした。しかしそこから2時間、男の臭いしかしない、異文化の衝突、相克の濃密なドラマを見せられて、もはや笑う者は誰もいなかった。高3の僕にはまだまだ理解出来ない部分も多々あったが、剃髪したたけしがアップで「メリークリスマス、ミスター・ローレンス」と語る、当時から名シーンと謳われたラストシーンでは、恐らくファンであることに関係無く、目頭を熱くしたのだった。

「レッツ・ダンス」のヒットとほぼ同時だったこともあり、僕が動くデヴィッド・ボウイを観たのは、CM以外では恐らくこれが初めてであった。その後のボウイの大ブレイクは語るまでもあるまい。この映画は、その着火点として意識されていた節も十分にあるのだ。この映画での大島渚監督の仕事っ振りに憧れたビートたけしは、その後映画監督北野武への道を進む。“世界のキタノ” の原点もここにあるのだ。そして出演もしている坂本龍一もこれが映画サントラデビューだというから恐れ入る。しかも大島監督からもほぼお任せだった。

高3だった僕は月にLPを1枚買うのが精一杯だったので購入することは出来なかったが、当時流行りのレコードレンタルでカセットテープにダビングして繰り返し聴いていた。歌も無いのに通して聴くのに何の苦も無かった。あまりにも有名なタイトル曲のみならず、ボウイと坂本のキスシーンで流れ、劇中で同じ旋律が数回流れる「Sowing the Seed」も至ってシンプルながらも強く胸に迫ってくる名曲。他も坂本の曲ではない「Ride Ride Ride」「詩篇第23」を含め粒揃いだ。

同じ年の12月にはこのサントラの坂本自らによるピアノ版『Coda』も発表されているのだが、これも聴き応え十分。いかにこのサントラが豊かなメロディーを有しているかだ。坂本龍一のその後の映画音楽での世界を股にかけた大活躍も言うまでもないだろう。

ボウイ、たけし、坂本、3人共この映画が1つの出発点だったのである。2013年1月8日にボウイが9年振りに『ザ・ネクスト・デイ』で突然シーンに復活した時、唯一発した言葉が、その1週間後の15日に亡くなった大島監督に対する哀悼の言葉だったのも実に象徴的であった。

そのボウイも今年2016年1月にこの世を去った。それから1年後の来年2017年1月、いよいよボウイの大回顧展『DAVID BOWIE is』が日本にやって来る。そして日本独自展示部分のテーマが『戦メリ』なのだ。映画公開34年の時を経て、北野武(ビートたけし)と坂本龍一が撮りおろしのインタビューで『戦メリ』とボウイについて語ってくれる。奇しくも今年、フランスでの受勲とグラミー賞ノミネートで共に世界に改めてその名を轟かせた二人のインタビュー、是非会場にてご覧頂きたい。

2016.12.17
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  YouTube / Milan Music


  YouTube / Decca Records Classical


  YouTube / DAVID BOWIE is
 

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