10月25日

木の実ナナ&五木ひろし「居酒屋」デュエット曲として40年間も愛される理由

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平成カラオケランキングで15位の人気曲「居酒屋」


邦楽の男女デュエット・コラボレーション楽曲を紹介するシリーズ。今回は、木の実ナナ&五木ひろし「居酒屋」を取り上げます。

40年前に発売されるやいなや、有線放送で大ヒットしてデュエットカラオケの代表曲となり、今日に至るまでその代表の座を守っています。DAMが発表した “平成” カラオケランキングでは15位にランクされており、昭和を越えて平成でもずっと歌い継がれてきました。

それだけの人気を獲得した要因は様々あると思いますが、ここでは “歌い手の魅力” “歌詞” “パート分けの妙” という3つの観点を考えてみます。

木の実ナナと五木ひろしが醸す上質な大人の雰囲気


まずは “歌い手の魅力” から。「居酒屋」は後に様々な歌手にカバーされますが、やっぱり木の実ナナと五木ひろしの二人が最高です。歌に登場する “どこにでもいるけれど、何か特別な雰囲気を醸し出す” 女性は、木の実ナナの雰囲気そのもの。 “一期一会を楽しむ余裕を見せつつ、密かに何かを期待する” 男性も五木ひろしの歌声にピッタリ。「居酒屋」で出会った二人にはこの後さらにドラマがあったはず… 木の実ナナと五木ひろしの歌声がそんな想像をかき立て、上質な大人の雰囲気を醸し出します。

発売当時、中学生だった筆者は木の実ナナを女優として認識しており、なぜ彼女が五木ひろしとデュエットを組んでいるのか、ピンときていませんでした。調べてみると、木の実ナナは五木ひろしよりも歌手としてのキャリアが長く、ミュージカル女優として輝かしい実績を残していたんですね。

当時既に歌手の頂点に君臨していた五木ひろしのデュエット相手に値するキャリアを積んでいたことは、恥ずかしながら後から知りました。それをふまえて「居酒屋」を聴くと、木の実ナナの歌声がいっそう深みを持って耳に迫ってきます。

感情移入しやすい世界観を描いた歌詞


続いて “歌詞” について考察しましょう。デュエット曲の歌詞といえば、やや非日常の劇画的な情景を描写する曲が多いと思いますが、「居酒屋」はタイトルのとおり、居酒屋で偶然居合わせた男女という身近な情景を歌っています。聴いていても歌っていても「もしかして自分にも起きるかも」と妄想することができますし、実際に一期一会を経験した人であれば、とても感情移入しやすい歌詞の世界観です。

この曲が発売された1982年当時、通信カラオケもカラオケボックスもまだ無かった時代ですから、カラオケが歌われたのは主にカラオケスナックだったと思います。スナックは「居酒屋」の歌詞の情景が現実に起きても何の不思議もない空間。そんなリアリティーを感じながら歌う「居酒屋」は、なんとも言えない高揚感を伴うものです。

筆者は、実際にスナックで初対面だった方とデュエットした経験があります。正に「居酒屋」の歌詞そのままの状況で、とても不思議な気分になったことを覚えています。「居酒屋」がこれだけ歌い継がれているのは、この歌詞に多くの方が魅了されているからではないかと推察します。

カラオケの定番たらしめる “デュエットの王道構成”


最後に、デュエット曲に欠かせない “パート分けの妙” について見ていきましょう。「居酒屋」はデュエット曲の王道と言えるパート分けがされています。以下の図は1番のパート分けを表しています(2番も同様です)。



男声ソロから始まり、女声ソロへと続きます。この流れは「ロンリー・チャップリン」と同じであり、「男性客が先に歌い、女性ホステスが男性の技量に合わせていく」という、スナックでのデュエットに適した構成と言えます。

サビになると、男女がユニゾン(同じ音程。正確には1オクターブ違い)で合わせます。ここもいきなりハモりではないのが良いところで、二人が声を合わせるパートに緊張せずに入っていけます。そして最後にほんの一瞬、ハモりが入ります。さらっとワンフレーズだけ入るハモりが、大人の曲という印象を際立たせているように感じます。個人的にはハモりがたくさんある曲の方が好みですが、わずかしかないハモりをきっちりキメるのもデュエットの醍醐味です。

この “男声ソロ → 女声ソロ → ユニゾン → ハモり” という流れが、歌っていて盛り上がるデュエットの王道の構成なのです。「居酒屋」が今でもカラオケの定番であり続けているのは、この流れの気持ちよさが大きな理由だと思います。

最後のハモりをきっちり歌うために


ところで、今までカラオケで「居酒屋」を何度となく聴いてきましたが、最後のハモりをきっちり歌える人がとても少ないと思うのは筆者だけでしょうか。音が不安定になってグダグダになってしまったり、女声パートが男声のハモりパートにつられてしまったり、という光景を何度となく見た気がします。主旋律もハモりのメロディーも決して難しくないのですが、ハモりがほんの少ししかないがゆえに覚えづらかったり、歌うときに忘れてしまったりするのでしょう。

この一瞬のハモりをバシッとキメられれば、その場が盛り上がること間違いなしです。そこで、主旋律とハモりのメロディーを、音を奏でずに紙面だけで紹介します。以下の図を見てください。



この譜面の見方を説明します。左にある縦長の絵は鍵盤を縦向きに描いたもの(音楽編集ソフトなどによく見られますよね)で、図の上方が高い音、下方が低い音を表します。図の上方に歌詞を載せ、歌詞に対応する各パートの音を、女声パート:赤、男声パート:青 で記載しています。

各音に記載している「階名」は、メロディーの相対的な音の高さを示すもので、調(キー)が変わっても階名は変わりません。少年隊「デカメロン伝説」の冒頭で歌われる “どれみらーみれど らしどみーどらそ” は、この部分を階名で表現したものです。歌詞を歌うより階名を歌う方が音を取りやすいので、階名を記載しました。

主旋律とハモりのメロディーを覚えれば大人の深みが増す


「居酒屋」は、女声パートが主旋律で、男声パートがハモります。歌詞『そんな』の『な』の所で、女声パートは同じ音で “なー” と伸ばすのですが、男声パートはいったん女声と同じ音(オクターブユニゾン)で入った後、音を伸ばしながらフワッと音程を上げるのです。言葉の途中でユニゾンがハモりに変わることにより『そんな』という言葉の余韻が印象的になります。

その後は、歌詞『居酒屋』の所を男声パートがハモり続け、最後の『で』の所で同じ音に戻ります。ハモりからユニゾンに戻ると “溶け合った” 雰囲気が出るので、それが「居酒屋」の世界観と見事にマッチして、大人のデュエットという印象を高めています。この主旋律とハモりのメロディーをきちんと覚えて、ハモりが綺麗にキマると、グッと大人の深みが増す「居酒屋」になると思います。

発売から40年という節目に改めて「居酒屋」を聴き、デュエットとしてのツボを本コラムで書き起こしてみて、この曲の素晴らしさを再確認いたしました。デュエット曲を選ぶ際に、通ぶって「居酒屋」を避けがちな筆者ですが、もっと丁寧に「居酒屋」を味わいながら歌いたいですね。考えてみれば、ここ何年もカラオケで「居酒屋」を歌ってない… 久々にカラオケスナックで歌ってみようっと!

「居酒屋」を歌える方との一期一会も期待しつつ。


■ Song Data
■ 居酒屋 / 木の実ナナ&五木ひろし
■ 作詞:阿久悠
■ 作曲・編曲:大野克夫

男声ハモり分量:★
男声ハモり多彩さ:★
女声ハモり分量・多彩さ:-
掛け合いや遊びの妙:★
カラオケ難易度男声:★★
カラオケ難易度女声:★
カラオケ満足度:★★★
※評価値は5段階評価。あくまで筆者の個人的な見解です

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2022.10.25
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カタリベ
1970年生まれ
倉重誠
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