人気オーディション番組 『スター誕生!』に番組企画・審査員としてかかわり、各芸能プロダクションの担当者が目に付いた出場者に札を挙げるという、あのスタイルを考えたのは阿久悠さんだったという。生涯、作詞した曲は5,000曲以上。ジャンルは歌謡曲、演歌、アイドル歌謡曲、フォークソング、コミックソング、アニメソング、CMソングと幅広く、その多くがヒット曲として私達の耳に届けられた。
タイトルを聞けば、この曲も阿久悠の作詞だったのか! と少なからず驚かされるのではないだろうか。おそらく、氏の作品を一度も耳にした事が無いという方は、この日本には存在しないだろうと思えてならない。凄いなと思うのが、森進一、五木ひろし、都はるみ、石川さゆりといった演歌歌手から、沢田研二、ピンク・レディー、山本リンダ、八代亜紀、和田アキ子まで、何でも書けちゃうところ。
その秘訣は、作詞家になる前に働いていた広告代理店時代にあったらしい。コピーライターをしていたことを活かして、商品の特長別に書きわけてコピーを作ることと、歌手自体も同じようにひとつの商品として捉えて作詞を作り出す方法を採っていた為、それが幅広いジャンルで様々な作品を作り出した。
日本レコード大賞での大賞受賞曲は作詞家として最多の5曲。日本作詩大賞は8回受賞で、日本レコード大賞作詩賞の7回受賞と同じく最多記録となっている。
私が5歳位の頃、生まれて初めて人前で歌った曲が、阿久悠さんが作詞した木の実ナナ&五木ひろしの「居酒屋」だった。父に連れられて行った旅行先の温泉街にあるスナックのようなお店。歌い終わった時に、手のひらいっぱいのキャンディーを店のママから貰い、子供心に嬉しかったことを今でも覚えている。大人になってからも、デュエットしようと誘われると、真っ先にリクエストする曲が「居酒屋」なのだ。
そのスナックの壁に絵が飾られていたとか、花が飾られていたとかの風景は全く覚えていないけれど、父とデュエットしたことと、ママに貰った甘いキャンディーの記憶だけが鮮明に残っている。
今は亡き父とは、もうデュエットすることもできないけれど、この曲を歌う度に、歌が大好きだった父のことを思い出す。私が歌手になる原点は、もしかしたら阿久悠さんの曲だったのかもしれない。
2017.03.18
YouTube / natsuki kenji
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