今年の1月、レジェンダリーなアレンジャーである船山基紀先生の講演会に伺う機会がありました。主にジャニーズ系のアレンジが中心であったその内容は、船山先生の温厚なお人柄も相まってわかりやすく、とても興味深いものでありました。ワタシ個人としては、フェアライトなど80年代の電子楽器についてお伺いできたのが収穫でした。
大盛況のうちに終わった講演会の後、その同日に行われた「アレンジャーズナイト」という DJイベントに場をうつしたのですが、そこにもまた船山先生のお姿がありました。そして船山基紀アレンジ曲縛りの DJタイムと相成ったわけなのですが、そこでワタシはある統一性に気付いたのです。それは「エンディングの切れの良さ」です。いわゆるフェードアウトを使用せずにバシッと終わる。ぱっと思いつくだけでも、
■渡辺真知子「カモメが飛んだ日」
■少年隊「仮面舞踏会」
■田原俊彦「抱きしめて TONIGHT」
… 等々が当てはまります。
さて、この事についてせっかくその場にいらっしゃるご本人にお伺いしないわけには参りません。そこで図々しくもその疑問をぶつけてみたのです。
船山先生はニコリと微笑んで、「よくわかったねえ!」と一言。そして、「僕は嫌いなんだよね、フェードアウト」とおっしゃったのです。実際のところ1970年代から1980年代にかけてはテレビ、ラジオ共に歌番組の全盛期で、いわゆる TVサイズを作成することは当然だったそうです。その時に「エンディングをまた作らないといけないのではじめからそういう形にするようになった」という事でした。納得です。
ところで、Re:minder 読者の皆様におかれましてはワタシが YMO のファンであることについてはご賢察の事かと思いますが、そこでワタシはあるメンバーに思いが至りました。
「高橋幸宏」さんです。彼も同様にキレのいいエンディングで知られており、それは「ワールドフェイマス・ユキヒロ・エンディング」と、後にパートナーとなる元 Japan のメンバー、スティーブ・ジャンセンによって名付けられるのでした。曲名(アルバム名)で言うと
■「It’s gonna work out」(ボク、大丈夫!!)
■「MY BRIGHT TOMORROW」(薔薇色の明日)
■「今日の空」(Once a fool,...)
… 等々にその片鱗がうかがわれます。
その理由は若干異なり、当初はレコードを作るところまでしか考慮していなかったのだが、1982年からソロツアーを行うことになり、それ用のアレンジをやり直しているうちに「最初っからライブ用に作ってしまえ!」という動機だったようです。
テレビかステージか、という点が異なりますが、ライブパフォーマンスを意識した構成であるということは共通しているように思います。
またこれは完全に余談となるのですが DJパフォーマンスをする際に、このようにキレのいいエンディングの曲は、テンポの切り替えや違った雰囲気へのブリッジとしてとてもありがたい存在です。
さて、今回はとても局地的な「エンディング」の特徴についてお話させていただきましたが、そんな船山基紀アレンジの魅力について、曲やトークで知ることができるイベント『
80年代イントロ十番勝負 vol.4 夏の INTRO フェスティバル!』が、6月1日に開催されます。通常のイントロクイズに加えて、第1部では、船山先生をお迎えしてのトークショーが開催されます。とても分かりやすく、丁寧にその魅力についてお話しいただけると思うのでお勧めです。是非会場にお越しくださいませ。お会いできたらうれしいですね。
2019.05.18