6月21日

時代を変えた孤高の名盤「BOØWY」ニューウェーブと “日本のロック” の奇跡的共存

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サードアルバムでBOØWYが示した音楽性と色褪せぬ革新性


BOØWYは一部で “日本のヤンキーカルチャーとニューウェイブを接続した” と言われるほど、元来マニアックな音楽性を全国の青少年に届けることに成功した稀有な存在だ。この第一歩となったのがサードアルバム『BOØWY』なのは間違いないだろう。

今作がリリースされた1985年は尾崎豊『回帰線』やレベッカ『REBECCA Ⅳ ~Maybe Tomorrow~』がオリコン週間1位を記録するなど、日本の音楽市場にロックサウンドが本格的に普及し始めた時期に当たる。その中でも、彼らが参照した海外ミュージシャンの突出した広範囲ぶりには驚かされる。

ごく一部のフレーズだけ引用したり、特定の楽曲には似ていないがスタイルを参照したような例はこれまでも多くの識者が語っており、エルヴィス・コステロ、デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズ、ギャング・オブ・フォー、プリンス、スクイーズ… など名を挙げればキリがない。

その上で、BOØWYのオリジナリティを語る上で重要なのは、プロデューサーの佐久間正英が言うところの “歌謡曲” 的なウエットさが作曲面に強く息づいていたことだろう。更に氷室のボーカルはダイアモンド☆ユカイや小室哲哉も指摘するように、西城秀樹の日本語シャウト歌唱に連なる特徴を備えている。こうしたドメスティックな諸要素とニューウェイブの多彩で冒険的なスタイルを、どちらかが一方を喰うでもなく奇跡的なバランスで共存させているさまこそ、今なお色褪せない『BOØWY』の革新性だ。



真のニューウェイブ化の裏にマイケル・ツィマリングあり


本作は、音作りの面でも真にニューウェイブ化を果たした作品だと言える。

前作『INSTANT LOVE』でも既にアレンジ面でニューウェイブの要素は導入されていたものの、ドラムに顕著な線の細い録音、ボーカル以外が団子状になった不明瞭なミックス、中低域の薄いマスタリング…… といったサウンドは、アイデアの面白さを伝えきれない迫力不足の感があった。本作ではドイツ・ベルリンのハンザ・スタジオでのスタジオワークを通じ、そうした諸問題の払拭に成功している。

録音・ミックスを手がけたマイケル・ツィマリングは、同時期にインダストリアルロックの始祖的存在であるアインシュテュルツェンデ・ノイバウテンの出世作『半分人間』を手がけ、それまでノイズミュージックの側面が強かった同バンドの商業的成功に多大な貢献を果たした人物でもある。

彼が『BOØWY』にもたらした、ゲートリバーブの効いた太いドラム~動き回るギター・ベースがくっきり浮き立ちボーカルと同等に主張するミキシングはバンドサウンドとしては当時最先端であり、“日本のロック” のサウンドデザインを数段上のレベルに引き上げたと言えよう。実際にその後のマイケルはザ・ストリート・スライダーズやブランキー・ジェット・シティ、ジュディ・アンド・マリー、GLAY等のスタジオワークにも携わっており、今作のサウンドはその後の “日本のロック” における事実上のプロトタイプとなった。

収録曲「BAD FEELING」で実感するサウンド面の刷新


サウンド面の刷新が特に活きた楽曲は「BAD FEELING」だろう。分離がよく各パートの有機的な絡みがはっきりと掴め、それでいてシンセを除き3人だけの演奏とは思えない厚みのある音を鳴らし、ジャングル・ビートを独自に進化させたようなリズムでダンサブルな要素とパンクの攻撃性を両立させ、更には日本的な湿ったコード感すらも併せ持つ……という当時の彼らならではの名曲だ。

知名度におけるブレイクスルーが “自身のルーツに回帰した” とメンバーが形容する『BEAT EMOTION』であったために誤解されがちだが、彼らが決して “メロディアスな歌謡曲調の楽曲を縦ノリで演奏する” という単純な図式で割り切られるべきバンドではないことは本曲をはじめ、アルバムの随所ではっきりと見て取れる。



名盤「BOØWY」から学ぶべきものとは


インターネット~ストリーミングサービスが普及した現代において、様々なミュージシャンをデータベース的に参照して楽曲制作する障壁自体は格段に低くなった。それにより、参照元に限りなく近いサウンドを模している点で “ハイレベル” な楽曲は増えた一方、BOØWYのように参照元と相反する要素を賛否両論を呼ぶほどまでに(融合でなく)共存させている事例にはほとんど出会えない。

かつて “誰にも似ない、どこにも属さない” というBOØWYの象徴たるフレーズを初めて聞いた私は失礼ながら「いや、色々なバンドに似ているのでは?」と思ったものだが、解散から30年以上を経てもなお、彼らのニューウェイブと “日本のロック” の奇跡的な共存具合は間違いなく誰にも似ていない。この孤高ぶりこそ、時代を変えた名盤『BOØWY』からいま最も学ぶべきことかもしれない。

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2021.10.17
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