そう、当時チケットが入手困難、幻のライブ映像と言われた『チェッカーズ 1987 GO TOUR at 中野サンプラザ』デジタルレストア版が全国劇場絶賛公開中だ。この映像は『GO TOUR』の果敢なスケジュールを総括する、中野サンプラザ連続5日公演の4日目を収めたもの。冒頭にツアースケジュールのテロップが入り、カメラは楽屋で自然体の7人を捉える――
2曲目は、モータウンを代表するテンプテーションズを彷彿とさせる「クレイジーパラダイスへようこそ」、そして、ロックンロールのエナジーが炸裂する初期の代表曲のひとつ「恋のGO GO DANCE」へと続く。初っ端の掴みからチェッカーズはつくづくアルバムアーティストだなと思わずにいられない。50年代、60年代のエッジの効いた音をフォーマットにしたオリジナリティは極めて独自性が高い。ヒット曲を演奏すればそれでOKという安易なステージではないのだ。テレビでは見ることができない彼らの本質がオリジナルの楽曲には詰まっている。
新たな航海に挑むチェッカーズの決意が感じられた「Song for U.S.A.」
アルバムに収録されたオリジナル曲中心のセットリストでステージが進行していく中、風向きが変わったのが中盤演奏された「Song for U.S.A.」だった。前年、これまでヒット曲を連発してきた売野雅勇、芹澤廣明コンビによる最後の楽曲としてリリースされた曲である。藤井郁弥の抑揚を効かせた情感溢れる歌い方がそう思わせたのかもしれないが、この曲こそが、これまでデビューから闇雲に走り続けた時期との決別だと。
This is the Song for U.S.A 最後のアメリカの夢を 俺たちが同じ時代(とき)を 駆けた証しに Sing For All
ライブ後半は、「NANA」「YOU'RE A REPLICANT」(『GO』収録)という当時真新しかったナンバーでクライマックスへとなだれ込む。どちらも硬派なブリティッシュビートを下敷きとしながらセクシーさとチャーミングさを兼ね備えたチェッカーズらしい楽曲だ。
それは、「Song for U.S.A.」で感じさせた、センチメンタリズムとは相反した未来に向かう力強さが溢れていた。そして高杢がリードボーカルをとる「GO INTO THE WHOLE」、鶴久の「HE ME TWO(禁じられた二人)」と、7人だからこそのグルーブが観客との一体感を織り成す。特にジャングルビートを主体にアレンジされた「HE ME TWO」の躍動感はライブならではのものだ。
ⓒTHREE STAR PRO/COM ⓒPONY CANYON INC.
そして、シニカルな歌詞とリリックとフックを効かせた武内享のメロディで心が弾けまくる「おまえが嫌いだ」、ブルージーなユニゾンナンバー「BLUES OF IF」で本編の幕は閉じる。そして、アンコールは彼らの久留米時代を短編映画のように描いた「NEXT GENERATION」に始まり、「ジュリアに傷心」「ギザギザハートの子守唄」「I Love you, SAYONARA」という誰もが知るナンバーで締めくくられた。