2024年 3月6日

歌手・研ナオコの魅力「中島みゆき作品BESTアナログ」記憶にも記録にも残る名唱の数々!

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研ナオコのアルバム「中島みゆき作品BESTアナログ」発売日
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「私の歌の世界を広げてくれたのは、間違いなくみゆきちゃん」


2024年3月6日、研ナオコのベストアルバム『中島みゆき作品BESTアナログ』がリリースされた。本作の発売の経緯をポニーキャニオンの担当ディレクターに尋ねたところ、近年企画された研ナオコのCD『ベスト・コレクション』『中島みゆき作品コンプリート』『シングルA面コンプリート』『シングルB面コンプリート』『カバー作品コレクション』が、いずれも着実なヒットを飛ばしてきたことが、アナログ発売の大きなキッカケとなったようだ。

その中でも、中島みゆきが作詞・作曲を手がけた楽曲でアナログ盤を編成するというのは最強だろう。何しろ、シングルの「あばよ」「かもめかもめ」「窓ガラス」、アルバムの『NAOKO VS MIYUKI / 研ナオコ、中島みゆきを唄う』がレコードでオリコントップテン入り、また現在のストリーミングサービスでも研ナオコの人気曲TOP20のうち実に13曲まで中島みゆきの詞曲が占め、“研ナオコ × 中島みゆき” というのは、まさに記録にも記憶にも残る抜群の相性なのだ。

現に、筆者が2024年初頭に研ナオコ本人に取材した際、 “私の歌の世界を広げてくれたのは、間違いなくみゆきちゃん”、“彼女からの提供曲には1曲も駄作がない” と、大きく頷きながら語ってくれた(詳しくは、デイリー新潮での連載『臼井孝の記録と記憶で読み解く未来へつなぐ平成・昭和ポップス』をご参照願いたい)。

今回は、アナログレコードのみの発売で、しかも2枚組全24曲というボリューム。ジャケットやブックレットにも、中島みゆき作品でお馴染みの写真家、TAMJINこと田村仁が撮影した貴重な写真を使用するといったことから本作への強いこだわりが感じられる。

また、現代はストリーミングなどで好きな曲順やシャッフルにて楽曲をかいつまんで聴くのが主流だが、本作のレコード2枚に収録された通りに聴いてみると、研ナオコの豊富なヒット曲のラインナップだけでなく、中島みゆきの作家ヒストリーも見えてくるのが感慨深い。以下、ディスク1のA面、B面、ディスク2のC面、D面の順に注目した楽曲をいくつか紹介してみたい。

中島みゆきは24歳、研ナオコは23歳になったばかりで発表された「強がりはよせよ」




まず、A面は、中島みゆきのデビュー曲「アザミ嬢のララバイ」のカバーから始まり、研ナオコへの楽曲提供で最初のリリースとなった「LA-LA-LA」や、中島みゆきの代表曲「時代」などが収録されている。その中で、提供曲の「明日 靴がかわいたら」は、買い物に行く様子をカントリータッチで軽快に歌っているが、どこか寓話的で自分の生き方を振り返りたくなる。また、素直な自分に戻りたいと嘆くように歌う「強がりはよせよ」が発表された時、作者の中島みゆきは24歳、歌い手の研ナオコは23歳になったばかりで、青春を過ぎた時期ならではの勢いや葛藤が切なくも伸びやかな歌声から感じられる。

B面は、「あばよ」「わかれうた」といった研ナオコと中島みゆきがそれぞれオリコン1位となった大ブレイク曲、そしてアイドル歌手だった桜田淳子の転機となった「しあわせ芝居」が収録されており、全体に彼女たちの飛躍が想起される。その中で、ちあきなおみに提供された「ルージュ」は、研ナオコが「夏をあきらめて」や「泣かせて」のヒットを経験した後の1984年の録音で、抑え気味に歌われているからこそ人生の光と影がより鮮明になっている。なお、「わかれうた」では、研ナオコが高音部をややシャウト気味に歌っているのがレアで、本作での緩急の付け方の巧さも聞きどころだろう。

歌唱が圧倒的で思わず息を飲んだ「根雪」




C面は、「かもめはかもめ」「窓ガラス」「みにくいあひるの子」といずれもオリコントップ20入りしたオリジナル曲や、加藤登紀子「この空を飛べたら」のカバー曲など、大ブレイク後の安定感がある。その中で、C面ラストの「根雪」の歌唱が圧倒的で思わず息を飲んだ。1979年に発表された中島みゆきのアルバム『親愛なる者へ』に収録されたバラードのカバーだが、終盤に「♪いつか時が経てば忘れられる あんたなんか」とロングトーンで歌いきる部分は、ライブ会場全体に深い悲しみが響き渡るような感動を覚えた。

そしてD面は、「りばいばる」「ひとり上手」「誘惑」といった、中島みゆきのヒット曲を研ナオコの歌声で通して聞けるというのも興味深いが、冒頭の「ひとりぽっちで踊らせて」を聞いて、こんな明るくお洒落な曲調でも、憂いを漂わせて歌うことができる、研ナオコはまさに “泣き笑いの名手” だとあらためて感服した。本作は1979年度当時の年間ランキングでも、シングルレコードの187位に対し、有線放送リクエストでは71位と、圧倒的に有線が強いことからも、人生のほろ苦さに寄り添う歌唱に酔いしれた人も多かったのではと想像する。

そしてラストは、初のアナログ化となった「糸」で、こちらは2015年の録音。結婚式で歌われることの多い「糸」を還暦過ぎの彼女が歌うと、パートナー間だけではなく、どんな苦境をも乗り越えてきた友情や、さらには天国へ旅立ってもなお続く確かな絆を感じさせる。研ナオコ版の「糸」は、本作への収録をキッカケに、今後、さらに注目を浴びてほしいほどの名唱だ。

この24曲だけでも研ナオコの凄さがよく分かる名盤なので、さらに気に入った方は、研ナオコの他の楽曲も是非堪能してもらいたい。とある女性の一生悔やみきれない記憶を10分近くにわたって切々と歌った「弥生」(作詞:阿木燿子 作曲:宇崎竜童)や、どんな状況下でも大切な人を想い続ける「ホームレス」(作詞・作曲:玉置浩二)など、ファンの間で語り継がれる名曲は数知れず。“すっぴんからのメイク動画” など、研ナオコの愉快な部分だけを楽しんでいるのはもったいないですよ♪



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2024.03.06
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