1984年のクリスマスプレゼントは「もっと!チェッカーズ」
1984年の12月25日の朝。目が覚めて、枕元に何かが置いてあることに気付く。
―― そうだ、今日はクリスマスだ!
僕は、眠い目をこすりながら早速包装紙を開けてみた。中から出てきたのは、チェッカーズの単行本『もっと!チェッカーズ』だった。子供の頃、クリスマスの朝に、僕と妹の枕元には何かプレゼントが置かれているというのが古木家の定番行事であった(当時僕は小6)。
1984年といえば、まさしくチェッカーズ旋風が吹き荒れた1年だった。“3曲同時ベストテン入り” といった記録面の実績もさることながら、それまでのアイドルにはなかった自由でやんちゃで軟派な振る舞いが、本当に新しくてセンセーショナルで、僕もすっかりそんな彼等の虜になっていた。
この『もっと!チェッカーズ』という本は、同名のセカンドアルバムのリリースに併せ扶桑社から発売された彼等初の単行本で、7人がそれぞれ自分の生い立ち、メンバーやグループへの思いなどを語る内容で構成されていた。本書での7人の語りは、内容もトーンもそれぞれ個性的で、ダンスパーティの思い出を語る部分などは「あぁ、僕にも、こんなワクワクするような青春時代が訪れるのかなあ」なんて、10代を謳歌することへの憧れを抱かせたりもした。
今思えば、僕の両親のプレゼントセンスには脱帽する。クリスマス、枕元にチェッカーズの単行本なんて、なかなか洒落た計らいではないか。
クラスの女子も男子もチェッカーズに首ったけ!
一方、アルバムの『もっと!チェッカーズ』であるが、確かこれは、親友からカセットテープを借りて、それを我が家のラジカセでダビングして聴いたのが最初だった。彼は確か横浜銀蝿が好きだった筈だが、いつの間にかチェッカーズに鞍替えしていたのだ。そう、1984年は、クラスの女子も男子もチェッカーズに首ったけだった。
この年、チェッカーズの初期2枚のアルバムは、体感的には周囲の10人中9人は持っていたと言っても過言ではない。90年代でいう、Mr.Childrenの『Atomic Heart』や宇多田ヒカルの『First Love』くらいの普及率だったように思う。
残念だったのは、チェッカーズが登場した当時、街にはカラオケボックスがまだ殆ど無かったということである。
特に初期の2枚は、カラオケで歌いたくなるような、キュートでキャッチーな曲のオンパレードであったのだが、流行とは儚いものだ。90年代のカラオケボックス全盛期、『もっと!チェッカーズ』からは、シングルカットの2曲以外一切配信されておらず、歌いたくて仕方なかった僕としては、ひどく落胆したことを覚えている… 学生時代に「ティーンネイジ・ドリーマー」を大声でカラオケで歌いたかったなぁ…。
このあたり、日本の音楽市場が最もシュリンクしていた80年代中盤の登場であったことも少なからず影響しているだろう。意外なことに、チェッカーズにはミリオンヒットが無い。ある意味、記録よりも記憶に残るグループだったと言える。
これほどまでの社会現象が、30余年経った今、さほど語り継がれていないのは、ちょっと残念な気もする。だからこそ、当時熱狂した者のひとりとして、これからも1984年のチェッカーズ旋風を熱く後世に語り継いで行きたい。そんな気持ちでいっぱいだ。
初恋を思い出してキュンとする「Jukebox センチメンタル」
今年も街角にはクリスマスイルミネーションが輝く季節を迎えようとしている。当時を思い出しながらアルバムの中で一番好きな「Jukebox センチメンタル」に耳を傾けてみる。
ほろ苦い初恋さ
Sherry baby Navy Blue
想い出は白い橇
君のことを 連れて来るよ
Merry Merry X’mas
この曲を聴いているとなんだか12才当時の、恋に恋していた自分… ちょっと初恋していた頃を思い出し、年甲斐もなく今でもキュンとしてしまう。
曲の途中で入る郁弥のセリフ 「Darlin' Do you remember?…」 の “声” が美しすぎて痺れる。そして何より「今も君だけ16歳(sixteen)」っていう最後の歌詞がたまらなく好きである。
だって、誰の心の中にもきっと… いつまでも16歳のままの姿で変わらず輝き続けているアイドルが居るでしょう? え? そのアイドルは僕の初恋の人なのかって? う~ん、それは秘密ということで…(笑)。
大人になっても僕の心は変わらず “Jukebox センチメンタル” なのだ。
※2018年12月22日に掲載された記事をアップデート
2020.12.05